第49話『とても怠惰な冴えたやり方』

Tシャツを着ようと、頭からかぶった直後、袖から首を出し、首の穴から片腕を出してしまったことに僕は気が付いた。さらに裏側についているはずのタグが目の先、つまり表側にある。どうやらついでに裏返しに着てしまったようだ。

さて、この困難な状況を打開するためにどうするべきか…。不安定な姿勢のまましばし考える。

「なにやってんの」と母ちゃん。

「んー、トポロジー的にはこのまま表裏を入れ替えることができるはずなんだけど…」

「トポロジーだかポポロクロイスだか知らないけど、普通に脱げばいいんじゃないの?」

「2文字しか合ってないよお母ちゃん。とにかく、せっかく着たんだから脱ぐのはイヤなんだ。この状況を何とかする、たった一つの冴えたやり方を考え出さないと」

「面倒な子だねえ」

「人生は面倒、楽じゃないんだよ」

「じゃ、いいこと思いついたけど教えないわ」

「母さま、そこは教えてプリーズ」

「簡単よ。今日一日それで過ごして、ファッションだと言い張るの。もし流行れば流行の最先端でしょ」

「なるほど! でも首が痛いよこの流行」

「ファッションも人生も楽じゃないのよ」

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