第2話 新しい原点 2
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鞄から財布を出した。学校帰りだったので、大した額はなく二千八百二十円であった。そろそろ帰宅時間になるだろうと感じ公園を後にした。寒かったので、衣料品を買えるお店を探したが、なかなか見つからなかった。薬局があったので、聞いてみることにする。
「すみません」
「何だい」
「この辺りに衣料品売っているお店ありませんか?」
「この道を道なりに行くと、オーエスセンターという店があるぞ」
「ありがとうございます」
「学校の帰りかい?」
「はい」
「ふ~ん」
薬局の店員は疑いの眼差しを送りながら、栄を見送った。
栄は、オーエスセンターを見つけ入る。手前にパン屋がありじろじろ見られた。少し奥に衣料品があった。二千円くらいの上着を探すことにした。
「御嬢さん、どんな服探しているの?」
「二千円くらいの、上着ないですか?」
「お金はあるのかい」
「はい!ここに」
栄は財布から二千円を出した。
「これは…見たことのないお札だね」
栄は、失敗したと考えた。異世界だから、通貨が違うのは当たり前ではないかと
「警察呼ぼうかね。こんな偽札もっているなんて、とんでもない子だよ」
「許して下さい。私に出来ることなら、何でもします」
「そう言われてもね」
栄は、体が震え、小銭を落とした。
「なんだ、あるじゃない。百円玉いくつあるかい?」
「八百円です」
「なら、この千円のパーカー八百円にしてあげる」
栄は、八百円払い。
「消費税はないのですか?」
「消費税?聞いたことないね」
「ならいいんです。タグ切ってもらってもいいですか?」
栄は、疑問だらけであった。札は、だめだけど硬貨は大丈夫、この異世界は、違うようで、似ている。とにかく生きて行くために少しでもお金を用意しないと。そして考えた。もとの世界で聞いたことがある。女子高生の制服や下着は高価に取引されると、自分のもっているそれらのものを売れば一万円になるのではと考えた。
時刻も夕方六時を過ぎていた。団地群に上がるための階段に目を向けながらチャンスを窺った。幸薄そうなサラリーマンが通った。栄は、感でこの人と感じ声をかけた。
「あの?おじさん」
「何!」
「この制服一万円で買ってくれない?」
「はあ高いな」
「じゃこの下着もつけます。どう?」
男は、くんくんと服の臭いをかぐと、財布から一万円を出し、栄に押し付けた。
「誰にも言うなよ!」
男はそう言うと、闇に消えて行った。栄は、一万円札を見て驚いた。みたことのないデザイン感触、これが異世界の通過なのだと。
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