アイドル五ペン伝

けものフレンズ大好き

アイドル五ペン伝

 これはPPP《ぺぱぷ》結成に至るまでの――新たなアイドル伝説を築き上げようとした少女のそれなりに長く、険しい結成までの道のりの話……。


 2代目PIPぴっぷが解散して幾ばくかの月日がながれたある日、少女――のちにプリンセスと呼ばわることになる一羽のロイヤルペンギンは、としょかんで震えていました。


「これは……これはすごいわ、すごすぎるわ!」

 そのとき彼女が見ていたのは初代PIPの写真でした。

 文字は分かりませんでしたが、写真だけでそのすごさが伝わってきました。

「でも、今彼女達はいないのよ……」

 ロイヤルちゃんは少し考えます。


「だったら私が作るしかないじゃない!」 


 こうしてロイヤルちゃんのメンバー探しの旅は始まりました。


「まずはイワトビペンギンのイワビーからね。とりあえず海岸に行けばそのうち見つかるでしょ」


 ロイヤルちゃんにこれといったアテがあるわけではありませんでした。

 ただ、情熱だけは人一倍ありました。

 何日かイワトビペンギンを探し続け、エアギターをしているイワトビペンギンを見かけると――


「あなた、アイドルやってみない!?」

「……は?」

 初対面の上お互い名乗りもしないのに、ロイヤルちゃんは言いました。

「お前いきなり……ロックすぎるだろ……」

「でも私はそれ以上のロックを貴方に期待しているわ」

「……面白いな。いいぜ!」

「よろしくね! それとあなたは今日イワビーよ!」

「いわびー? よく分からないけどよろしくな!」

「ところでイワビーはジェンツーペンギンに知り合いいない?」

「あ~、いることはいるけど、なんかすごい真面目でお嬢様っぽい奴だぜ?」

「余計良いわ! 紹介して!」


 そしてロイヤルちゃんは、イワビーちゃんに連れられ、ジェンツーペンギンに会いに行きました。


「あらイワトビさん、どう――」

「想像したとおりのタイプだわ! あなたアイドルやってみない!?」

「へっ?」

 突然のことにジェンツーちゃんは動揺しました。

 その頃はアイドルになろうとも思っていなかったし、アイドル自体よく知りませんでした。

 しかし、ロイヤルちゃんの勧誘は続き、イワビーちゃんに助けを求めようとしても、面白い顔をしているだけだったのでついに――


「分かりました……」


 ほとんど強引に首を縦に振らされました。


「よろしく、あなたは今日からジェーンね!」

「ええ!?……はあ……」

「ロックな奴だろ?」

 

 ジェンツー改めジェーンちゃんは曖昧な笑顔をすることしか出来ませんでした。


「これであと2人ね。ねえイワビー、ジェーン。フンボルトペンギンで知り合いはいないかしら?」

「フンボルトペンギン……うーん、思いつかないな」

「フンボルト……あ……でも……」

 ジェーンちゃんは何か思いついたようですが、はっきりと口にしません。

「ジェーン、言いたいことがあるならはっきり言って。たとえ断れたとしてもそれは私の責任だから」

「えっと、そう言う意味じゃなくて、随分変わった子だから……」

「初代だって天然キャラだったんだから、むしろ望むところよ」

「そこまで言うなら……」


 ジェーンちゃんに連れられ、ロイヤルちゃんはフンボルトペンギンに会いに行きます。

 問題のフンボルトペンギンはちょうどジャパリまんを食べているところでした。

「あなた、アイドルにならない!?」

「・・・・・・?」

 フンボルトちゃんは全く理解出来ないと言った表情をしています。

 しかし構わずロイヤルちゃんは話を続けます。

「あなたにはこの2人同様アイドルの素質があると思うの。絶対になるべきよ!」

「・・・・・・?」

「ジャパリまんあげるからウンと言いなさい!」

「うん」

 最終的に実力行使でフンボルトちゃんに首を縦に振らせます。

「よろしい! あなたはこれからフルルよ!」

「わかったー」

 あまり分かっていない表情で、フンボルトペンギン改めフルルちゃんは首を縦に振ります。


「いいのかなこんなので……」

「いいんじゃねーか、おもしろそうだしさ!」

「ふるるー」


 そして最後の1人となりましたが、コウテイペンギンのアテは誰にもなく、しばらく各自で探すことになりました。

 しかし、あまりうまくいかず、ロイヤルちゃんもコウテイペンギンは抜きでもいいかと思い始めていた頃……。 


「あなたリーダーになりなさい!」

「ええ!? そもそも何の!?」

「アイドルの、よ! あなたにはその貫禄があるわ!」

「いや、でも私、踊りとか歌とか……貫禄?」

「そうよ! 技術はあとで身につければ良いの! さあ今日からあなたがコウテイよ!」

「・・・・・・」

 突然のことに動揺し、そのまま気絶してしまうコウテイペンギン改めコウテイちゃん。

「分かってくれたようね」

 ロイヤルちゃんはそれを同意と勝手に受け取り、ついに新生PIPが誕生したのでした。


 そして始まるロイヤルちゃんの練習。

 人一倍努力して歌も踊りも完璧にマスターし、それを4人に熱血指導するロイヤルちゃん。

 そんな日々の中で、ロイヤルちゃん以外の4人はある疑問がありました。


「なあ、ロイヤル、お前いつまでロイヤルのままなんだ?」

「え?」

 イワビーちゃんの話にロイヤルちゃんはきょとんとします。

「そうですね、私も不思議に思ってました。なんでロイヤルさんだけ愛称がないんですか?」

「だって私は……」

 このときロイヤルちゃんはマーゲイちゃんのようにマネージャーのような立場を考えていました。

 何故ならPIPは初代でも4人、ロイヤルペンギンの席はなかったのです。

「そうだな、いつまでもロイヤルじゃ部外者みたいだ」

 コウテイちゃんまでジェーンちゃんの意見に賛同します。

 こうなると「私はやりません」とは言えなくなります。

「うーん、プリンセス!」

 突然フルルちゃんが言います。

「ロイヤル見てるとそんな気がするー」

「え……あ……」

 ロイヤルちゃん改めプリンセスちゃんは珍しく動揺してしまいますが、他のメンバーが口々に賛成し始めたので、もう引き返せません。

「……分かったわ! 今日から私はプリンセス! これからこの5人で頑張るわよ!」

 

 こうして後にアイドル会を席巻することになるPPPが誕生しました。

 他のメンバーは知りませんでしたが、自分が入ったことを配慮してグループ名もこの時変えました。 


 しかしこのプリンセスちゃんの選択が、プリンセスちゃん自身に大きな影を落とすことになるのですが、それはまた別のお話。



                                  おしまい

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アイドル五ペン伝 けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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