第3話 依頼

 えーっとこの部屋だったかな?一応扉をノックしてっと。


「きたよー」


「おー、入れー」


 ギルマスの部屋に入る。結構殺風景な部屋なんだよねここ。

まあゴテゴテしてるよりはいいけどさ。


「やーっときやがったなキラ」


「や、アタシは特に用が無いし」


「お前になくてもこっちにはあるんだよっ!まあいい、とりあえず座れや」


 ギルマスの向かいに腰を下ろす。


「で、アタシに話って何?」


「あーそれな。いや何、結構やっかいな依頼が来ちまってな、お前に動いてもらえねぇかなってな」


「やっかいな依頼?」


「ああ、さすがにコレはなあ。お前になんとかしてもらわねぇと、どうにもならねえ」


「そんなにヤバイのが来たの?」


「ちょっとな。この街にはお前がいるって知られてきちまってるからな。ああ、さすがに遠方からのじゃねーぞ、どうもここが一番近いらしい」


「…はぁ。アタシのせいでもあるのか」


「そう言うなって、実際お前のおかげで助かってはいるんだぜこの街は。キラがいるから大丈夫だってな。それにギルドの連中も何だかんだ言いながらも頑張ってるしな」


「ザックさんとかリアナさんとかか」


「領主からも嫌な思いさせて出て行かれちゃ困る、あまり無茶はさせるなって言われてるしな」


「え、言っちゃっていいのそれ」


「かまわねーよこれくらい」


 まあ派手な事をやっちゃったしねアタシ。だからそれで目立つのは仕方ないのか。

 しかしそうかあ、結構色んな人に気を使ってもらってるのかアタシ。


「まあみんなそれなりに頑張ってはいるんだがな、そうは言ってもどうにも無理そうな依頼ってのはある。ぶっちゃけコレはお前にしかまかせられそうもねぇ依頼だ」


「ぶっちゃけたねえマスター」


「まあな、実際こんな依頼隠しようもねぇし、なら正直に言ってお前に決めてもらったほうがいい」


「うん、わかった。でどんな依頼なのそれ」


「ああ、コレだ」


 そういつつマスターが出した依頼だけど。


「え、ドラゴン討伐?ドラゴンて頭いいから人とか襲わないんじゃないの?」


「よく知ってるな、まあ実際はその通りだ。だがコイツはちょっと違う、こいつは狂いだ」


「狂い?」


「ああ、狂いってのはな…」


 ドラゴンは普通人とかは襲わない、これはザックさんに教えて貰った。

ドラゴンて人なんかよりはるかに知能が高いらしいんだ、それに力も強い。

だからドラゴンからしてみれば、わざわざバカな弱いヤツラなんか相手にしてられないって事らしい。なので基本ドラゴンは、悠然とまったり暮らしている。

 だがそんなドラゴンも極稀にこの世界にある魔素ってやつを取り込みすぎておかしくなっちゃうことがあるんだって、それが狂いってヤツ。

 そうなったドラゴンはたかだか魔素に当てられやがってとか、一族の恥だとばかりに他のドラゴンが処分しにくるらしいんだけど。


「たまたまそのドラゴンを倒しにくるヤツがいないと」


「ああ、狂いが見つかったって報告があってから結構立つんだがな。ドラゴン自体少なくなってるみてぇだし、気付いてねぇのかもしれねえ」


「でその狂いがこの近辺に近づいてると」


「そういうこった」


「…ねぇ、ドラゴンの討伐必要ランクっていくつなの?」


「ドラゴン討伐自体まず無いことだからな、つけるならS以上だ」


「そっか、だからアタシかあ」


「まあ、そうなるな」


 討伐必要ランクがS以上ねえ、この街にいる最高ランクはAのザックさんとリアナさんの2人。

 これはやっぱりアタシか。


「うん、わかった。これ行ってくるよ」


「すまねーなキラ」


「まあ仕方ないって。で場所ドコ?」


「この街から馬車で南に二日って所の山ん中だな」


「うあ結構近いじゃん、じゃあ今からすぐに…」


「ああ、ちょっと待ってくれ」


「ん?」


「何人かウチの野郎共連れてってくれねぇかな」


「え、ドラゴンとか無理でしょ」


「ああ、それは分かってる。現地に着くまでもドラゴンまではいかねーが討伐対象はいるわけだ、ソイツら片付けるのにな」


「ソイツらもアタシがやってくるけど」


「いやそうなんだがアレだ、うちのヤツラにも経験つませてーし。それに」


「それに?」


「お前基本ソロだろ?これからPTで行動ってこともあるかもしれねぇし、まあその予行練習ってとこだな」


「なるほどねー」


「そういうわけで何人か連れてってくれ、依頼書は俺が作り直した。とりあえず同行するヤツのランクはC以上だな、お前がCだから一緒かそれ以上のがいいだろう。それにCあれば道中出てくるようなヤツらなら問題ねえ。お前普段でも回復魔法は使えたよな?」


「うん、回復と下位の攻撃、それと空間収納なら使えるね」


「十分だ、回復持ちじゃないヤツが入るかもしらねーから、そん時はサポートしてやってくれ」


「オッケー」


「よしっと、んじゃこの依頼書持ってミリーんとこ行ってくれ」


「ほい」


 そう言って席を立ち、部屋を出ようとすると。


「おいキラ」


「ん?」


「無茶すんじゃねーぞ」


「うん、ドラゴンくらいサクッと片付けてくるって」


「へっ、ドラゴンくらいねえ。言うじゃねーか」


「へへっ、じゃ行ってくる」


「おう」


 そうしてアタシはドラゴン討伐に出かける事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る