第6話

水元君に告白しようかどうしようか。悩みに悩んだ私。

受験勉強をしながらも、考えてしまう。


「はぁ〜。 これじゃダメだぁ」


ホットココアのカップを手に取り、一口飲んだ。

自室の机で勉強をしていたのだが、ついつい水元君を考えてしまう。


机の上の上に置かれたスマホも気になった。


「やっぱりまだメール来ないよね。 当たり前か……。 ひと段落着いたらって言ってたしな」


水元君からのメールを気にする。


「やだ。 鵜呑みにしてる」


先程呟いた自分の言葉を訂正した。


社交辞令に決まってる。お詫びのお詫び何て、ある訳ないか。



季節はもう秋で、受験勉強やらテスト勉強やらがどしっと私にのしかかるし、部活の指導もあったりと、やはり忙しい。


受験はもう目の前で、希望大学目指しラスト追い込みをかける。



だけどやはり気になってしまうし、考えてしまう彼の事。


「忙しい時期に告白したら迷惑だよね。 でもやっぱりはっきりさせたいし。 どうしよう……」


こんな時に告白されても迷惑だろう。けれど勉強に身が入らない私。

白か黒か。はっきりさせたい。


あたって砕けたら、きっともう話もできないだろう。

でも、もどかしさを抱えたままじゃ、前に進めない。





「まだ言ってなかったの? どんだけ迷うのよ」


中休み、ナミに呆れられた。


「だって。 忙しい時期に悪いし……。 そりゃ私だって楽になりたいよ? でもさ」


「全く……。 さっさと言って楽に受験迎えればいいじゃない。 スッキリしたら勉強に打ち込めるよ? 万が一上手くいったら、 楽しい春を過ごせるし」


「そうだよね……」


ウジウジとしてないで、さっさと告白しよう。


私よ、今度こそ決意をするのだ。


再び決意新たに水元君にメールをする事にした。



決戦の日は直ぐにやって来た。冷たい風が吹く放課後、私は駅に水元君を呼び出した。


「ごめん! 待たせたね」


息を切らせ、水元君がやって来た。


「いえ! すいません。 急に呼び出したらりして……。 お忙しいのに」


「大丈夫だよ? 所で話って何?」


水元君の言葉に、胸が痛い程高鳴った。

心臓がバクバクなって、立っているだけで目眩を起こしそうになる。



「あの。 ちょっと近くの公園までいいですか?」


駅で告白なんてできる訳ない。人目があり過ぎる。


私は駅から程近い公園へ誘った。


「分かった。 行こうか」


夕暮れ迫る中、公園まで歩いた。

少し歩いた所にある小さな公園のベンチに並んで座る。


私は心臓がうるさい程バクバクしていて、まともに水元君の顔が見れない。


「急にどうしたの?」


俯いている私に、そっと囁いた。


恥ずかしいし、怖い。けど言うんだ。


意を決してバッと顔を上げた。



「あの! いきなりですいません。 えっと、 私……。 ずっと水元君が好きでした……」


最後は消え入りそうな声で水元君に告白した。

いや、言ってしまった……。


どうしよう。言ってしまったよ、私。

再び俯き、水元君の反応を伺う。




暫しの沈黙の後。水元君が口を開いた。


「オレ、 今受験で誰かと付き合いとか、 あんまり考えられないんだ。 でも……。 高瀬さんの事、 ずっと気になってて。 上手く言えないけど好きだと思う。 でも受験終わるまでは中々会えないけど、 それでもいい?」



水元君の言葉にしばし固まった。

ええと……。それでもいい?と言う事は、お付き合いができると?


考えこんでいる私に 「あんまり会えないけど、 付き合おうって事なんだけど。 理解してくれたかな? 受験終わるまで寂しい思いさせちゃうかも知れないし、 不安な思いさせちゃうかも知れない。 でも、 ずっと気になってて……。 曖昧でごめん。 だけど高瀬さんの事、 大事だよ」


「え? あの……。 じゃあ……」


「彼氏と彼女になるのかな? 今から」


少しだけ照れた様にそう言った。


心臓がまだうるさいくらいにバクバクしてる。


「……。 嬉しいです。 私、 ダメだって思ってて。 でもどうしても自分の気持ち言いたくて……。 本当に私でいんですか……?」


「君がいいんだよ」


爽やかに微笑む水元君。


私の身体が一気に熱くなった。




「ふーん。 良かったね」


昼休みの学校。いつもの様にナミとお弁当を食べながら、水元君の事を話した。


「ナミ、 棒読み……」


「そうかしら? でもまあ、 良かったよ。 砕けなくて残念だけどさ。 受験終わった楽しい春が待ってるね」


「本格的に受験シーズン。 付き合う事になってもお互い忙しいから、 やはりメールでの会話が主になるけどね。 後少しの我慢だ」


「浮かれるのもいいけど、 色々手抜きしたらダメだよ? 勉強はもちろんだけど、 あんたの彼氏モテるからね?」


そう、モテるのだ。水元君。


同じ学校の人から告白されたりするみたいだし、いくら付き合う事になっても安心はできない。

狙う子は沢山いる……。


「まあ、大丈夫だとは思うけど、 猛烈アタッカーいるからね。 気を付けなよ? 何でも同じ大学受験するみたいだし? かなり好きみたいね。 そういう子は怖いからね」


涼しい顔でお弁当を食べるナミ。

さらりとそんな事言わないでよ……。


何か一気に気持ちが落ち込んだ。


平気だよね?何もないよね……。


お弁当箱を箸で突っついた。

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