〜大木葉木菟が事〜

 昔、阿弗利加大木葉木菟といふ学者ありける。郷州の長たる触人(ふれんず)にて、すこぶる碩学なり。一日、狩人が家を訪ひて、羆に咖喱を供させ、満腹して、日暮れに家に帰らむとせしに、途中にて樹の上より、「木菟々々」と呼ぶ者ありければ、「何者ぞ、わが名を呼び捨てにするは、無礼なり」と咎むるに、たちまち樹の上より、身の丈七、八尺の恐ろしき異人飛び下りて、「われは咖喱の神なり。そこもといたずらに咖喱ばかりを貪り、満腹して飽くことなし。狩人の障りにもなれば、しばし差し控えるべし」といふによりて、木菟恐ろしく思ひ、ただ点頭して諾ひ、慌てて家へ飛び行きぬ。その後、羆を炊事に使ふことしばし無かりとぞ聞く。

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