第9話 新たなる旅支度

 次の目的地が決まったところで改めてルート構築と行こう。

 ジャパリパークへ住みなよと二人は言っていたが、港までの道を教えるのを渋るような事はなかった。

 司書曰く、無理強いをしてまで留めるつもりはないそうだ。


 図書館から港までのルートはこれまでの直線とは違い、何回か曲がる必要があるそうだ。

 比較的穏やかな草原地方や森林地方とは違い砂漠地方やツンドラ地方のような厳しい環境の地方を通るのは止めた方が良いと……


 すまない。

 私の目が腐っていなければ砂漠とツンドラが隣接しているように見えるのだが何かの間違いではないだろうか?


 間違いではなかった。


 恐ろしいことにジャパリパークは異なる気候の土地が隣接して存在しているようだ。

 本来ならばあり得ない熱帯と寒帯が一つの島に集約している状況を生み出しているのはサンドスターと言う物質のせいらしい。


 以前見掛けた空から降ってきた虹色の物質がサンドスターのようだ。

 大規模な気候変動や動物のフレンズ化を可能にするような物質ならば、研究すれば何か新しい使い道が見付かる可能性がある。

 例えば、もう僅かにしかない石油の代わる新たなエネルギーにも……


 そこまで考えて私は気が付いた。


 何故、こんな夢のような資源があるジャパリパークが放棄されるような事態となったのか。

 普通ならば世界が滅びようとも人類が手放すような事はしないだろう。

 それにサンドスターと言う物質の情報は私の知る限りでは一切残ってはいなかった。


 それとも意図的にサンドスターに纏わる情報が……


 考えても仕方がないか。


 もしも本格的に調べるとなれば一般公開していた書籍のような浅い情報ではなく、研究施設の中にあるレポートを確認するしかない。

 書籍が残っているくらいなのだから、ジャパリパークの何処かに研究施設があった筈だ。


 聞くところによると研究施設かどうかは知らないが、フレンズ達が入れない建物が多く存在するらしい。


 調べたい!


 私の帰巣本能が勝るか。

 私の知的好奇心が勝るのか。


 ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!


 司書よ。

 何故私から距離を取った?


 ともかく、先に帰る為の手段を確保することが先決だ。

 探索とは成果を持ち帰るまでが探索なのだから。


 本日の移動はここまでにしようと思う。


 ただでさえ迷いやすい森を夜の暗闇の中で進むのは自殺行為だ。


 それにこの図書館はある程度のインフラが整っているようだし、今夜はここで寝泊まりをさせてもらおう。

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