第45話『サイタマパンク』

浦和シティの空の色は、弐ちゃんねるにあわせたスタイルシートの背景色だった。

かつて埼玉と漢字で呼ばれていたこのエリア一帯は、ネット依存でめっきり語彙の少なくなった人々に合わせてさいたまと呼び名を変え、いつしかネオ・サイタマと呼ばれるようになった。

それは地上に生きる人々(ラィブライバー)達の言い方だ。地上のサウス浦和ステーションから東のムサシ浦和まで一帯は、ウラワ属性の高いニンジャたちのナワバリだ。

地下電脳世界では場所の意味は無い、ノード間の最短経路は地上の交通網とは異質な経絡ポイントを経て全てさいたま中央バンクの地下電脳中枢に結合されている。電網経由ならば、だ。

だが今回の計画はあえて地上からセンターコクーンシティへ潜入し(ニンジャ達の助けを借り)カタクラゲートと共に強靭なファイヤーウォールを有線接続で超えちまおうという乱暴なものだ。

まったくスマートじゃねえな。

俺は見納めになるかもしれない空を眺めてから冷却材タバコを捨て、脊髄ポートから光ファイバケーブルをサイタマバンクポートへ挿しこもうとした。合わない。「何? 同軸ケーブルだと!?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る