第6話 道中2
「まだお代わりあるよー」
「あ、俺もらうっス」
「(コク)」
「ん、なら皿ちょーだい」
ジャガイモやら野菜やらウィンナーやら煮込んで、なんちゃってポトフっぽもの作ってみたんだけど大丈夫だったみたい。
「味へーき?おかしくない?」
「美味しいですよ、お嬢」
「うん、うまいっス」
「(コクコク)」
「ならよかった」
「それに、まさか焼きたてのパンが野営で食べられるとは思いませんでした」
「ああ、そうっスよねえ。これはビックリっス」
「ああそれね。出かける準備してる時にパン屋さんに寄って、んで焼きたてのパン買って空間収納に詰め込んできた」
「便利すぎっスわ、お嬢の空間収納」
「まあねぇ、みんなはどうしてるの?」
「空間収納がかかった袋、マジックバッグというのがあるんですよ。痛みやすいものはそれに入れるんですが」
「これがちっさい袋でも高いんスよ、あんま量もはいんないし。なんでホントに痛みやすそうなのはそれに入れて、後は日持ちがしそうなの買うんスよ」
「なるほど、野営が続くと大変なんだね」
「そうっス。なのでお嬢の空間収納はすっげー羨ましいっス」
「あははー、これは譲れないからねぇ」
「それは分かってるんスけどね」
そんなこんなで夕食を終えこれから就寝。
っとその前に。
「野営ですので一応見張りを立てます、お嬢はそのまま休んで…」
「それはダメだから」
「ですが」
「一応みんなで来てるんだしね、アタシもやるよ」
「…、そうですか。なら最初にお願いしていいですか?後で代わりますので」
「うん、じゃ見張りやってくるね、みんなは休んでて」
「了解っス」
・
・
・
「ダリルさん」
「なんだ?」
「お嬢ってなんか普通の女の子っスね。いやなんかうまく言えねーんスけど。あんなとんでもない力持ってるようには」
「ああ、言いたいことはわかる。まあアレは特殊な力なんだろうな。お嬢も普段言ってるだろ『アタシはただのCランクだ』って」
「まあそうなんスけどね。それでもあの若さでCランクてのもすごいんですが」
「(コクコク)」
「たしかにそうだが、俺たちが圧倒されたあの力を持っているのもお嬢、そしてただのCランクとして活動してるのもお嬢。まあ、それでいいじゃないか」
「そうっスね」
「(コク)」
・
・
・
「…クシュン。うう、ちょっと冷えてきたかな」
明けて次の日、間単に朝食を済ませたアタシ達はドラゴンのいるらしい森へと進んでいる。
さすがにここまで来ると多少はモンスターも手ごわくなって来るんだけど。
「…でもこれって」
「ええ、厳密にはコイツ等はモンスターじゃありません」
倒したイノシシみたいのを見てダリルさんが言う。
「コイツ等は野獣ってやつっスね、ワイルドボアーっス」
「野獣ねぇ」
「お嬢は魔素ってヤツは知ってますよね」
「知ってる。この世界に普通にある魔力の素みたいなのだっけ?」
「そうです、その魔素を取り込んだヤツ等が魔獣、取り込んでないのが野獣です。魔素に当てられすぎると狂いになるって言いますが、魔獣ってのはその一歩手前みたいなもんです」
「なるほど」
「後、簡単な分け方っスけど」
「ん?」
「食えるか食えないかっス」
「あー、それでコイツ等は回収してるのか」
「そうっス。コイツ等普通に売れますからね、肉やら毛皮やら。持って帰ってバラすんス」
「なるほどね」
普段は一頭や二頭狩ってすぐ帰るらしいんだけど、とりあえず馬車に積める分は狩っている。
もういっぱいかな?まだ積めるかな。
「しかしコイツら倒すの面倒だよね」
「結構タフですからねコイツら、こういうのはウチのライアンが得意です」
あ、ライアンさんがちょっとドヤ顔でこっち見てる。
ライアンさんの武器はハンマーだ、デッカイ盾でワイルドボアーの突進を止めて、頭にハンマーをぶちかましてる。へー、すごいなあ。…あ。
「ライアンさんちょっとこっち来て」
呼ぶとライアンさんが、倒したワイルドボアーを引き摺りながらこっちにやってくる。
「腕ケガしてるよ。ちょっと出して」
ライアンさんが出した腕に回復魔法をかける。
「はい、オッケーだよ」
「……お嬢、……ありがとう」
「どういたしまして」
「しっかしお嬢も器用っスよね、回復魔法も使えるし」
「まあ回復魔法使えるのはたまたまだけどね、でもソロだと色々出来た方がいいでしょ」
「確かにそれはそうっスね」
そしてしばらく森の中を進み。
「さすがに馬車はここまでなので、そこの開けてるとこに馬車を止めて後は歩きになります」
そういって馬車を止め、アタシ達は馬車から降りる。
「ここに止めといて平気?」
「ええ、ここに来るまでの間、あらかたやっかいそうなのは片付けましたし」
「それに新手が来そうな雰囲気もないっスね」
「一応馬車から馬ははずしておきます、万が一何かが現れた場合、馬は逃げられるようにするためです。きちんと調教を受けてる馬なので、馬車からはずしておいてもどこかに行ってしまうような事もありませんし」
「調教を受けてる馬は大事ッスから、念のためってやつっス」
「わかった、アナタ達も危なくなったすぐ逃げなよ」
「…ブルン」
馬車から降りたアタシ達は森の中を分け入っていく。
そうしてしばらく歩いたあたりで。
「どうだリック?」
「あー、なんかいそうな気配はするっスね」
「そうなんだ」
「ええ、魔物の気配も無いし、少し前から鳥の泣き声もしない。小動物も見かけないでしょ?ソイツらは逃げ出してるって事っス。なんかヤバイのがいそうっス」
そんな会話をして、またしばらく進むと。
「あ、ストップっス」
リックさんの声でみんなが止まる。
リックさん1人先行し、少し進むと手招きでみんなを呼ぶ。
「いたっス、アレ」
リックさんが指差す先に目をこらすと。
そこには今回の討伐対象がいた。
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