第13話

本文

受験が終わるまでは水元君とは会わない。


それを条件として、水元君とはお付き合いを続ける事になった。



「何だそれ? ハッキリしないね」


ナミが私にデコピンをした。


「だって……。 別れたくないって言うから……」

「だからってスッキリしないよね」


「受験終わったら、 色々考えたい」


「まぁ。 あんたの人生だ」


本格的な受験シーズン。余計な事は考えたくないし、水元君とのこれからもまだ分からない。


ただ、まだ好きな人だから。信じたいとも思う。


試験まであと少し。


私は勉強に専念した。



かと言ってもやはり気になる……。

クリスマス間近でもあるし。


「プレゼントくらいいいよね……」


放課後クリスマスプレゼントを買いにフラフラした。


「何がいいかなぁ」


ウィンドショッピングをしていたら、思わぬ人に出くわしてしまった……。



水元君の許嫁の幼なじみ。


やだなぁ。と思っていたら、目が合ってしまい、彼女が私の方へ向かって来た。


「貴女まだ別れてなかったのね。 樹から聞いたわ。 目障りなのよ! 早く別れてくれない?」


道端でそんな事言わなくても……。


「水元君は貴女と結婚するつもりは無いって言ってました。 それに私達は別れないです。 申し訳ないですが、もう関わらないで下さい……」


言ったぞ。私。


許嫁さんは見る見る顔色を変え、今にも襲って来そうな勢いになった。


「な、 何を言ってるのよ‼︎ あんたなんか……」


そういいかけて口をつむいだ。


「やめろよ。 いおりに関わるな」


その声に振り返った。


「水元君……」


「いおり。 捜したよ。 ケータイ繋がらないから心配した」


「あっ。 ごめん……。 何か用事だった?」


「樹! 何でこんな子なんか……」


「やめろって言ったよな? 悪いけどオレ達もう行くから」



私の手を取り、彼女を残してその場を去った。


「ごめん。 また嫌な思いさせた……」


「あれ位別に……。 でも何で私を捜したの?」


「クリスマス会えないから。 プレゼント渡したくて。 付き合い出して初めてのクリスマスなのに、 会えないのは残念だけど。 せめてプレゼントくはいはと思ってさ」


「嬉しい。 ありがとう。 あ! でも私まだ何にも用意してない。 今日何か探そうとしたの……」


「プレゼントはいらないよ。 ただ……。 これからもずっと一緒にいたい。 受験終わるまで会わない約束破ったけど、 どうしても直接言いたくて。 さっきみたいに嫌な思いさせたけど、 ずっと一緒にいたい」


立ち止まり、ポケットから小さな箱を取り出した。


「プレゼント。 受け取って」


差し出された箱を受け取った。


「ありがとう……」


「いおりからの返事欲しい」



そう言われたけれど、まだ考えがまとまらない。


けれど真剣な水元君の顔を見たら、一緒にいたいと思って、好きだと思い知らされる。


不安はまだあるけれど……。


「……一緒にいたいよ」


正直な気持ちを言った。


「これで受験頑張れるよ。 試験終わったら何処か行こう。 ずっと一緒にいよう」





彼が好きだと思う気持ちが一番大切で、一緒にいたいと思えば、迷う事などない。


自分に正直になること。意地を張っても仕方ない。


帰り道。プレゼントの箱を開けた。


「ムーンストーンのネックレスだ」


月のお守り。



「私も何か用意しなきゃな」


やることは沢山ある。


心のモヤモヤは一応取れた。


さあ。頑張ろう。

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