第8話 さあ帰ろう
「お嬢、お疲れ様でした」
「お疲れ」
「すごいっスねお嬢、ドラゴンまで倒しちまうとは」
「(コクコクコク)」
「まあなあ、でも飛ばれたときゃあちょっとビビッた」
「でお嬢、なんスかその武器?」
「ああ、コレな。この姿の時にしか使えねーとっておきだ。ほいっ、
「でだ、どうすっかなこのドラゴン」
「そうっスねぇ、できれば討伐の証として持って帰りたいんですが。……あ、お嬢なんか来るっス」
アタシにも感知できた。なんかでっかいヤツがこっちに向かってくる。
「あれは…」
そして現れたソイツは、さっきのドラゴンよりも大きな真っ赤なドラゴンだった。
悠然とアタシ達の前に降り立ったソイツは。
『ふむ、我が来るまでもなかったか』
そう言い放った。
「コレってドラゴンの声っスか」
みんなにも聞こえてるみてぇだな。
『小さき者よ、コレを倒したのはお前か?』
「ああ、アタシが倒した」
『そうか、小さき者などに我等は傷つけられんと思っていたが、お前は違うようだな』
「アタシはちょっと特別でな」
『なるほど、お前が身にまとう力を見ればそれも納得できるか』
「で、あんたは何しにココへ」
『ああ、わが一族に狂いが出たと聞いてな、始末しにきたのだが…。その必要もなかったようだな。小さき者よ、いらぬ手間を掛けさせたな』
「いやいいって、なんかドラゴンも数が減ってんだろ?仕方ねーって」
『ん、そのような事はないぞ。我等は元より数少ない種族だが、数が減っていっているというような事はない。普段他の者たちの目に付かぬような所で暮らしておるゆえそのような話になってしまったのかも知れぬが』
「なるほどなー」
そう話してるドラゴンをアタシはじっと見つめる。ああ、このドラゴンは……。
『どうした小さき者よ』
アタシの視線に気づいたドラゴンがそう話しかけてくる。
「いやなんていうかさ、あんたは綺麗だなって思ってさ」
『ほう、我が綺麗か』
「ああ、このドラゴンと違ってあんたは綺麗だなってそう思った。まあ本来のあんた達はそうなんだろうけどな」
『まあソイツは狂いに落ちたゆえそのような姿だが。…フッ、我が綺麗か。そのような言葉は始めて聞いたな。ほめ言葉と受け取っておこう』
「ああ、あんたは威厳があって綺麗だな」
『そうか…』
「でコレどうする?」
『どうするとは?』
「いやこの亡骸あんたが処分する?持って帰る?」
『それはお前が倒したものゆえ、お前が好きにするとよい。狂いになったとはいえドラゴンの素材は貴重なモノと聞くしな』
「そっか、じゃ貰っとこうかな」
そういってドラゴンの亡骸を空間収納にしまう。
「なっ…」
「ええぇー、それ収納できるんスか」
うん、アタシもびっくりした。仕舞おうと思ったら仕舞えちゃったんだよね。
『…ハッ、面白い。お前はなかなか規格外のようだな、気に入ったぞ』
「ああ、うん。そりゃどーも」
『では我はこれで去るとしよう。機会があればまた会おうぞ小さき者よ」
「ん、機会があれば」
『ではな』
そう言ったドラゴンは来た時と同じように悠然と空に舞い上がり、そして去っていった。
ああ、なんか綺麗なドラゴンだったなあ。
「お嬢、よく平然とドラゴンなんかと会話できましたね」
「俺なんて威圧されまくりのビビリまくりっスよ」
「(コクコク)」
「なんかあのドラゴンには敵対心?ってかそういうのはまったく感じられなかったし。普通に会話してた」
「…はぁ、そうですか」
「ドラゴンを収納しちまうし、ドラゴンに気に入られるしで。やっぱお嬢はとんでもないっスね」
「そう?」
さてと。
「ノーマルフォームっと」
「じゃあ終わったし、帰ろっかみんな」
「はい」
「ういっス」
「(コク)」
そうして討伐を終えたアタシ達は街へ帰ることにする。
狂いの討伐はちょっと面倒だったけど、でもなんか綺麗なドラゴンに会えたしこれはこれでいいか。
正直
あ、やっぱヤダなぁ。
ちなみに。
ドラゴン討伐と、そのドラゴンを持ち帰った事で街はまた騒ぎになるんだけど。
今更だよね、だってアタシだし。
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