迷宮の主

第15話 トンネルの奥へ

 心臓が止まるかと思った。

 まさか私達の背後からセルリアンが現れるとは……

 幸いに落盤の影響かトンネルに巨大な横穴が開いていたので、その中に入りセルリアンから逃げ延びる事が出来た。


 横穴の内部は複雑に枝分かれをしており、早速元来た道を見失ってしまっている。

 まるで迷路のようだ。


 この迷路は天然で出来たものではないようで、何かが土を押し固めながら進んで……

 もしかして先程のセルリアンだろうか?


 もしも、セルリアンだとするならここでじっとしているよりも襲われる前に何としても出口へ辿り着かねばならない。


 迷路を進むこと一時間。

 歩幅を頼りに手帳に地図を書きながら進んでいたが、微かに私達以外の足音が聞こえてきた。

 オオウミガラスはずっと暗闇の中を進んでいたせいか、足音を聞いてお化けだと怯えてしまっている。

 先程のセルリアンに足はない。

 つまり、この足音は間違いなくフレンズの物だ。

 嫌がるオオウミガラスを引き摺って私は足音の方へ向かった。


 しばらくすると不意に迷路に連続的な振動が伝わり始める。

 セルリアンが来た。


 セルリアンに追っ掛けられ助けてと叫びながら現れたフレンズと共にセルリアンから逃げる。

 曲がりくねった道の先で十字路を横に入ってセルリアンをやり過ごした。

 セルリアンの姿は凡そ全長20メートルの円柱型で迷路の中をそこそこの速度で移動している。

 その長い体のせいか急カーブより緩いカーブを選択して進んでいる。


 さて、今回セルリアンから逃げてきたフレンズはセグロジャッカルだった。

 こんなに早く再会するとは思わなかった。


 セグロジャッカルはこのトンネルを通って別の地方へ行こうとして先程のセルリアンに見付かり迷宮へ迷い込んでしまったようだ。

 セグロジャッカルもトンネルにセルリアンが住み着いてるなんて話は聞いたことがなかったらしい。


 ここにセルリアンが現れたのは極最近の事でフレンズ達に情報が回って無かったのかもしれない。

 もしくは、あまり考えたくない可能性だがこの迷宮へ迷い込んだフレンズが生きて出られなかったと言う可能性もある。


 仲間は増えたが現状は何も変わらなかった。


 どうにかしてこの迷宮から脱出しなければならない。

 まずはこの迷宮の特徴を整理しよう。


 この迷宮はセルリアンが土の中を移動することによって形成されたものである。

 あのセルリアンの特徴として、急カーブが出来ないため一筆書きのような通路になっている筈だ。

 つまり、十字路を曲がらずに道なりの緩いカーブなどを選択して進めば出口かセルリアンのいる先端に辿り着くことが出来る。


 我ながら良い考察だと思う。


 このままセルリアンが行った道を遡って進めば出口に辿り着ける。

 案外楽勝じゃないか。


 私は二人を引き連れて出口があるであろう場所へ向かって歩みを進めた。

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