第42話

この疑問は答えによってはまずい疑問なので、

できればそのままにしておきたかったが、

そのままにしておくと

僕の心の中で腐って異臭を放ってしまいそうだったので、

思い切って聞いてみた。



僕 「あの、そうすると、僕はどうして、記憶から抜け落ちてたの?」

佳子「んふ」



んふ、というのはコメントではなく、

口を閉じたまま、笑いが噴き出るのをこらえたときに発した音だ。



佳子「ワンコちゃん、わかんないかなあ」


僕には、わかんなかった。


佳子「覚えていたに、決まっているでしょ」


佳子さん、それって、どういうことですか。



僕 「じゃあなんで、記憶がよみがえって泣いた、みたいな展開になったの?」


僕は少し怒り始めていた。すると、佳子さんは、結構冷徹に言った。



佳子「そしたら、盛り上がらないじゃん」

僕 「ええ!」



盛り上がらないから、忘れたふりをしていた?そういうこと?

僕の中では、佳子さんとの代々木のバーガーの感動の名場面のページが

ビリビリと音を立て破れていった。


僕は次に疑問に思ったことを聞いた。


僕 「あの、いつから僕のことに気づいていたの?」

佳子「最初から」


佳子さんは、また悪びれずにからりと答えた。


僕 「最初って、いつ?」

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