241 鑑定の結果

前々回から飛ばしてきた方のためのあらすじ


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 かつてのハイエルフ、マジひどい。自分たちが虐げられていたのに、有頂天になっていろいろやらかしちゃった。恨まれちゃった。そしたらとんでもない魔獣が作られてしまった! あわてて、帝国のひとと手を組んで戦う! でもダメだった!

よし、血脈だけに伝わる固有の魔法を改変して、封印しちゃおう!

封印の作業はずーっと続けるんだよ。ご先祖さまから伝わる教えを、守っていこうねってお話。

 でも暗い内容すぎて、ロトスが前向きに考えようぜって場を和ませたよ。フェレスはご飯まだ? ブランカはお腹ぐっきゅるきゅー、クロは踊って皆を笑わせました。


(大体こんな感じ)


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 昼食の後、レーウェをフル鑑定した。

 練習のためにロトスにも掛けさせる。もちろんレーウェに了解を取ったのだが、快く引き受けてくれた。

 それで分かったことは。

「遺伝的に、弱いという部分はありますね。そこはやっぱり変えられそうにないです。ただ、魔素の循環が悪い場所は治せそうですよ」

「え、そうなのかい?」

 素が出てきたレーウェは青年らしい表情と顔付きで、目を丸くしてシウを見つめる。

「はい。ちょっと、プリスクスさんたちも見ていいでしょうか?」

「え、ええ」

 了承されたので早速見てみる。

「……あ、やっぱり。レベルの高い人はもしかしたら魔素が足りていないのかも」

「え?」

「足りないから無理矢理補おうとして、おかしくなっているみたいです」

 魔力量は高いので、いわゆる器は大きい。しかしそこを満タンにできるほど魔素を集めきれていないのだ。同じく魔力量の高いロトスを見ていると不調ではないので、集めたものを上手く循環できていないのだろう。

 その辺りが、遺伝的疾患かもしれない。そう思い直して再度鑑定を掛ける。

 魔素の流れがハッキリと分かるようになってから、シウの鑑定内容も随分変わった。体内の魔素の通り道が見えるようになったのだ。細かく場所を指定しながら見ていると、滞りのある箇所も分かってきた。

 その場所の魔素の流れを意識して通す訓練を行えば、そのうち道も広がるだろう。

「対処療法になってしまいますが、魔素をより多く取り込み、循環の訓練を続けていたらほとんどの不調は治りますね」

 レーウェだけでなく、プリスクスも喜んだ。

「他の者も視てもらえます?」

「はい。あ、あとですね――」

「栄養不足?」

 ロトスがようやく顔を上げて、口を開いた。

 一生懸命、鑑定をして、そこに至ったようだ。

「お、すごい。そうだよ」

「へっへー。って、でも、そうかなと思って、そこだけ集中して鑑定したからだけどな!」

「でもすごいよ。鑑定魔法は、知識にないことや想像していないことは見せてくれないからね」

「それそれ。シウが前にそう言ってたから、考えてから鑑定してみたんだ」

 へへー、ととても嬉しそうに笑うので褒めていたら、プリスクスが興奮して間に入ってきた。

「すごいわ。そういう考えがあるのね。わたしももっと勉強してみるわ」

 レーウェも、レベル五が最高値だと思ってそこで終わっていたが、更に上げられるものだと知って、

「わたしもまだ先は長いから、勉強してみるよ」

 と、張り切りだした。

 レーウェは能力者レベルが七だ。先祖返りの中では一番上らしい。

 その話の流れで、シウの血縁者の話題にも及んだ。


 レーウェの次にレベルが高いのは二人、それが青年団長のバルバルスと、シウの血縁者でもあるウェールスという人らしい。

 ウェールスは能力が高いため、長老職を何度も頼んだが固辞し続ける頑固者だとか。集会にも滅多に出てこないそうだ。

「引きこもりじゃん!」

「だね」

「血を感じるね。なあ、シウ」

「念押ししなくても」

 シウたちのやり取りを、二人は面白そうに笑って眺めていたが、すぐに話を継いだ。

「ウェールスは先ほどの話でも出てきた緑枯魔法を持っていて、そのせいでいろいろあったらしいの。すっかり人嫌いになってしまって。でも精霊魔法も持っているので、村のために働いてくれるのよ」

「そうなんですか」

「彼はヴィルヘルムの、ああ、シウ殿のお父様の伯父になるのよ」

 つまりシウからすれば大伯父というわけだ。

「滞在中に会えるでしょうか」

「うーん、どうかしら。一応、言ったのよ。でも、もう縁は切れているから、なんて言い出して」

「彼のは気を遣っているんだと思うよ」

「レーウェ、あなた、前もそんなことを言っていたわね」

「誓約魔法を持っているからか、なんとなくね。ほら、テネルも一時期いじめられていただろう?」

「ああ、そうだったわね」

 テネルという少女の姿も集会場にあったので、シウも知っている。

 プリスクスがシウは知らないだろうと思ってか説明してくれた。

「テネルも、緑枯魔法の持ち主なの。どうしても響きが悪いし、先程の昔話からも『良くない魔法』と捉えられてるわ。だから、いじめられていたことがあるのよ」

「それを何度か助けていたからね」

 レーウェが、面白い秘密をバラすかのような顔で言う。プリスクスは目を丸くした。

「そうなの? あのウェールスが?」

 どうやら相当頑固な人らしい。人助けをするようなタイプでもなさそうだ。

「そうさ。それも、第三者の目がないところでね。ウェールスと仲が良いって知られたら困るだろうと思ったのだろうね。わたしの家の窓からはよく見えるんだ、ちょうど子供たちの遊び場が近いから」

 レーウェが事情を説明している間、ロトスがまた念話を放ってきた。

(爺さんのツンデレとか、誰得だよ)

(テネルが得したんじゃないの?)

(いや、そういう意味じゃねえ。でも素早い返し、ありがとう)

 相変わらず彼は絶好調だ。

 誓約魔法で繋がっても特に問題はないし、ロトスはどこまでもロトスだった。



 レーウェには竜苔を渡すことにした。

 イグにたくさんもらったので余裕はある。

 いつ使うのだろうと思っていたが、こうやって巡るものなのだなと感じた。

「これ、ものすごく高価なのでは……」

「まあそれなりに。滅多に見付けられないものですから」

 レーウェは遠慮するが、アウレアの曽祖父なのだからと押し付けた。

「これは魔力回復薬として優秀な分、人族には劇薬でもありまして。ハイエルフとはいえ、容量用法を間違えると気絶します。気をつけてくださいね。必ず小袋一つ、夜に飲むこと」

「はい」

「他の方には、これをコップ一杯の水に溶かして、スプーン一匙だけ、飲ませる分量です。摂りすぎても体に良いことは全くないので気をつけるよう、くれぐれも注意です」

「分かったわ。ええと、能力者で体に異変のある者だけ、ね?」

「そうです。レベル一の人の不調はまた別物でしょうね。それこそ栄養不足だとかが原因の。今後、増やした食料でなんとかしていくしかありません。念のため、レスレクティオを含んだ『蜂蜜玉』を渡します。一日一個、全員に当たるぐらい用意しますから」

「ええ? そ、そんなに、良いの?」

「良いですよ。その代わり、封印活動を頑張ってください。行けない方は、その援助を」

 これがシウなりの、彼等への感謝の方法だ。そしてプリスクスは気付いてくれた。

「……ええ。ええ、分かったわ。ありがとう、シウ殿」

「どういたしまして」



 それからも、子供たちを中心に鑑定して、病気がないかなどを調べてみた。

 視られたくないという者もいるだろうから、ゴリ押しはしていない。鑑定してもらえるらしいよ、と話を流してもらっただけだ。

 風邪などのちょっとした病気には薬飴玉を、怪我をしている場合は治癒を施して問題なかった者ともども果実飴玉を渡した。

 この周辺では薬草の採取ができないらしく、買ってきたものもかなり少ない。

 だからシウの手持ちから融通もした。

 なんだかんだと持ち出したが、ゲハイムニスドルフの活動を思えばこれぐらい当然だと思える。

 それに、この状態に甘えるのを許さないという気概も、若手に生まれたようだ。

 バルバルスは家に閉じこもってしまっているそうだが、他の若手の能力者はお礼を言いがてら、鑑定してほしいとやってきていた。


 ロトスにも勉強になるので、一緒に鑑定していいか聞いたが、断る者はいなかった。


 薬草を融通するという話をした時も、できれば育てたいと申し出る者がいた。

 外で探すのが困難であれば育てたらいい。そのことに気付いて「お願い」してきた。

 こういうお願いなら、シウだって嬉しい。

 今度、苗を持ってくるよと約束した。それまでは在庫でなんとかして、それまでに育て方や効能を覚えると、張り切っていた。


 年寄りの中には薬草について知っている者もいて、以前は育てたり、森へ採取に行っていたそうだ。

 ただ、自然というのは定期的に変化する。

 ここ数年の不作もそうだし、森の様子もそうだ。

「魔獣が活発化して、気軽に採取へ行けなくなったのです」

 そういうわけで育てるための種や苗さえ取りにいけず、とうとう外から買うことになってしまった。


 しかし、不作や魔獣の活発化などがあったから、トイフェルアッフェなどという魔獣がこの近辺まで出張ってきたのか。

 去年、シウが見付けて倒した後、こっそりと巣を探して丸ごと殲滅したことがある。

 その後どうなったか気になっていたが、幸い、トイフェルアッフェの姿は見ていないようだ。

 今回も帰る際にもう一度、黒の森へ探索に行ってみようと思った。

 ロトスも連れて行って討伐風景を見せようか一瞬考えたが、まだ早いかなと頭を振る。シウでも衝撃だったのだ。人型に近い猿の、狡猾な姿はトラウマになるかもしれない。

 それに、少し気になることもあった。


 トイフェルアッフェは、もしかしたら、「作られた魔獣」の末裔かもしれない。

 積極的にハイエルフを襲っていたから、あるいは、と考えてしまったのだ。

 当時からすれば、血はかなり薄まってきただろうに、本能のどこかに襲うよう組み込まれたものがある。

 そう考えたら、怖いものがあった。

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