第3話
家に帰った私は、支度をして早速水元君へ
メールをした。
『今日はありがとうございました。 かえって申し訳ありませんでした』
ベッドに座り、簡単なメールを打った。
暫くしてメール音が鳴る。
返信きた!
机に置いたスマホをパッと取り、受信ボタンを押した。
『足大丈夫? こっちの事は気にしないで、 お大事にして下さい。 明日同じ電車に乗れるの楽しみにしています。』
思わず飛び上がりそうになった。
返信がきた事、私と同じ電車に乗る事。
つらい片想いでも、やっぱり嬉しい。
夕飯を食べ、お風呂の中でも嬉しい気持ちで溢れていた。
何気ないやり取りでも、好きな人からのメールは嬉しい。
寝る前にもう一度メールを見た。
ニヤニヤしてる。私……。
今日はいい夢が見れそうだ。
翌日、いつもの電車に彼が乗って来た。
真っ先に私の方へやってくる。
「おはよ。 足大丈夫? 昨日湿布した?」
「おはようございます! 昨日はありがとうございます。 あっ。 湿布しました」
声がうわずってしまった。
「隣いい?」
そう言うと、私の隣に座った。
ああ。 ナミがいなくて良かった……。
夕べ嬉しさのあまりナミにメールしたら、お邪魔よね。 と返事がきた。
わざわざ電車の時間ずらしてくれたらしい。
ナミが居たらきっとからかわれていただろう。
ナミには悪いけど……。
学生でごった返しの車内。皆ワイワイ話している。
でも、私だけ別世界にいる様な。そんな感じがした。
「あれ〜! 水元? 何彼女できたの?」
いきなり現実に引き戻された。
お友達か。 大体いつも友達と一緒だもんね。
「違うよ! こないだの」
「ああ。 お前が押し倒した女の子ね」
表現違うし!
顔が熱くなり、俯いてしまった。
「アホっ。 失礼だろ! オレが怪我させた人」
「そうだった! で、 仲良く座ってるんだ」
「そう。 だから散れ」
何か居づらいよ。早く駅着いて!
男子にからかわれ、楽しい時間が台無しになった。
水元君は謝ってくれたけど、恥ずかしい。
「じゃあ。 終わったらメールして」
「え? 病院行かないですよ?」
「帰りお茶しようよ」
駅の改札。突然のお誘い……。
「でも……」
「じゃ、 メールしてね」
そう言って走って行った。
「ナミ! 大変!」
教室に入るなりナミを捕まえた。
「わざわざ電車ずらしてあげたの。 お礼が先じゃない?」
「うん。 ありがとう。 でね! 今日誘われたの!」
「誰に?」
「水元君に!」
「お詫びじゃない?」
「何でもいい!」
呆れた様子のナミ。でも、良かったねと言ってくれた。
お詫びだろうが何だろうが、とにかくまたまた嬉しい。
少しだけ、少しだけ。期待してしまう。
叶わない片想いでも。
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