第2話 捕食者
どうやら迂回出来ていなかったらしい。
私達の視線の先には青い大きな丸い物体が鎮座していた。
どうやらあれがセルリアンと言うものらしい。
私の想像していたものは巨大な獣のような生物なのだが、実際は粘性生物ような存在だった。
しきりに隣の彼女がヤバい、逃げようと言ってくるのだが、割と何とか出来そうな気がする。
動きも緩慢だし走って通り抜ければ、と思ったのだがその認識は即座に覆る。
私達をその丸い単眼で捕捉すると、自動車並の速度で突撃してきたのだ。
ヤバい、逃げよう。
私達は踵を反して全力疾走で元来た道を走り始めた。
しかし、途中でオオウミガラスが何かに躓いたのか、私の隣で盛大に転けた。
素直にオオウミガラスの忠告を聞けば良かったのに、それを無視して観察を続けた私の判断ミスが招いた事態だ。
私は転んだオオウミガラスの側に駆け寄って、彼女の手を取る。
どの道、直線移動じゃセルリアンに追い付かれてしまう。
絶望し切って何もかも諦めたような表情のオオウミガラスを抱えて私は横に飛んだ。
セルリアンは勢い余って私達がいた場所を突っ切って30メートル程通り過ぎた。
もしかしてと思ったがセルリアンは小回りが利かないらしい。
ここでオオウミガラスから耳寄りな情報を提供された。
セルリアンは体の何処かにある石を破壊すれば倒せるらしい。
……分かったところで私にはどうにも出来ないか。
せめて、金槌があれば私でもどうにかなったかもしれないが、無い物ねだりをしても仕方ない。
私はこの難を逃れるべく簡単な作戦をオオウミガラスへ伝えて、私達は最適な場所へと移動を開始する。
その最中に一旦は私達を見失ったセルリアンが再び私達を捕捉して突撃を開始した。
タイミングを合わせて……今だ!
私達とオオウミガラスは横へ飛んだ。
余程、私達のことしか眼中になかったのかセルリアンは私達の背後にあった大岩と衝突してパッカーンとブロック状に粉々に砕け散った。
衝撃が弱点の石に伝わったのか、はたまた体が耐えきれなかったのか分からないがとりあえず危機は脱したようだ。
すっごーい!とオオウミガラスは大はしゃぎだが、正直私はへとへとだ。
こんなことは二度とゴメンだ。
その後、私達は何事もなく道中を進み続けると、空から虹色の物体が降り注いできた。
その物体は空を飛ぶ鳥に当たると、鳥の姿があっという間に少女の姿に代わりそのまま空を飛んで何処かへ行ってしまった。
新しいフレンズが生まれたよ!と無邪気にはしゃぐ彼女の隣で私は今の光景に驚きを隠せずにいた。
フレンズとは人の事ではなかったのだ。
フレンズとは動物の姿から人の姿へ変わった少女達の事をさす言葉だったのだ。
貴女は何のフレンズなんだ?
オオウミガラスのフレンズだよ。
始めに言ったよねと彼女は頭に付いている小さな翼をパタパタさせながら私の問いに答えてくれた。
どうやら私は動物が人の姿に変わってしまう不思議な土地へ迷い込んでしまったらしい。
いったい、ここは何なんだ?
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