#1 - 5
人によって生み出された雨がぼくたちの体を容赦なく濡らす。ロンドンやマンチェスターで降るような、工場の煤煙をたっぷりと含んだ汚い雨よりかは幾分マシだったが、どちらにせよ
廊下の角から警備兵が複数飛び出してきた。こちらに向かってモーゼル弾やら
隙が出来たところに、リズが
「おい、死んじまうぞ」
「大丈夫です。
「銃はどうしたんだ」
「この雨のせいでジャムっちゃいました。もうただの鈍器です」
新しい銃火器をぼくたちに回してくれるのは結構だが、大抵の武器がこんな風にすぐ故障する。今回みたいに悪天候に遭遇した日にはなおさらだ。なので、大体の任務で最終的に手に持っているのはエンフィールドだったりする。
「まったく、こんな中途半端な似非機関銃、しかも信頼性なんてあってないようなものを実働部隊に配備します?俺たちはラットじゃあないんですよ」ダグラスが天井に向けてマドセンの引き金を引いている。ぼくも同じことをやってみるが、ぼくとダグラスの分合わせて二つの銃口から五七ミリの鉛が吐き出されることはなかった。
ぼくたちは保険として持ち合わせていた
「やっぱりこれが一番使いやすいっすよね」
「ああ。よく手に馴染む」
ふとリズのほうを見てみると、銃を取り出しているような様子が一切見られない。
「やっぱり私は導力戦闘のほうが得意みたいです」とリズは言う。士官学校の学長に「英国版ジャンヌダルク」と言わしめるほどに、彼女は導力取扱技術の才に溢れていた。ぼくらを軽く凌ぐほどに。
幸い
行く先々の扉が
「事前のブリーフィングでは、ここが
「今のところ出てきたのはその辺で雇ったような警備兵だけですから、この中に名簿にあった軍人連中が集合している可能性は十分にありますね」
「各員、万が一に備えて導力を可能な限り
「了解」
「それで、この扉だが」ぼくは宴会場と廊下を隔てる扉に目をやる。見るからに分厚い金属扉と、見ただけでは何層かも判別できない
ここでクリフォードが待ってましたと言わんばかりにポーチから手のひらサイズのスティックを取り出した。小型のダイナマイト。しかし起爆装置はない。おそらく中に導子回路が書き込まれており、爆破タイミングはクリフォードの思考次第といったところだろう。
「こいつを扉に貼り付けてと」
貼り付けたダイナマイトの周囲に、さらに導子回路を書き込む。自身に纏わせていた
「準備できたぜ、隊長さん」クリフォードはぼくに向けてサムズアップを示した。
「よし、総員扉から離れろ」
雨がいつの間にかやんでいるのにようやく気付いた。起爆を妨げる障害はすべて取り除かれていた。
「起爆」
けたたましい爆音が屋敷中を駆け巡り、間もなくリヴァプールの街へと飛び出した。
マドウ国 白発中 @esh121
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。マドウ国の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます