第三十九話【私、働きます】
朝、神殿様式の教会に新たに据えた巨大な鐘が朝を教えてくれたわ。
それに合わせて、寝ぼけまなこで塔の上に出ると、街中から私に向かって住民が手を振ってくれたわ。
住民も増えたので、朝の集会を取りやめた後も、みんな挨拶だけはちゃんとしてくれるの。ありがたい事ね。
ブルーとサファイアとアイオライトの三人を連れて、城を出たわ。
……結局、城という呼び方が定着しちゃったわね……。
まず最初に向かったのは、噴水広場よ。
今ここは申請すれば誰でも使える自由露店広場になっているわ。
「おうっ! そこ! 場所と広さは決まってんだ! 欲張ったら追い出すぞ!」
どうやらまた新しい商人さんたちがやって来たらしく、少しでも自分の場所を広く取ろうと小細工をしているようね。
どうして外から来たばかりかわかるかと言えば、ミレーヌ町で長く商売をやっていたら、そんな事する行儀知らずはいないからよ。
「おはようございます、ティグレさん」
「おお! 今日も美しいな! ミレーヌ!」
「お世辞は嬉しいですが、虎種族の好みとは違うのでは無くて?」
「馬鹿野郎! 惚れた女が一番綺麗に見えるに決まってるだろ!」
「お気持ちは嬉しいですよ」
「かぁ! 相変わらずなびかねぇなぁ! まぁその内俺に惚れさせてみせるさ……おいそこ! ちゃんとルールを守れ! でねぇとこの町から永久追放だぞ!」
「お仕事頑張ってくださいね」
「おうともよ!」
今ティグレ・グオ・タイグーさんは、町の治安を守る部隊の隊長さんをしているわ。
ああ見えてティグレさん、かなり人気もあって、気が利くのよ。驚いちゃったわ。町の人たちから信頼されているのは何よりよね。
結婚はしませんけど。
次に向かったのは小学校だ。
ここは住民で六歳から十二歳までの子供を毎日集めて教育する場よ。
最初は少し反発もあったけれど、今では自分の子供たちがめきめき読み書きや常識を学んで、喜ばれるようになってきたわ。
やっぱり授業料無料なのと、給食が大きいみたいね。
さらに、親が始業時間までに子供を連れて行くと、幾ばくかの養育費を渡しているのが効いているわ。
子供は労働力。
そういう考えからようやく脱却し始めたわ。
最近、ティグレさんの提案で、体育という身体を使う授業も取り入れたの。
簡単な運動と護身術。高学年では剣と盾も学ばせているけれど、これは子供たちに人気ね。
ティグレさん曰く、戦士になることは無いが、身を守る手段を持っていて悪い事はない。との事ね。
今はティグレさんの元部下のネムル・グオ・トゥラーさんが体育を受け持っているわ。
ちょっと抜けた所のある虎獣人さんだけど、小学生にはちょうどいいって。
そう言えば、前にティグレさんと決闘したときも、一人寝てたわね……。
ちなみに中学校の建設予定もあるわよ。
まだ小学校を卒業した子供がいないから、建物だけだけど、こちらもミレーヌ町では義務化の予定よ。
より専門的な学問を教える予定よ。
この中学校を卒業出来たら、ミレーヌ町の外に行っても、職に困ることは無いでしょう。
そして私が向かったのは、こちらも新たに建築された、魔法学校よ。
もちろん小学校と中学校で、基礎的な魔法は教えるのだけれど、こちらはより高度な魔法と、魔術までを教えるのが目的の専門学校よ。
今は入学者を、教師希望や、私が認めた人だけが通っているわ。
最初に募集したら、もの凄い希望数だったのよ。
「よお! おはようミレーヌ!」
「おはようプラッツ君。他のみんなもおはようございます」
「「「おはようございます! 先生」」」
はい。今そこの教師をやってるのは私よ。
実は外から教師をやってもらおうと、何人か魔導士に来てもらったのだけれど、そのどれもが、私の時代基準で魔法士レベルで魔術士レベルの人すらいなかったわ。
最初彼らは田舎を馬鹿にしていたのだけれど、プラッツ君やレイムさんを見て仰天し、私を知って弟子にしてくださいと懇願してきたの。
そこでこの学校を作ったのが始まりよ。
「それでは本日はテストをしますよ。それではロドリゲスさん。生活魔法と呼ばれる四つの魔法を答えてください」
私が指名したのはルーシェ教から派遣されてきた神官長さんよ。
彼も私が学校を開くと知ったら真っ先にやってきた一人ね。レイムさんを入れる手前、ロドリゲスさんをお断りするのも変だったしね。
「はい。それは
「はい。正解です。他の人も覚えてますよね? それでは実技ですよ。全員ちゃんと使えるようになってるか見ますよ」
「「「はい」」」
こうして午前中は先生として頑張っているわ。
うん。
私凄い働いてるわよね!
誰か褒めて!
「さすがミレーヌ様です」
うん、ありがとうブルー……。
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