私の朝日課
「ビビビビッ。ビビビビッ」
電子音のアラームが朝を告げる。
「ふぁぁ。うるさいな…」
こんな独り言はペットの『レーヴ』にしか耳に入らない。
レーヴとはペットショップで目と目が合ってから仲良しのインコだ。
黄色い羽を自由に使って飛ぶのがこんなに愛らしいこと知ったのもレーヴのおかげ。
私はうるさいアラームを止め、布団から仕方なく出て、水色のふわふわスリッパを履いた。
そして毎日の日課。
そう……
『レーヴへのエ・サ・や・りっ』
これがまた大変。
レーヴったら鳥かごを開けた瞬間すぐに飛んで行ってしまう。
その時は餌でどうにかおびき寄せ鳥かごに戻ってくれたが、学校に遅刻してしまった。
今回も注意して………。
そっと鳥かごを開け、すぐに餌の容器を取り、一回閉めて、餌を入れ、ゆっくり開けて目にも留まらぬ速さで容器をセッティング。
この神業は私にしかできないだろう。
誰かに自慢したいところだが生憎友達はレーヴしかいない。
いいんだ。一人で……。グスッ。
こんなくだらない一人芝居を繰り日遂げながら一階のリビングに行った。
私はお母さんと二人暮らし。
お父さんは生まれた時からいなくて、かれこれ10年生きた私にもお父さんがいない理由を教えてくれない。
二分の一成人式を迎えたというのに…。
だからこれからも粘り強くお父さんの正体を聞き出したいところだが、
お父さんはどんな人なの?とかお父さんについて質問すると、お母さんは決まって暗い顔をする。
そんな顔を見ちゃうから知りたくてもこれ以上聞き出せない。
まあ、諦めもたまには必要だからな!
ドヤ顔をしながら机の上にあるラップで包まれたパンとスクランブルエッグを食べた。
あ、食べる時もドヤ顔じゃないからね?
「それにしても静かだなー。」
お母さんは夜遅くから仕事をして、帰ってくる日もあるけどそうでない日もある。
帰ってきたお母さんはいつも決まって泣いている。
「なんでこうなったんだろう」
「気持ち悪い」と。
相当職場が好まないらしく、いっその事辞めちゃえば?と軽い気持ちで言ったら、「今働いてるところはお給料が高いからやめられないの」と言う。
私はお金も大切だが、職場の楽しさも大切だと思っていた。
きっとお母さんは私の考えとは違うのだろう。
それにしても本当に静かだ。
テレビをつけて誰かの声を聞きたいところでもあるが、テレビが壊れていて使えない。
早く治ることを願っていよう。
ご飯も食べ終わったところで、学校の支度をした。
私の行っている学校は歩いて五分くらい。
遠くないからそれだけは救いだ。
服を着替え、学校で使う教科書の確かめをし、最後に鏡でニッコリ微笑み静かな家に「行ってきまーす」と言った。
学校への道は特に『川が綺麗!』とか『犬を大量に引き連れ散歩をしてるおばさんがいる』とか見ていてワクワクしたり面白かったりする映像はない。
強いといえばアリの行列がやたらと長いということくらいだ。
こんなの話にもならないので説明はしないが。
住宅街をまっすぐ進み、角を曲がって犬に挨拶をし、初めて落ちる桜の花びらを頭につけて、小さな門をくぐった。
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