第10話『総統も相当…』

ネットが地球を覆っても国家による法律や民族のルールが消えてなくなってはいない近未来。人々は…(略)。

ここはバーチャル空間に浮かぶマストドン連邦のコンテンツ戦略執務室。世界中からアクセスされ、表示されているアバターと現実の姿が一致しているとはかぎらない。

現実空間ではワイングラスを片手にソファーに座り、美猫を膝に抱きながら壁面スクリーンに映し出された文字列を見やるこの男も例外ではない。

「『我々は技術者であり法律家ではなくそれを明確に判断する術を持たない』か、ふむ。いいことを言うじゃないか…」

彼は生まれついての支配階級であり、某帝国を統率する立場である。その立場にあって、人が従う法について常に考えていた。

民主主義の利点と欠点、社会主義や帝国主義の問題点等々。結局は暴力装置たる軍事力を背景にした国家の法と経済に人は屈し従うしかないのか。

いまだ現実国家から切り離されていないバーチャル空間でも法によって人の行動は規制されるのか。

彼はそうした興味から常に新たなコミュニティについて情報収集をつづけていたのである。

「まずはお手並み拝見といこう。マストドンの諸君」

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