第11話
「来栖、何やってるの……?」
かなり長くぼんやりしていたのを、見られていたらしい。久遠が家から出てきた。
「なあ、久遠」
「何?」
「俺たちって、どういう関係なのか考えてたんだ」
「は?」
唐突な来栖の質問に、久遠は面食らったようだった。
そして、ちょっと考えると、なぜかちょっと顔を赤らめた。
「それ、来栖が聞くかなぁ……」
小さくつぶやく。そして、また考えると、
「今は、家族でいいんじゃない?」
今度ははっきりと、そう言った。
「今は?」
「うん、今はそれでいい」
どういう意味だろうか。
よくわからなかったが、家族でいいのなら家族でいるかと、来栖はぼんやり思った。
少し胸が痛んだのには、気付かない振りをした。
「それより、お客さん、来てるんだけど……」
「お客さん? 今日は花屋は休みだよ?」
「違うよ。友達だって言ってた。さっきそこで会ったんだ」
久遠が中に入るように言ったのは、その友達とやらを待たせていたからだったようだ。
狭い台所の食卓に、来栖と同じくらいの年頃の男が、一人座っていた。
「呉羽」
「よう、遅い帰りだったな」
呉羽と呼ばれた男は、来栖の姿を見つけるとにやりと笑った。
「長く顔を見せないと思ってたけど……元気そうだな」
「お前こそ、相変わらずあのガキを育ててたのか。でかくなったな!」
呉羽と来栖が会うのは、実に十数年ぶりだった。
前回会ったのは、ちょうど久遠を引き取ってすぐくらいだ。
呉羽は久遠を懐かしそうに見やったが、久遠はいぶかしむだけだった。
「……俺、会ったことあります?」
「あるよ。一緒に遊んだの、覚えてない? ライダーごっことか、よくやったのに」
あの時、しばらく一緒に住んでいた。
久遠ともよく遊んでいたが、さすがに小さすぎて覚えていないのだろう。
何しろ、一ヶ月くらいの短い間だ。
「……すみません、覚えてないです」
「まあ、人間の一ヶ月なんか、そんなもんだな」
呉羽はあっけらかんと言い放った。
小さなことは気にしないのが、呉羽のいいところである。
「で? 急にどうしたんだ」
「この街に、主様の気配を感じ取ったんだ」
「玖珂の?」
来栖はあの高飛車な同族の顔を思い出した。
玖珂がトラブルを起こさないように、短いスパンで居場所を変えていることは知っている。
呉羽は神妙な顔つきでうなずいた。
「俺は今度こそ、絶対に主様と一緒に添い遂げるよ──」
嵐の、予感がした。
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