第8話 図書館

 ガラパゴスゾウガメ達と別れて私達は図書館へと向かった。


 その後は特に何事もなく、時折草原の方へ向かうフレンズ達とすれ違いながら私達は遂に目的の場所へたどり着いた。


 そこには小川の畔に立つコンクリートで作られた建造物があった。

 見た目的には何の変哲もない建物のように見える。


 図書館の中へ入ると中央に吹き抜けのある二階建ての構造になっている。

 本の状態は良く、特に虫に食われて穴だらけと言うこともない。


 オオウミガラスが突然ししょさーん!と誰かを呼び始めた。

 間もなくこの図書館を管理している存在が私達の目の前に現れた。


 全身が真っ黒な鳥のフレンズ。

 彼女の第一声は私に対する驚きの声だった。


 まさか……本当にヒト……?


 どうやら彼女は人を知っているようだ。

 ダメ元で彼女に現在人は何処にいるのかを聞いてみたのだが、帰って来た言葉はヒトはずっと昔にジャパリパークから居なくなったと言う情報だけ。


 思ったより収穫は少なかったか?

 建物の保存状態からここから人が完全に居なくなって10年にも満たないだろうと考えていたのだが、もしかしたら私の考えているよりも遥か以前から無人だったのかもしれない。

 それこそ、祖母の時代から……


 考え込んでいたらいつの間にか司書が顔と顔が付くくらい接近していた。


 彼女はハシブトガラスのフレンズ。

 お互いに自己紹介がまだだったのは確かだがそこまで接近する必要はないと思う。


 彼女はこの図書館を管理しているフレンズのようで、ここに来るフレンズ達に知恵を貸しているらしい。

 現在、文字を読めるフレンズと言うのはかなり少ないらしく、彼女の知る限りではここから海を隔てた地方にいるフクロウのフレンズとチンパンジーのフレンズしかいないらしい。


 ジャパリパークが複数の島からなる巨大なパークだったとは……

 私のいる島でもかなりの広さはある。

 道が整備されているのなら是非自動車で移動がしたい。


 ところで、港は何処だろうか?


 私の最終目標は故郷への帰還なので是非とも船があれば教えて欲しい。


 司書からは船があるにはあるが使い方が分からないと言われた。


 それなら問題ない。

 私が見よう見まねで船の操縦を行える。


 冗談だ。


 時間を掛けてじっくり船の操縦方法を覚えてから船を動かして故郷へ向かうつもりだ。

 探せば各種機材の操作方法が掛かれている説明書くらいは見付かるだろう。


 ジャパリパークから脱出……は失礼か。

 ジャパリパークから故郷へ帰る目処が立ったので一先ずは安心だ。


 オオウミガラスがジャパリパークは良いところだからここに住んじゃえばとか言ってるが、私はここに永住するつもりは更々ない。

 そして、どうして司書が名案だとばかりにオオウミガラスの案に賛成しているのか。


 私は何としても故郷へ帰らせてもらう!

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