漂流フレンズ日記

空想現実主義

そして、私はフレンズと出会った。

第1話 漂着

 一日目


 私は何処かの浜辺で目を覚ました。

 何処かと言うのは私自身に全く記憶にない場所である上に、海水に浸かったせいか電化製品が軒並みダメになっていた為にGPSが使えないせいだ。


 ここは何処なのだろうか?

 確か私は船に乗って……投げ出された記憶はない。


 ふと、視線を感じて背後を振り替えるとジャージを着た少女が興味深げに私を見ていた。

 この地は少なくとも無人島ではないらしい。


 話を聞くと海を泳いでる最中に私が浮かんでるのに気が付いて陸まで運んでくれたらしい。

 心の底から感謝を述べたのだが、返ってきたのは『あなたはもしかしてゴリラのフレンズ?』と言う煽り言葉だった。


 そんなに私の見た目はゴリラに見えるのか?


 怒りを抑えつつ無垢な笑顔を向けてくる少女の手を取った。


 ちなみに彼女の名前はオオウミガラスと言うらしい。

 大海烏とは見た目に反して可愛らしくない名前だ。


 彼女にここから一番近い町は何処なのかと聞くと、彼女は首を傾げて『町って何?』と逆に問い掛けてきた。


 町の概念が無いのだろうか?


 ともかく、人が沢山住んでるところに案内してもらうことになった。


 しかし、人をフレンズと呼称するのはここの方言なのだろうか?


 その後、私はオオウミガラスに案内されるままに着いていったのだが、周囲は人里からより離れた場所になってくる。

 本当に大丈夫だろうかと思い始めた矢先に新たなる少女が現れた。


 水着のような黒いワンピースを着て、頭に貝殻の髪飾りを付けた少女。

 そして、何故かお尻から尻尾のようなものが生えているように見えるのだが、これは水着の飾りなのだろうか?


 興味深げに観察をしていると水着の少女は私に対して珍しいフレンズですねと言ってきた。

 まぁ、閉鎖的な田舎のコミュニティに外海からやってきた来訪者の私は相当珍しいだろう。


 彼女の名前はカリフォルニアラッコと言うらしい。

 ラッコと言われれば確かに彼女の格好はラッコに見える。

 コスプレにしては中々素材にも凝っているのか、一見すると尻尾も本物かと思うくらいのクオリティだ。


 ラッコの彼女からこの先に大型のセルリアンがいるから岸壁沿いを通って向かった方が良いと言われたが……


 私は到底人が踏破出来そうにない荒れた岸壁を見てため息を吐いた。

 どう考えても浜を離れて内側を歩いた方が良い。

 遠く離れなければ大丈夫だろう。


 それとセルリアンなるものが何なのかもついでに聞いてみると、どうにも人を捕食する凶暴な生物のようだ。


 願わくばこの先セルリアンに出逢わないように……


 カリフォルニアラッコと別れて私達は岸壁から少し離れたところを移動する。


 オオウミガラスからは泳げば楽勝だよとありがたいアドバイスを頂いたが、私はあまり泳ぐのが得意ではないのだ。


 移動途中、歩き疲れたオオウミガラスを気遣って私は一旦休憩を挟むことにした。


 その際に鞄から乾かした手帳とシャーペンを取り出して今までの事を簡単に記録した。


 オオウミガラスは私が日記を書いているのに興味を持ったのかチョロチョロと私の背後に回って私の手帳を覗き込んで一言呟いた。


 それ、何の絵?


 ……どうやらこの地域は識字率がイマイチのようだ。

 まぁ、読めないのはありがたい。


 私は割と好き勝手な事を書くつもりなので。


 その後、休憩中にオオウミガラスからジャパリまんと呼ばれるあんまんのような見た目の食べ物をもらった。

 これが中々美味であり、私は一口食べただけでやみつきになる。

 お土産があるのなら是非買って帰りたいものだ。


 腹も膨れて疲労も回復した私達は再び歩き始めた。


 そろそろ、迂回出来ただろうか?


 私達は丘を目指して内陸へと歩き出す。

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