第二話【私、葉っぱビキニ】


 サバイバルは全裸スタート。

 笑えないわ!


「それにしても、全裸は落ち着かないわね……」

「わかりました」


 ブルーが素早く辺りの木々から、良さそうな葉っぱをかき集め、器用に組み合わせていく。


「どうぞ」


 渡されたのは、葉っぱのビキニだった。

 うん。裸よりはいいよね(号泣)


 葉っぱのサンダルも完成し、ブルーも葉っぱビキニと葉っぱサンダルを装備した。

 ある意味では美しいけど、ある意味では原始人だった。


「うう……はやく綺麗なドレスが欲しいわ……」

「っ! 申し訳ありません! 不甲斐ない私をお許しくださいませ!」

「やめて! 葉っぱビキニで土下座はやめて! 全然大丈夫だから!」

「必ずや素晴らしいドレスを用意してい見せます!」

「うんうん。期待してるから。だから起き上がって、ね?」


 半ば無理矢理起き上がらせると、何度も頭を下げた。

 時々彼女って固いのよね。


 しばらくして、落ち着いたブルーが近くの石と石を叩きつけて割始めた。

 どうしたのかしら、あまりの状況にバグっちゃったかしら?

 なんて心配をよそに、彼女は手際よく、石の斧と、石の槍を複数作り上げていった。

 ああ、なるほどね。ちょっと焦ったわ。


 ブルーは道具を駆使して、家があったはずの土台周辺を片付け始めた。

 2時間もするとそれなりに視界が開ける。

 やはりなんとなく土台が残っている程度で、家の名残は欠片も無い。


「ミレーヌ様、近くに魔力の反応などはありますか? 私の探知では何も感じないのですが」

「ちょっと待ってね」


 この辺りは元々私たちくらいしか住んでいなかったが、近くに街などがあれば、生活魔力が。もし戦闘などしていれば戦闘魔力が何かしらの形で飛び交うものだ。

 木の枝で、魔力探査の魔方陣を描いて、そこに魔力を流し込む。


「……うーん。まるっきり何も感じないわねぇ」

「それは、周囲に人間がいる確率はほぼありませんね」

「そうなるわねぇ」


 まぁ元々陸の孤島だからそんな物だったけどね。

 これが戦場や街の近くだと、魔方陣を使わなくてもある程度は雑多な魔力波形を感知できたりする。


「さて、これからどうしましょう?」

「まずは食糧確保が最優先と思われます」

「それはそうよね」

「まずはこの屋敷跡を周辺に安全確認をしつつ、食料を探しましょう」

「そうね」

「可能な限り、視界が届く範囲にいるつもりですが、何がおこるかわかりません。くれぐれもご注意下さい」

「大丈夫よー」

「良いですか? ミレーヌ様は攻撃魔法などほとんど実戦で使った事がないのですから……」

「わかったから、何かおいしい物探してきてー」

「……わかりました。いいですか? 油断は禁物ですよ」

「お母さんか」

「それでは行きます」


 いくつか作った石器の武器を一つも置いていかないところが彼女らしい。私がそんなものを使える訳が無いと良く理解していた。

 私だって攻撃魔術の一つや二つは使えるのよ、ぷんぷん!


 ブルーが屋敷跡を中心にぐるぐると旋回するように、注意深く歩き回る。

 草木でちょっとでも私が見えなくなると、すぐに顔を出して私を確認する。

 心配してくれるのは嬉しいけど、それじゃあ何にも出来ないでしょうに……。


「ブルー」

「はい」

「あのね。私、お腹が減ってるの。だから、何か食べ物を探してきてね?」


 ニッコリと微笑むと、ブルーが絶望の表情を浮かべた。


「……わかりました、ほんの少し離れますが、ここから動かないでくださいね!? 何かあったら大声で……」

「わかったってば! ほらほら、はやく行って!」

「はい……」


 名残惜しそうに何度も振り返りつつ、ようやく森の中へと姿を消した。

 ブルーは高性能万能メイドだから、私がちょっと声でも出したら、それこそすっ飛んで戻ってくるだろう。

 だからこそ安心して送り出せるのが。

 逆に言えば、そうでも無ければ私の方が彼女にべったりと離れなかっただろう。


 さて、このまま待ってるのも退屈……いえ、ブルーに悪いから、たき火用の枝でも集めておきましょう。

 魔法である程度の体温調整は出来るけど、無限に魔力があるわけじゃ無いしね。

 夜になったら寒くなるかも知れないし、何か料理してくれるかも知れない。


 私は地面に転がっている、乾燥した枝を拾い始めた。

 ジャングルっぽい植生だが、地面はそれほど湿っている様子は無く、割と乾燥した枝はあるようだった。


「沢山集めておいたらブルーは驚くでしょうね」


 普段、生体ゴーレムを作るとき以外、のんべんだらりとしている私が仕事をしたとなれば、きっとブルーは驚くはずだ。

 私はその顔を想像しながら、ニヤニヤと枝を拾っていく。


 たまにはブルーの呆れた顔ではなく、驚いた顔も見たい。

 きっと褒めてくれるだろう。


 そんな想像をしながら枝を拾い歩いていたら……。


「……」


 私は辺りを見渡す。

 うっそうと茂るシダ類が、その密度を高めていた。

 振り返る。

 シダ類だった。

 右を見る。

 シダ類だった。

 左を見る。

 ヴォルヴォッドだった。


 ……魔物モンスターじゃないですか。やだー。


 私は思いっきり悲鳴を上げた。


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