オワコンだって惑星行ったらちょーぜつブームなんだぜっ!(宇宙での冒険-3)

「もう大丈夫だよっ」

 マジか……!

 涙目で彼女の方に振り返った。

 彼女は『そんな怖がらなくて大丈夫だよ〜』って思いながら笑ったように思えた。

 「あ、ありがとう……!」

 「いいよっ、後、もう立っても大丈夫だよ?」

 私はずっとしゃがんだままで彼女を見上げる感じでいた。

 「そ、そうだねっ!!」

 私は急に恥ずかしくなりこれまでにないほどスピィーディーに立った。

 いや、スーパースピィーディー身支度よりは早くないか。あのご飯を食べ終わった後に椅子から立ち上がる速さは誰もかなわないだろう。ふふっ。

 私は心の中で笑った。

 「ねえ、さっきのはなんだったの?なんか他の人の声がしたけど……」

 私は先ほどの心の笑をどうにか押さえ込み、いかにも『あ、私マジメですけど』オーラを必死に放ちながら問いかけた。

 すると彼女の笑顔は一瞬暗くなったように見えたが、すぐにさっきの笑顔に戻った。

 「あ、え〜っとね………このことを知っちゃうと後悔するし、いいタイミングがあったら教えるよっ!」

 彼女の言う『いいタイミング』とは一体いつだろうか。なんか永遠にこないような気もするが…………まあ、私は聞いちゃいけないっぽいし彼女とはこれから先しばらくは一緒にいると思うからもう少し仲良くなったら聞こう。

 「あ、それで君の名前は何?」 

 私は彼女に問いかけた。 

 ここで『君の名は?』と聞くと、『あ、まだそのブームだと思ってんの?』って思われたら困るし、そもそも知っているかどうかも分からないから止めといた。

 「あ、そこは『君の名は?』って聞くところじゃないのね。もう時代は変わったのか〜」

 うん。そうなんだよねぇ〜って…

 「知ってるんかいっ!!!」

 私の声はさっきのおっさん以上に大きな声だったのかもおしれない。

 そんな私に彼女は『き、君そんな声だして大丈夫なのっ!?』と目を大きくして驚いていた。

 なんかデジャブった気もしたがまあ気にしないでおこう。

 「あ、なんかごめんねっ………」

 私は先ほどの恥をどうにか挽回しようとしたが、彼女の記憶に残り続けてしまうことは避けられないことを薄々気づいていた。

 「い、いやっ…すごい声量だなぁ〜って思っちゃって」

 彼女はなんて優しいのだろう。

 二人しかいないのに私を必死にフォローしようとしている。

 「そ、それで……き、君の名は?…」

 私はあえてオワコンのフレーズを口にした。

 彼女はオワコンなのを知らないので、「Hope Heart hillです!」と恥ずかしからずむしろ、『時代に乗ってますよねぇっ』くらいの勢いではっきり言った。

 「へ、へぇ〜。いい名前?だねっ……」

 なぜ私が戸惑っているのかって?

 そうっ、たぶん英語なのは分かったけどなんて言ってるか分からないからだっ!!

 「あ、もしかしてなんて読むかわかってないでしょ〜」

 うっ………バレてしまったか。

 まあ、後々のことを考えるとバレてしまってよかったはずだ。

 「私の名前は、ホープ・ハートヒル。ホープとでも読んでっ」

 「分かった!ホープちゃん…?」

 私は英語だから『ちゃん』をつけようか迷ったが一応初対面だしつけておいた。そしたら、

 「『ちゃん』なんてっ、英語には『ちゃん』はつけないんだよ〜」

 と私が本当に英語が解らないダメ人間だと思われてしまった。

 まあ、実際英語なんてイミワカンナイだしダメ人間かもしれないが……。

 「で、君の名は?ふふっ」

 彼女はやはり『時代に乗ったイケイケ女子』だと思っている。

 これは本当のことを教えたほうがいいのかっ。

 私の脳は彼女のためにくるくる回った。

 結果、『ちょっと面白いし、ほっといても可愛いからいいんじゃね?』に決まった。

 「えっと、私の名前は………………」

 あ、あれ?私の名前は?

 私の、私のっ………


 『私の名は。』

 

  

 

 

 

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