第3話
目を覚ますとそこは森の中だった…
謎の魔法陣に飲む込まれ気がついたらわけわからん場所に。
流石にこれには赤城もテンパる。
「え?は?どこ?なに?なにがあった?本屋?え?外?ドコーーーー⁈」
「まぁ落ち着けよ。祐一。あれだろ、これはラノベ的に言えば異世界に転生したんじゃねぇのか?」
なぜかすごい落ち着いている加賀。しかもちょっと嬉しそうである。
一方全く嬉しくない赤城にとっては、
「はぁ?異世界?んなわけねーだろ。え。いや、んなわけないよね?ここどっかのグラウンドの近くとかでしょ?ほら少年野球チームとかが使ってる。」
とりあえず現実を否定。そして、最もらしい理由づけをする。(果たしてこれが最もらしい理由かどうかは置いといて)
フラフラとするが、体を怪我したわけではないらしい。
立って辺りを見回すが誰もいない。曲がりにも自分たちは大都市にいた。いくら町の外れの方だとしても人っ子ひとりいないなんてことはありえない。
こうなると、否応にも不安と心配が襲ってくる。
「あー俺どうすりゃいいんだ。ここどこかもわからんし、携帯も使えないし、人おらんし。俺今日先発よ?どうすんのよ、投手と捕手がいなくなっちゃ試合なんぞ出来ないでしょ。あー困ったなぁー。」
沈黙は不安の原因である。とにかく口を動かす赤城。
彼がここまで饒舌になるのはかなり珍しいのだが、今はそんなことに気付く人はいない。
「とりあえず人を探そう。この森を抜けりゃ誰かいるはずだ。」
とりあえずの目標を立てる。どこかわからない場所でむやみやたらに動き回るとよりわからない場所へ行ってしまうかもしれない。
それでも現状を変える方がマシだと考え、おそらく道であろうとこを歩く。
彼らは現在、スーツに革靴と長時間の移動には向いていない格好であった。
そのため、あまり時間をかけれない。早足ながら道を真っ直ぐ進むとどうやら森の出口か入り口かわからないが、見つかった。
森から出ることができたが、やはり人はいない。
「うーん困ったね。祐ちゃん。誰もいないよ?」
「とりあえず歩いて行こう。まだ道が続いてるからおそらくこの先には街とかあるだろ。そしたら人に会えるはずだ。」
道は地平線に霞んで終わりが見えない。ぱっと見遠くに街らしきものも見えない。いくら野球選手でスタミナがあると行ってもスーツと革靴で長時間の運動はできない。今度はあからさまにゆっくりと歩くことにした。
あれから1時間ほど歩いただろうか?
終わりは、ゴールは見えない。
そんな状況で、
「もう嫌だ!なんなんだよ全く!ああーマジで死ぬ。」
赤城はブチギレ、
「なんもおこんねぇじゃん。普通なんか出てくるでしょ、オークとかエルフとかさぁ?なんなの?」
加賀は何かに文句をつけてる。
2人の精神はかつてないほど乱れていただろう。例え、ホームラン何発も飛翔しようが、サヨナラ負けをしようが、ノーヒットノーラン直前でヒットを打たれようが、乱れなかった強心臓は、異世界転生という現象後、まるっきり正反対となってしまっていた。
「あぁ。どうすりゃいいんだ…」
とうとう座り込む赤城。スーツのジャケットを脱ぎ、手に抱え、近くにあった石の上に腰を下ろす。
それを見て、加賀もまた、近くに腰を下ろした。
「しかたねぇ。しばらく休むか。ちょっと色々ありすぎて頭がこんがらがったから、落ち着こう。」
しばらくのブレイク。
しばらくの沈黙。
肉体的疲れよりも精神的疲れがきてしまってる。口を開こうともしなくなってしまった。
喉が渇いたが、水など持っていない。
こんな時なら何か甘いものでも食べるのだが、あいにくここは異世界。コンビニなどない。通貨も商売システムすら違うのだろう。
何かないか、2人はジャケットのポケット、ズボンのポケット、ワイシャツの胸ポケットなんかを弄る。
全ての場所に残念ながら何も入っていなかった。
ガックリする2人。
そんな時、加賀が思い出したかのように、
「祐ちゃん、そういやあれどこよ?」
流石に熟年夫婦のようにあれこれで全ては理解できない。
「なんだよあれって?」
「あれあれ。あのメモみたいなやつ。『異世界独立リーグへ移籍しませんか?』ってやつ。」
「あぁーあれか。どこいれたっけ…?」
赤城は体をパンパン叩き、胸辺りを触りながら、
「あぁあったあった。これだ。」
ジャケットの内ポケットには本屋で見つけた謎のメモが入っていた。
なぜか二枚。
「あれこれ二枚だっけ?」
当然の疑問を口にするが誰も答えられない。
メモを再び見ると、文字は見たことのないものへ変わっていた。アルファベットや平仮名などでもない、元の世界では見たことがない。
一切読まない。一部分を除いて。
「う〜ん?これ多分俺らの名前か?こっちが俺で、こっちは奏太じゃないか?」
「え?なんで読めんの?俺意味わかんないだけど。」
「いや、なんとなく。」
「えー…」
自分の名前(?)がかかれた紙をスーツの内ポケットにしまい、さぁ行くかと立ち上がった。
その時、
「あんれ?どしてこんなとこに人がおんだ?お前さんらどこに行くんじゃ?」
加賀でも赤城でもない第三者の声が聞こえた。
はっと辺りを見渡すと自分たちの後ろに人と馬二匹と荷台があった。
どうやら荷物を運ぶ馬借のような人らしい。
「あの俺らは…その。」
「えっと…この先の街にちょっと用事がございまして、え、それで、はい。
まぁちょっと色々とございまして、はい。」
何故か言葉がそのまま通じる。もちろんそんなことに気がつく暇もない。
「そっか。そなら、ほれ、荷台にのり。つめりゃ2人、乗れるじゃろ?」
地獄で仏にあった気分である。
あざーっす!と荷台に乗り込む。二代といってもかなり大きい。荷物もそんなになく、大男2人のスペースは十分だった。
ほな、行くか。と馬がえっちらおっちら動きだした。大人3人プラス荷物。結構な重量だが、馬にとって苦しい労働ではないのだろう。
特に立ち止まることもなく進む。
ガタガタ揺れる為に横になると頭も一緒にがっくんがっくん揺れる。
それでも歩くよりは100万倍マシである。
加賀に至っては、揺れる頭も気にせず横になり、目を瞑って、夢の世界への旅立ちを始めようとしていた。
赤城も少しうつらうつらとしてきたが、馬借のおっさんが話しかけてきたので、軽く頬を叩く。
「お前さんらはなんの仕事なんじゃ?みたとこ、随分立派な体格やから、傭兵か?」
加賀はどうやら既に旅立ったらしく答える気配がない。
赤城が言いにくそうに答える。
「いえ、まぁ、なんといいますか…スポーツ選手といいますか、まぁそのですね、えー、プロ野球選手やってます。」
この世界に野球なんてないだろう。変な奴らと思われるならまだマシ。怪しいやつ、さては貴様、盗賊だな!なんて言われて降ろされたらたまったもんじゃない。
異世界から来たなんて誰が信じるのだろうか?
今できることはできるだけ、怪しまれずに、一般人も装うことである。
ところが、おっさんは食いついて来た。
赤城の予想を180度ひっくり返して。
「なに!野球選手じゃと!それならはよう行かな!ぶっ飛ばすけぇ!」
馬二匹を思いっきり叩き、スピードを一気に加速。荷台はよりガッタンガッタン揺れ、頭を床に思いっきりぶつけた加賀はのそりと起き上がる。
「え?なにどした?」
軽く三倍になった馬が走り出す。
「ちょっと!なに!説明してよーーーーー!」
加賀の絶叫はなにもない草原に響いた。風と共に。
そして再び、1時間後。
「よっしゃあ!じゃあいきますか!」
何故か彼らは円陣の中にいた。
ユニフォームとスパイクを着用して。
野球選手として試合に出る為に。
2人の声が重なる。
「「もう、どうでもいいや…出ればいいんだろ。俺らがいれば勝てるし。」」
『魔術師』投手と『必取』捕手。
最強コンビが異世界独立リーグへと移籍した。
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