第38話『ブラックボックス』

スタートしてから10年以上の時が流れた。大銀行の合併によるシステムの刷新である。

大昔より利用しつづけ、様々な機能で膨れ上がってきた巨大システムどうしを合体させようというのだから、そもそも一筋縄ではいかないのは目に見えていた。だが、こうした大規模なシステム開発に理解の無い上層部のごり押しや、銀行そのものの主導権争い、多くのベンダーによる綱引き等の結果、スケジュールは遅れに遅れ、当初2年だった予定は5年、6年と遅延し続け、終わることのないデスマーチと化して膨大な人月を吸い込み続ける悪夢のプロジェクトとなっていた。


しかし、たった一人の天才少年技術者が、わずか1年でこのプロジェクトを完成させてしまったのだ。

何十万ステップにも及ぶスパゲティプログラムをたった一人でデバッグしたのだろうか?

その秘訣は何かと問うと、たった一言、

「僕じゃなくて、AIがやったんですよ」と言う。

なんと、自己進化するプログラムにソースコードを与え、機械学習でデバッグ、生存目的に勘定系の仕様を与えたのだそうだ。


「だってね、この子(AI)、カンジョウを知りたいっていうんだもん」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る