第5話 道中

 今アタシはドラゴン討伐に向かうため馬車で移動している。

乗ったことなかったんで大丈夫かなと思った馬車だけど、乗ってみるとそんなにひどいものでもなかった。サスペンションが仕事してるからかな。

 てなわけでのんびり移動してるんだけどー。


「リック、一匹そっち」


「了解っス」


「ライアン、アイツ頼むっス」


「(コク)」


 なんかねえ、道中魔物に襲われたりするんだけど、「お嬢は休んでてください」ってダリルさんが言って、3人で片付けちゃうんだよねえ。

 う~ん、楽は楽だけど、やっぱりよくないよねコレって。次からは戦闘に参加させてもらうか。


 戦闘終了後、またのんびりと馬車での移動がはじまる。

ここら辺はまだそんなにモンスターとかいないからね、モンスターに襲われるとしてもたまになんだけど。


「あ、この先なんかいるっス」


 リックさんはPTで斥候役とかやってるらしくて、こういう感知は早いんだよね。

どれどれ、あ、なんかいるなあ確かに。


「よし、この先少し行ったら馬車を止める」


 馬車が止まるといそいそと3人が降り出して。


「じゃ、自分達が行ってきます。お嬢はこちらで…」


「アタシもいくから」


「いやしかし」


「いやほら、アタシも普段はCランクでみんなと変わんないから。それにアタシも一緒に戦ったほうが、連携じゃないけど色々わかっていいでしょ」


「はぁ、たしかにそうですが」


「まあとりあえず戦ってみるよ」


「はい、わかりました」


 アタシも馬車から降りて戦闘の準備に入る。えっと武器はっと。


「ん、お嬢それ珍しい武器っスね」


 アタシが取り出した武器を見てリックさんが聞いてくる。


「これ?1号君」


「へ、1号君?」


「えっと、なんだろ。棍棒っていうかメイスっていうか。ほら、鍛冶もやってくれる武器屋さんあるでしょ、あそこのおっちゃんに作ってもらった」


 そう言って武器をみんなに見せてあげる。

ぶっちゃけ見た目は金属バット。

長さ70cmくらいの、そうだなあ、少年野球で使うくらいの細めの金属バット。

まあ野球なんてないからみんなわからないか。


 みんなはしげしげとアタシの武器をみながら「へぇ」とか言ってる。


「いやほら、アタシも武器とか必要かなあって武器を見に行った時にね。でもやっぱり剣とか使ったことないしどうしようかなあっと思っててさ。で武器屋のおっちゃんに相談したら作ってくれた」


「たしかに棍棒よりは細長いですし、メイスのようでもないし。変わった武器ですね」


「それ重くないんスか?」


「重くないよ、持ってみる?」


 とリックさんに1号君を渡す。


「あ、すんません。っと、あれなんだこれ、軽いっスね」


 リックさんは渡した1号君を片手でブンブン振り回している。


「えっと、グリップエンド。んと持つとこの底に魔石が埋め込んであるでしょ?」


「あるっスね」


「それで重量軽減の魔法かけてちょっと軽くしてる」


「エンチャント武器ですか」


「そうなのかな?」


「はぇ~、しかしめったに武器とか作ってくれないおやっさんにエンチャント武器作ってもらうとか、すごいっスねお嬢」


「(コクコク)」


「そう?『おっもしれぇな嬢ちゃんは』とかゲラゲラ笑いながら作ってくれたよおっちゃん」


「はぁ…」


「ま、いいや、んじゃモンスター倒そう」


「了解っス」



「よっと」


ゴキャッ!


 アタシは1号君でモンスターの首をへし折っている。

ゴブリンってやつだよねコイツら。まあこの程度なら余裕だし。


「こっちは終わったよー、そっちはどう?」


「こっちももうすぐっス」


 その後すぐに戦闘は終わりみんなで集合する。


「お嬢、お疲れ様でした」


「うん、おつかれー」


「ここらはまだ街からそう離れてないっスからゴブリン程度なんで。しかお嬢動きが早いっスね、俺とあんま変わんないっスよ」


「そう?まあ普段ソロだしねアタシ。どちらかというとスピード重視になるかなあ」


「それはそれでアリだと思います。時間をかけてると他のモンスターが寄ってきてソロだと不利になる場合がありますから。それ以前に確実に仕留められる殲滅力もないといけませんが、お嬢なら平気でしょうし」


「うん、ではしゅーりょーっと。魔石拾った?」


「(コクコク)」


「しかし不思議だよねぇコイツら」


「何がです?」


「いやほら、倒すと魔石残して消えちゃうし。まあ後は魔石拾うだけだから楽といえば楽なんだけど」


「コイツらは倒すと魔素に戻るとか、魔素溜りから現れるとか色々言われてますね。まあ自分もあまり詳しくは知りませんが」


「そうなんだ」


 それからもたまに出てくるモンスターを蹴散らしながらアタシ達はドラゴンがいるという山へと向かう。


「しかし3人とも息が合ってるよね、大体いつも3人で組んでるの?」


「大体はそうっスね、人数が足りないときは他に募集かけたり、他のPTと組んだりするっスけど」


「なるほど」


「自分ら同郷なんスよ」


「え、そうなんだ。昔から知り合いとか」


「そうではないですね、この街に来て、お互い話しているうちに同郷と気付きまして」


「そうっス、で同じ出身てことでなんか気が合って、それからは大体一緒っスね」


「(コクコク)」


「さて、そろそろ陽も傾いてきましたし、この先の開けたところで今日は野営としましょう」


「うん」


「了解っス」


 ちょっと開けた所に馬車を止め野営の準備に入る。

ダリルさんとリックさんで三人用のテントを建て、アタシはその横にちょこんと小さめな一人用のテントを張る。ライアンさんは馬の世話をしてくれている。


「お嬢、テントは大丈夫ですか?」


「うん、小型のヤツだしね。前に張った事あるしオッケー」


「なら晩飯っスね、お嬢、料理は?」


「ああ、簡単なのならね、三人の分もつくるよ」


「おお、お嬢作った飯っすか、ラッキーっス」


「ただ量がわかんないかな、三人とも食べるほう?」


「あー、俺とライアンは結構食うっスね」


「ならそっちでも作ったほうがいいかも」


「了解っス」


 料理かぁ。あんま自信ないんだけどなアタシ。

まあ簡単な煮込みっぽのでも作れば平気かな。

 さて、では作るとしますかね。

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