『さぁ!今回も始まりました!!今回のゲストはこちらっ』

「世界が、戻った……」

 こんな発言を誰かに聞かれたら『どうしたんだよコイツ?」、『病院紹介してあげようか?w』などと言われそう。

 後ろにすぐさま振り返り辺りを見回したが、人はいなかった。

 この童謡を隠しきれないままひとまず家に入り、ランドセルを放り投げリビングのソファにダイブした。

 「えーっと、玄関前について、気がついたら世界が変わって…、そして気がついたら世界が戻った」

 自分なりにまとめてはみたが、混乱状態は変わらない。

 すると、脳内でクイズ番組が始まった。



 「さあ、今回も始まりました!司会の佐々木です。そして今回のゲストはこちらっ」


 佐々木さんはテレビパネルに向かって指をさした。

『ジャン、ジャン、ジャン、ジャン、ジャーン!』

 効果音に合わせてパネルに今日のゲストが出されていく。


 「そしてスペシャルゲストはこちら!」


 最後にパネル一面にある人の名前が出た。

 超スペシャルゲストでクイズ番組なんてでるイメージはあまりない人の名前だ。


 客席からは黄色い声が聞こえる。

 もちろんそのゲストは女性なのだが。

 

 そして、どんどん問題を華麗にその女性は解いていった。

 他のゲストも負けづと頑張るがやはりその女性にはかなわない。


 「さあ、ラスト1問!答えられればハワイ旅行券プレゼントっ」


 『おぉ〜』『頑張って!』


 客席からの声援に笑って答える人もいれば、『俺はそんな奴とは違う』と言い張ってるかのように真顔な人もいれば、ドヤ顔な人。

 ちなみにその女性は、上の三つに当てはまらなく、静かなんだけで心情が読み取れない表情だ。


 「クイズです!」

『ジャージゃン!』

 

 効果音とともに出てきだお題は、『先程迷い込んだ世界はなんでしょー!』という、とても簡単そうなクイズだ。

 これがラスボスでいいのか困惑する客席と、『らっくしょー!』と思いながら解答ボタンを一斉に押すゲストの空気が対決していた。

 一斉に押したが、ほんの少しの差だったのだろうか、ドヤ顔の人が選べれた。

 解答するときもドヤ顔で、「玄関前の時空空間が歪み先程の世界へとなんだかの理由へ移動した」と『あ、俺実は頭いいですけど』アピールをし解答したが、問題文の求めているのを解答できたか考えると、向こうは『先程の世界の意味』けどドヤ顔さんは『先程の世界へ行く方法』と少しずれている気がする。

 まあ、どちらにしろ『ブッブー』でしたが。

 

 そんな効果音を聞いたドヤ顔さんは『え、えぇっ』と動揺を隠せずにいた。


 「さあ、他の回答者はー!」


 ドヤ顔とある人を除いて一斉に解答ボタンを押した。

 次は客席に笑顔で対応して好感度アップする人だ。


 「もちろん、夢の世界さっ」


 こちら、ウケ狙いでは決してありません。

 繰り返します。ウケ狙いではありません。


 もう自分王様。いや、王子様ですけど的な感じで少々イケボで言い放った言葉は、響きながら寂しさと冷たさを残して消えていった。

 もう笑いも取れないし、自称王子様もこの反応は予想外だったらしく驚いた。

 

 それからも、真面目な人の解答も違うし、『本当に解答なんかあるのか?』とみんなハワイ旅行券も忘れて呆れてしまった。

 いや、ある人は真剣に考えたが。

 そう、あの女性だ。

 その女性は最後の最後まで解答ボタンを押さずに考え続けた。

 ぶつくさ何かを言いながら。

 流石に時間も時間だったのでこのクイズ番組は終了し、再来週に持ち越しらしい。


 脳内のクイズ番組は終わった。


「さぁーってと、宿題でもするかぁ」

 

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