第4話『ますとどんこんぷれっくす』

ネットの連合が地球を覆っても、サーバ所在国家による法律や民族のルールが消えてなくなってはいない近未来。人々は己の心情に合わせたインスタンスでかりそめのトゥートを繰り返していた。

連結されたタイムラインには各インスタンスの情報があふれかえり、一瞬一瞬に情景が流れ去っていく。

そんな時、世界中のインスタンス群でアカウントを作りまくった男がいた。彼は「ここでは違法でも、あちらでは合法!」などとうそぶき、情報世界を渡り歩きながら自由を謳歌していたのである。

政治的にきわどい発言も、性的にやばい画像も、社会通念上危険な意見であってもそれが許されている場所ならば発信しても問題はない。

これこそまさに自由。国家にも民族にも縛られない情報の自由だ。

しかしある時、男は気が付く、自分の発言も受け取っている情報も、実は管理者の設定次第でどのようにも変えられてしまうのではないか、と。

さらに自分のホームすら分からなくなっていることに愕然とし、世界中に薄まってしまった自己の中心を求めて、「自分(ID)探しの旅」を始めたのだ。

彼の名はアノニマス。己を見失った男だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る