第四章
第三十二話【私、さらに増やします】
— 第四章 —
「やっと完成したわねー」
「はい。お待たせしました」
「全然待ってないわよ。予定より大分早く完成したわよね」
「外から大量の移民がやってきましたからね」
「ああ、それなんだけれど、シノブの報告は?」
「はい。移民のほとんどは不満無く……というよりも喜んで仕事に従事しているとの事です」
「それは良かったわ。今のところ肉体労働の仕事ばかりですから、不満が出るかと心配していました」
「それなのですが、どうも外の世界は不景気で、職がほとんど無いようなのです」
「そうなの? 宿場町ベルに視察に出たときはそんな感じでは無かったけれど?」
「あの町は今、ミレーヌ町との交易で好景気なのです」
「それ、裏は取れてる?」
「シノブの報告なので間違い無いかと」
「なら間違い無いわね。……それにしてもまさか万人単位で移民が増えるとは思わなかったわ」
「このジャングル地方が広くて助かりましたね」
「ええ。見渡す限り開墾しても、ジャングルの数%しか切り拓いていないですからね」
今私が立っているのは、完成したばかりの新居の一部である
それまであった神殿様式の家は、改装後、ルーシェ教から派遣されてきたロドリゲス神官長と、正式に神官になったレイムさんが教会を開くことになったわ。
元々の教会建築予定地にはミレーヌ町冒険者ギルドが建築予定よ。
町の規模はさらに広がり、現在の予定では、最大30万人まで受け入れられるよう計画済みだ。
現時点ですでに10万人を越えているので、さらなる拡張計画が必要になるかもしれないわね。
見渡す限りの整理区画と、奥に広がる広大な農地。
白亜の塔から見渡す風景は絶景だった。今まで良く見えなかったジャングル地方を囲む、険しい山脈がぐるりと見渡せる。もっとも一番遠いのは地平線の先から稜線を覗かせている程度だけどね。
今まで町の中心地だった場所は、町の入り口となり、新教会を中心に町を再構成拡張している途中よ。
教会裏の美しい沼を残しつつ、自然と調和の取れた最高の都市作りを……オレンジに頼んだわ!
ブルーにお姫様抱っこで塔を降り、建物の外に出ると、かなりの人数が集まっていた。朝の挨拶にしては人数が多かった。
「何かあったの?」
「おお女神さま、この度は居城の完成おめでとうございますですじゃ」
「……城?」
「城……ですじゃろ?」
プルームさんが私の背後にそびえる白亜の建築物を見上げた。
……。
うん。これ城だわ。
どうして建築中に気がつかなかったのかしら……。
「言われてみると、城っぽいですね」
「誰がどー見ても城じゃねーか」
プラッツ君にまで突っ込まれてしまった。
美しく、かつ機能的で、いざとなったら住民も収納できるようにって……そりゃ城になるわよね。
今まで柱の美しさとかしか目に入ってなかったわ。
「ま、まぁ城っぽい屋敷よね」
「まだ屋敷と言い張るのかミレーヌは……」
「良いじゃ無いのよ……」
「まぁミレーヌがいいならそれでいいんだけどよ」
「それで女神さま、皆が城の完成祝いを持ち寄っておりますじゃ」
「あら、ありがとう。食べ物は皆に振る舞いましょう」
「それでは夜に宴を行いましょうか?」
「それが良いわね。足りない分は備蓄と、購入をお願いね、ブルー」
「かしこまりました」
そんな理由で、夜には町を挙げてのお祭り騒ぎになったんだけれど、なぜかみんな建国パーティーとか言ってたわ。
どこでそんな風にねじ曲がったのやら。
「ミレーヌ様、こちらをどうぞ」
「ありがとうサファイア」
飲み物を差し出してくれたのは青髪のメイド人形で、ブルーの部下よ。
ブルーよりも能力は一回り下の量産型よ。
現在サファイアの他にアイオライトがいるわ。この二人は見た目そっくりよ。
あと新しく増えたメイド人形は、戦闘型のレッド。
彼女は本当に戦闘以外何の役にもたたないので、普段は飲み歩いてるわ……。
今も広場の真ん中でお酒をかっ食らってるわ。
その近くに葉っぱビキニのメイドが三人一緒に雑談しているわ。
一人は農業型のグリーンで、二人は部下のエメラルドとヒスイよ。量産型の二人は双子のようにそっくりね。
製造型のオレンジにも、量産型の二人を部下につけたわ。ラナンキュラスとミカンよ。
ちなみに、レッド、シノブ、ダークの部下はいないわ。
正直レッドの戦闘力はずば抜けてるから一人で十分だし、情報は冒険者ギルド経由で入ってくるようになったからシノブも一人で充分。
狩猟型のダークも、猟師希望の住民が多いから一人で十分だわ。
青髪のサファイアとアイオライトが忙しそうに給仕をしている。
住民もみんな楽しそうだったわ。
楽しい夜は瞬く間に過ぎていったわ。
ずっとこんな楽しい日が続くように頑張りましょうか。
……うん。ブルー。ニコニコと書類を持ってくるのはやめてね?
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