ボクなりのフレンドリー
凡人村銀次郎
スナネコはいつもどおり
日が暮れ始める頃、サーバルたちは『ばす』を直すための材料を調達しに森に集まっていました。
フレンズたちは、はかせの指示でぱらぱらと分かれて作業に入ります。そんな中サーバルに付いてくる子が一人。
「サーバルサーバル」
どこか焦点の合わない視線でスナネコはサーバルに声をかけます。
「なぁに?」
「『ばす』を直すのは、かばんには内緒にしているのですよね」
「そうだよ! かばんちゃんを驚かせるんだ!」
「でも、サーバルはドジっこですから、ばらしてしまいそうですね」
「えー、そんなことないよ! わたし、ばらさないもん!」
「そうですか。あ、あっちに良さそうな木が」
「えーっ!? いきなり飽きないでよ!」
飽きっぽいスナネコは急に興味を無くし、明後日の方向に走って行ってしまいました。
こんなやり取りは日常茶飯事。いつも自分にちょっかいをかけてきては一瞬で興味をなくすスナネコに、サーバルはいつも振り回されています。
◆ ◆ ◆
次の日のお昼、サーバルはかばんと楽しくランチタイム。ジャパリまんを美味しそうにもぐもぐしながら、サーバルはスナネコのことをかばんに相談することにしました。
「ねぇ、かばんちゃん。スナネコってわたしのこと嫌いなのかなぁ?」
珍しい話題にかばんは少し驚きます。かばんにとってサーバルは誰にでも好かれる子であって、誰かに嫌われることなんてないだろうと思っていたからです。
「スナネコさん…? ちょっと変わってる子だと思うけど、どうしてそう思うの?」
「えっとね。いっつもわたしに意地悪なことを言ってくるんだよ。それでわたしが言い返すと、すぐ飽きちゃう」
以前のサーバルとスナネコのやりとりを思い出してみる。確かに、スナネコはサーバルには当たりがキツかったように思える。とはいえ、仲が悪そうには見えなくてむしろ…。
「飽きっぽいのはスナネコさんの性格だよね。…なのにいつもサーバルちゃんに絡んでくるのは、サーバルちゃんと仲良くしたいからじゃないかな?」
「そうなのかな~。だったらそう言ってくれればいいのに」
「サーバルちゃんは、スナネコさんのことが嫌い?」
「ううん! スナネコのこと、好きだよ! とっても可愛いし、でっかいセルリアンのときに助けにきてくれたし! とってもいい子なんだよ!」
「だったら聞いてみればいいんじゃないかな? 私はスナネコさんもサーバルちゃんのこと、好きだと思うな」
「そうだね! うん! 聞いてみる!」
かばんのアドバイスを受けて、サーバルはすっくと立ち上がります。
「よーし! うみゃみゃみゃみゃみゃー!」
そして気合を入れて、手に持ったジャパリまんを一気に平らげるサーバル。
「あれ? サーバルちゃん、あそこ」
「うみゃ?」
かばんが遠くを指し示したその先には、タイミング良くフラフラと歩いてくるスナネコの姿でした。
彼女の姿を認めるとサーバルはすぐにその方角へ全力で駆けていきます。
「サーバルちゃん、気を付けて!」
「おーい! スナネコーっ!」
自分を呼ぶ声に気づいたスナネコも全力疾走して近づいてくるサーバルに気づきます。
「お? サーバル…」
「うみゃーーーーーーーーーーーーーぁっ」
しかしあまりに前のめりに走りすぎたせいで、サーバルは何もないところで転んでしまいました。
「うみゃみゃーーーーっ!!!!」
砂塵を巻き上げ、顔から大げさにスライディングしていくサーバル。
スナネコは立ち止まってそれを、面白い見世物だといわんばかりの笑顔で見ていました。
「いたたたた…」
「サーバルはやっぱりドジっこですね」
2人のもとにかばんも走ってやってきます。
「サーバルちゃん! 大丈夫?!」
「うん、大丈夫だよ! わたし、頑丈だから!」
「やっぱりサーバルは面白いですね。…でもまぁ、騒ぐほどのことでもないか」
「ちょっと待って! スナネコ!」
速攻で飽きてどこかへ行こうとするスナネコをサーバルは引き止めます。
「どうしました? サーバル」
さきほど大立ち回りを繰り広げた姿とは打って変わって、殊勝な面持ちで切り出します。
「えっと、スナネコはわたしのこと、嫌いなの? いつも意地悪なことを言うから」
思いがけない言葉にスナネコはキョトンとします。
斜め上の方角を見つめながら少し考えて、彼女は答えました。
「ボクはサーバルのこと、好きですよ。見ていて飽きないので」
「ほんと? よかった!!」
スナネコの言葉に安堵し、明るさを取り戻すサーバル。歩きながら2人の会話を聞いていたかばんも同じ気持ちです。
「でも今日はもう満足」
「飽きてるじゃん! 早いよ!」
やっぱり切り替わりの早さに振り回されるサーバルです。
でも、そんな掛け合いができるってことはスナネコにとってサーバルは特別気心の知れた相手なのでしょう。
不思議な性格だけど凄くいい子なんだ。かばんは笑顔で2人のやり取りを見ていました。
「ところでサーバル。もうかばんにはばれてしまいましたか?」
「え? ばれるって何のことサーバルちゃん?」
「ちょっと! な、なんでもないよかばんちゃん!! もーーーっ!!」
ボクなりのフレンドリー 凡人村銀次郎 @yingyodori
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