第27話 明るい夜

 日が暮れて空に星が輝き始める。


 私は食堂の窓から空を見上げて小皿に分けたキムチ鍋を食べる。

 最初は口が燃えると騒いでたオオウミガラスも三口目くらいから辛さに慣れたのか美味しくキムチ鍋を食べている。


 しかし、注文通りに料理の材料が届くとは思わなかった。

 湿原のレストランでも食材だけは確認していたので、食材を運搬する仕組みが残っていても不思議ではないとも考えられる。

 となると食材を届けた誰かが居る筈なのだが、残念ながらその痕跡を発見することは出来なかった。


 レストランの時も思ったがこのジャパリパークの何処かで食材を作って配達するシステムを管理しているのはやはりフレンズなのだろうか?


 フレンズも学べば人並みの事は出来るようになると仮定すれば、施設の管理が出来るフレンズが居てもおかしくはない。

 実際に司書はフレンズでありながら、図書館の管理を行っている。

 しかし、人並みの事が出来るようになると言っても学べばの話なので教育係が必要となる。

 各地方のボスに教育施すとなると、ボスを統べる大ボスのような存在がいるのかもしれない。


 ……いつの間にか鍋の中身が半分以上消えている。

 私はまだ少ししか食べていないのにいつの間にか消えているのだ。

 私はゆっくりと視線をとあるところに向ける。

 オオウミガラスの丸く膨らんだお腹が鍋の中身の行方を物語っていた。


 さすがに食べ過ぎでは無いだろうか?


 腹八分目を通り越して腹十二分目に突入しているオオウミガラスの腹を見て、太るのではないかと心配になる。


 言葉で注意を試みたが、オオウミガラスの幸せそうな顔を見ると私の喉元まで出掛かっていた言葉は完全に詰まってしまった。


 ……これからはオオウミガラスがいるときはあまり量の多いものは作らないでおこう。

 スタイルの良いオオウミガラスの体型が、気が付いたらとってもふくよかな体型になっていたとなっては罪悪感で寝込むかもしれない。


 ここで一つ、ジャパリパークについて分かったことを箇条書きで列挙する。


 ・ジャパリパークは複数の気候が同時に存在する不思議な土地である。

 ・何年も前に放置されている。

 ・ジャパリパークの構造物は劣化が遅い。

 ・サンドスターと呼ばれる未知の物質が存在する。

 ・ジャパリパークにはフレンズとそれを補食するセルリアンと呼ばれる存在がいる。


 ここまで書いて気が付いたのだが、私はこのジャパリパークに来てから男のフレンズを見たことがない。

 偶然遭遇しなかったのか、それともフレンズには男が存在しないのか。

 ここでしばらく過ごせば答えは出るだろう。


 さて、それでは明日から船の燃料探しを始めることにしよう。


 今夜はベッドなので久々に快適な睡眠を取れそうだ。

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