第7話 対ドラゴン

 ドラゴン。

初めて目にしたソイツは実際かなり迫力のあるヤツだった。


「うあ~、何アレ?」


 前の世界でもゲームかなんかでドラゴンは見たことがある。でもそこにいたソイツは、赤黒い鱗に包まれた異様な雰囲気のヤツだった。


「アレが狂いっスか。うはぁ、たしかにアレはヤバイっス」


「ああ、とてもじゃないが俺達ではどうにもならん」


「(コク)」


 確かにあれはヤバイ。アタシでもわかる。

アレとやるのかあ、これは最初から全力でいかなきゃ。

 よしっ、気合をいれてっと。


「じゃあみんなはここで待ってて、アタシが行ってくる。それと少しでもヤバイと思ったら迷わず逃げて」


「しかしお嬢…」


「アレはマジでやばそうだしね。あんなのと戦うのはアタシも初めてだから迷わず逃げること、いいね」


「はい」


「うッス」


「(コク)」


「じゃあ行ってくるよ」


「お嬢、ご武運を」


「うん」


 三人をその場に残したアタシは1人で先へ進む。

かなりドラゴンに近づいたはずなんだけど、ドラゴンはこっちを意に介す様子もない。

 気づいてないのかな?そんなことはないか。狂ってもドラゴンの威厳ってやつかな。


「ここらでいいか」


 ドラゴンに近づいたアタシは覚悟決め、右手を胸に当て神から送られたふざけた呪文ワードを口にする。


本気マジ狩るカルフォーム!」


 呪文ワードの発動とともにアタシの見た目は一変する。

白いミニスカドレスにピンクのスパッツ、腰には大きなピンクのリボン。

 そう、その姿は魔法少女。


 あたしを引っ張った神様が、『キミにはこれが似合うよねえ』とか言いやがってアタシに押し付けた特殊能力。

「なんだよマジカル少女ガールってよっ!こんなのアタシに似合うわけねーだろ。アタシがやったらせいぜい本気マジ狩るカル少女ガールだっての」とか言ったら。『いいねっ、それ採用っ』って呪文ワード本気マジ狩るカルフォームにしやがってあのクソ神が。

 ちっくしょう、思い出したらまたムカムカしてきやがった。


 まあいい。あのドラゴンを倒すにゃ力が必要だ。

このムカムカといっしょにぶつけてやる。


 ハッ、ドラゴンがこっちを見やがった。

さすがにこの魔力は無視できないってか。


「いくぜこのトカゲ野郎がっ!」



「おりゃっ!」


ガスッ!


「せいっ!」


ドスッ!


「ああ、ちっくしょう。蹴りやパンチぶち込んでるんだが、効いてんのかどうかわかんねーなこりゃ」



「…ダリルさん」


「…なんだ」


「俺、ドラゴンに殴りかかるヤツ初めて見たっス」


「…ああ、俺もだ」


「(コク)」



「くっそー、参ったなこりゃ、いったいどうすりゃ、…あ?」


 今まで殴られてたドラゴンが大きく翼を広げる。


「まじぃ、飛ばれるとやっかいだ『アイス・ジャベリン』」


「ギャウッ」


「あ、効いてねーのか?」


翼に氷の魔法を打ち込むが、大して効いてる様子もない。

上空に上がったドラゴンはアタシの方を見ると口を開け…。


「やべっ」


 ブレスを吐き出した。


 アタシは咄嗟にその場を離れブレスをかわす。


「っぶねーなコラ。ブレスなんか吐くんじゃねーよ。山火事になんだろうがっ!」


 魔法でウォーター・ボールをいくつかだし、燃えあがっている木々を消化する。



「…まずいな」


「ええ、あのドラゴン、狂いだけあって魔法耐性があがってるっス」


「お嬢の魔法が効かないとなると、…いやもっと強力なのを打ち込めば」


「あっ、ダリルさんあれっ!」


「はっ、なんだありゃ」



「…ッチ、埒があかねーなこりゃ。仕方ねぇ、アレ使うか」


 アタシは武器召喚呪文とっておきを口にする。


召喚来い本気マジ狩るカルチェーンソー」


 現れたのは片手で持てるチェーンソー。

神様がノリで作ったおふざけ武器だ。


 だがよ、こいつの威力はハンパねーぜ。


「起動」


ギュイィィィーーン


高速で唸りを上げるチェーンソー。


「飛翔」


 呪文ワードとともにアタシの背中に白い翼が現れ、アタシは空を翔る。


「覚悟しろよこのトカゲ野郎がっ!まず一つ」


ザシュッ


「ギャウゥゥーン」


 高速で飛ぶアタシはすれ違ざまに翼の片方を切り落とす。

空を蹴るように方向転換したアタシは。


「二つ目っ!」


ズシャン


「ギャオォォーン」


 残りの翼も切り取る。

上空にいるのを維持できなくなり落ちていくドラゴン。


ズゥウゥーン


 落ちたドラゴンに追いつき。


「これで終いだぁっ!!」


 ドラゴンの首に狙いをつけたアタシはチェーンソーを振り抜き。


ザンッ






ドシャッ


 その首を刈り取った。


「…はぁ、これで終わったろさすがに」


 そうしてアタシはドラゴンを討伐した。

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