ある日起きた『ファンタジーワールド』

 教室に入ると、半分くらいの人が教室にいる。

 教室の一番後ろ、そして一番窓側の席が私の席だ。

 黒板に、『先生の机にある工作用紙を一枚撮り、一年生へのお祝いメッセージを書こう!』と書いてあった。

 私は筆箱や教科書をしまい、ランドセル後ろの棚に置く。

 さぁってと……。

 私はスキップで工作用紙を取りに行き、席に着いたら早速メッセージを書いた。

 内容は恥ずかしいから教えないが、結構いい文章だと自分では思っている。

 後はこれをハサミで切るだけ。

 私はお道具箱からハサミを取り出そうと思った。

 お道具箱を開けてみると、そこにハサミはなかった。

 おかしいな〜。

 仕方がないから力強く折り目をつけ、手でできる限り綺麗に切った。

 私は中休みの時、一人で本を読んでいる。

 『異世界に行こうとカフェオレを飲みすぎてカフェオレ星人になってしまった』という情報量がとても多い題名が私のお気に入りだ。

 最終的にはカフェオレばかり飲みすぎて夜寝れなくなったという題名でなんとなく想像出来るオチなんだが。

 けど面白い。

 だってカフェオレばかり飲みすぎて肌もカフェオレ。匂いもカフェオレ。口癖もカフェオレ。

 しまいには、『カフェオレ』と『カラオケ』がなんとなく似ているからといってカラオケを一週間は7日しかないのに8日も行っているという、もう君すでに異世界行ってんじゃね。って思わせるほど面白いのだ。

 みんなにも読んで欲しいという気持ちと、あまり読んで欲しくないという気持ちが交差する。

 実際あまり売れてなくて取り扱っている書店も少ないのだが。

 そんなこんなで気付けば先生も教室についていて、朝の会が始まろうとしていた。

 これが、中学、高校と上がってくとHRなんだから、小学生からHRでもいい気がする。

 というか、小学生だけなんか別物というのを止めてほしい。

 小学生でも言う事聞ける子はいるはずだ。

 まだ身体が成長しきっていないからだろうか?

 すると、「はい、みんな席についてー」と用事を終わらせた先生が言った。

 恋バナをしていた女子たちも、今月のレアモンスターの話をしていた男子たちも一斉に席に着く。

 日直が黒板の前に出て「起立っ」と小さく言った。

 私の知る限りではあの子はクラスで一番声の小さい女子。

 その守りたくなるような目。

 私もあんなに可愛ければっ……。

 謎の怒りが来て奥歯を噛みしめる。

 今日からダイエッ…、いや、今日の夜ご飯は久しぶりのお母さんの手作りハンバーグだから明日から二しよう。

 こうして、私の『女子力アップ作戦!クエスト1;ダイエットをし、

スリムになれ!』はなかなかクリアできないのであった。

 先生に隠れて本を読もうとしたが次のページがなかったので諦めた。

              2

 放課後、私は理科室にいた。

 理科室独特の匂いが私の心を溶かしてゆく。

 窓から差し込むオレンジ色の夕日が私の心を溶かしてゆく。

 非常に虚しく。

 非常に悲しく。

 溶かしてゆく。

 

 ー明日からは頑張ろうー


 私は世界一と言ってもいいほど笑顔で理科室を出た。

 帰り道だって、落ちてくる桜の花びらがみんな笑っているように思えるし、道端に落ちていたゴミを、公園にあるゴミ箱に捨てた時は世界一環境を良くしていると思えた。

 世界一『幸せで』、『明るくて』、『優しい』人だと我ながら思った。

 家についた。

 いつものようにドアを勢い良く開けた。

 勢い良く入った。

 耳鳴りがした。

 怖くなり目を瞑った。

 目を開けた。

 そしたらそこは、


 ー甘ったるいファンタジーな世界だった。ー

 

 


 




 

 

 

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