EPISODE20『偶然?遭遇、魔力組織アインスト』

「久しぶりねぇ本宮光」


「時覇終……何故お前がここに居るんだ!!」


「フフフ」


戸惑いを隠せずにいる光に対し、終はニヤっと不敵な笑みを浮かべていた。


「何が可笑しい!だいたい、お前の魔力はもう無いはずだ!」


「何故って……あなたを倒しに来たからよ!!」


「はぁ!?だからお前の魔力は…」


「それに貴方は気づいていなかったみたいだけど、あの時、私の魔力は僅かに残っていたわ。それで一から魔力を貯めることに専念していたってわけ。まぁその代わり今まで魔法を使えなかったから下手に動けなかったけれど」


「そうか…今までお前の魔力を察知することができなかったってことか」


「そうよ。でも魔力はある程度貯まったし〝例の娘〟も見つけたから、これで〝あの男〟が言っていた〝例の計画〟が始められる!」


「あの男?例の計画?何なんだよそれ」


光は〝例のあの娘〟というのが瀬麗那の事なのだと考えていたが何故、瀬麗那なのかが分からなかった。


「まぁ私にも詳しいことまでは知らないけど、貴方は知らなくてもいい話なのよ?だって…」


瞬間、終は黒と赤を基調とした長剣を出現させる。


「貴方達はここで倒されるのだから!!」


「チッ」


「アイス!!」


そして終が詠唱して剣を振りかざすと幾つもの石の欠片が終の周りに出現したを光めがけて飛ばしてきた。


「光さん!避けてください!!」


「光!避けろ!!」


「我、本宮光の名の下に焔の力を!!(コイツ、もうここまで魔力が戻っているのか!)」


優斗と精霊サクラの声を聞き、間一髪のところで光は自分の魔装具である赤色の剣を出現させてそれを防いでいく。


「くそッ防ぐだけじゃアイツに反撃できない!どうにかアイツに隙ができれば…」


「あのときよりも弱くなっているんじゃない?ねぇ光!」


「クッ……優斗、心春、サクラ!瀬麗那と早くここを逃げろ!」


「え、でもそれだと光が……」


「そうだよ!それだったら私達も…」


「いや、こいつは俺が倒さないといけない相手だ」


「そうか。考えは変えないみたいだね」


「優斗さんまで!?」


何年も友逹をやってきている優斗はいつもの事だと呆れた様子だったが心配性の心春はサクラの説得でなんとか受け入れることになった。


「俺はコイツを倒してから合流するからお前達は先に行け!」


「分かった!」


「でも、光も気を付けろよ」


「ああ!」


光の事を気にしつつその場から逃げようとするが突如として優斗達の周りに魔力結界が張られ同時に数えきれない程の人型の物体が出現し取り囲んでいく。


「な、なんだこれ」


「どうやら私達全員……囲まれているみたいです」


「優斗!前に優斗達と同じくらいの女の子がいる!」


その時、僕達の前方に二人の少女が立ちふさがっていた。一人は肩辺りまで伸びた金髪で緑眼の少女、もう一人は黒髪ツインテールで水色眼の少女だ。


「貴方達も逃がさない」


「あんた達は私達が相手するデスよ!」


「誰だ君達は!」


優斗の問いに二人の少女の内、金髪セミロングの少女は自信満々に、もう一人の黒髪ツインテールの少女は冷静に名乗る。


「私達は〝魔力組織アインスト〟の月島優香つきしまゆうかと」


「峯坂切乃みねさかきりのデース!」 


「魔力組織……アインスト…?」


突然、僕の真後ろに誰かの気配を感じて振り向こうとした時にはその誰かの手が僕の肩に触れ、瞬間せは考える間もなく気を失ったのと同時にどこかに瞬間移動してしまった。


「あれ?瀬麗那さんは?」


「え?瀬麗那なら心春の隣に……って、居ない…」


心春の一言で一人居ないことに気がついた三人は周りを見渡してみるがどこにも姿が見当たらなかった。


「「「どこいった!?」」」


「今さっきまで心春ちゃんの隣りにいたよね?」


「うん。確かに私の隣りにいたよ?」


「これって……」


「拐われた!?」


「瀬麗那ぁぁぁ!!」


居たはずの瀬麗那が突如として消えて絶賛混乱中の優斗達の前で、芝居とも言えるような言い合いを見続けていた切乃と優香は苛立ちを隠せないでいた。


「って!!私達を無視するなデスよ!!」


「本気で戦わないと、この人達聞かないみたいだね切乃?」


「そうですね!戦ってやるデス!」


そういうと切乃と優香は首にかけていた紫色のペンダントを握りながら詠唱をする。


「我、峯坂切乃の名の下に深緑の力を!」

「我、月島優香の名の下に水の力を!」


切乃は緑、優香は水色の光に包まれる。二人を包んでいた光が消えると先程まで着ていた服は消え、切乃は黒地に緑と白の服に変わり右手には緑色を基調に銀色で先端が鋭くなっている鎌を握り、優香は黒地に水色の服に変わり右手には水色基調に銀色の短剣を握っている。


「え?私達と同じ…」


「フォームチェンジしただと!?」


「そう。これが私逹の魔装具」


「ま、まさか君達が瀬麗那を消したのか!」


「あたし達はあのような転移魔法は使えないデスよ。それに、こんな転移魔法が使えるのはあの人だけデスよ」


「私達〝アインスト〟の中で転移魔法を使えるのは〝ドクター〟だけ」


「ドクター?医者か…」


「ドクター松谷は化学者デスよ!」


「ということは君達は松谷博士って人の居場所を知っているんだ」


「知っていても教えるわけないじゃないデスか!ドクターは今頃、例の娘と…」


「それにあなた達がドクターに辿り着くまえに私達が倒しちゃうし」


どうやら優斗達を逃がしてくれるはずもなく〝戦う〟という選択肢を取らざるおえないようだ。


「やっぱり戦うしかない」


「じゃあ瀬麗那さんはどうするの?後回しなの!?」


「そうじゃないよ心春ちゃん…。そうか!もしかしたら……サクラさん!」


「はい!どうしましたか?」


心春に急かされながら優斗は、一つの可能性ををサクラに依頼する。


「精霊であるサクラさんにしか出来ないことなんです!もしかしたらサクラさんなら瀬麗那の〝精霊力〟を感じ取ることって出来るんじゃないですか?」


「そんなことできるの!?」


心春は忘れていたが、本来は精霊しか持っていないはずの精霊力を本当に人間である瀬麗那が持っているのだとしたらと考えていた優斗は、精霊力を持つ精霊のサクラなら瀬麗那を捜しだすことが出来るのではないかと思った。


「はい、出来ないことはないと思いますが……なぜそれを?…あっなるほど!私が瀬麗那さんの精霊力を感知すれば見つけ出せるかもしれないということですね?」


「お願いできますか?」


「分かりました。やってみます」


直ぐにサクラは目を閉じ全精霊力を瀬麗那を見つけることに集中する。


「よし、サクラが精霊力で捜している間は身動きができないと思うから居場所を特定できるまでサクラを守りながらになるけど心春は戦える?」


「やってみるよ!私にも戦うくらいは出来るよ。だって瀬麗那さんを助けるためだもん!」


「分かった、じゃあ心春ちゃんは水色の子を頼むよ」


「任せて!」


「俺達も詠唱だ!」


優斗と心春も首にかけているペンダントを握る。


「我、三鷹優斗の名の下に氷の力を!」


「我、本宮心春の名の下に無の力を!」


詠唱をすると優斗は水色の光に、心春は白い光に包まれた。そして二人を包んでいた光が消えると先程まで着ていた服はなくなり、優斗は白ベースに水色と青の服に変わり右手には先端が鋭く柄の部分が青と銀色の槍を握り、優香は水色ベースに白と青の服に変わって両手にはグローブ風の戦闘具を着けていて接近戦が得意な心春にはうってつけの装備だ。


「優斗さん!瀬麗那さんの居場所が分かりました!」


「ありがとうサクラ!必ず瀬麗那を助ける!!」


「ようやく戦う気になりなったみたいだね」


「デスね!本気でいくデスよ!」


「「はぁぁぁぁ!!」」


サクラが特定するまで何処に居るのか分からない瀬麗那の居場所をかけたそれぞれの戦いが始まった。

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