新曲をください

プリンセスとコウテイ、某所にて

「新曲がほしいのよ」

「……いきなりどうしたんだ、プリンセス」

「どうもこうもないわコウテイ。私たちPPP（ペパプ）に足りないものがなんなのか、やっとわかったのよ」

「……それが、新曲？　つまり、新しい歌を覚えろと？」

「そう！　考えてもみて、私たちが歌って踊れる曲のレパートリーは！？」

「『大空ドリーマー』と、『ようこそジャパリパークへ』の2曲」

「だけでしょ！？　うすうす思ってはいたのよ。ライブでもこの2曲だけを延々ループし続けるのって、なんか違うんじゃないかなー、とか！」

「お客さんは十分喜んでくれてると思うんだけど……」

「ダメよ、安易な慢心は停滞とマンネリを生むわ。PPP（ペパプ）は常にファーストペンギンたるアイドルユニットなの！　満足の上にも満足を重ねて、お客さんが多幸感で溺れるくらい攻めの姿勢を見せていくのよ！」

「わ、わかったから、そんなに顔を近づけないでくれ……。それじゃあ、新曲を作るのはいいとして、誰が作るんだ？」

「それなのよね……。コウテイ、作曲したことはある？」

「ない。プリンセスは？」

「同じくないわ。ジェーンもイワビーもフルルも、みんな無理みたい」

「私たち、よくアイドル活動できたな……」

「いいのよ、適材適所なんだから！　アイドルは歌って踊るのが仕事！　先人の遺産に頼るのも大事なの！」

「でも、私たち5人じゃどうにもならないだろ？　他の誰かに曲を作ってもらうのか？」

「まあ、そうね。外部のアーティストに参加してもらうのも、新しい風って感じで素敵だと思うわ」

「それで、誰に声をかけるんだ？」

「うーん……音楽が得意なフレンズって、誰がいたかしら……」

「トキは？　この間、一緒にセッションしたじゃないか」

「…………その、なんていうか、あの子の歌は、PPP（ペパプ）の方向性とちょっと違うというか……」

「ああ……」

「と、とにかく、誰か別の子で」

「じゃあ、スナネコ？」

「あの子、音楽が得意なの？」

「いや、よく知らないんだけど、なんとなく……」

「ああ……」

「…………」

「やめときましょうか……」

「そうだな……」

「でも、どうしようかしら。他に心当たりはないし……」

「いや、そうでもないぞ」

「え？　コウテイ、誰か他に音楽が得意なフレンズを知ってるの？」

「知り合いにいないなら、募集すればいいんだ」

「？　……ああ！」

――唐突にカメラ目線+営業スマイルになるプリンセスとコウテイ――

「ねえ君、そう、そこの君。君だ。私たち二人が困っているのをずっと見ていた君。何のフレンズなのかは知らないけど、よかったら助けてくれないだろうか」

「私たちPPP（ペパプ）は、みんなの作った音楽を募集しているわ。新曲を提供してもいいという方は、みずべちほーまで来てね。採用されてもされなくても、何かお礼をさせてもらうわね」

「もしくは、いま君の目の前にいるマネージャーに歌って聞かせてくれ。彼女の眼鏡に適えば、即採用だ。期待している」

「それじゃあ、ここまで見てくれてありがとう。これからもPPP（ペパプ）をよろしくね」

「みんなの期待に応えられるよう、上を目指していかないとな」

「「ばいばーい」」

　　　　　　☆

「なあ、マーゲイ」

「どうですコウテイさん！　タイリクオオカミ先生に描いていただいた、渾身の漫画広告！　そして僭越ながら、私マーゲイによる朗読！　ご本人と比べれば足元にも及びませんが、PPP（ペパプ）の魅力を伝えつつ、作曲のできるフレンズに呼びかける内容となっております！」

「それはいいんだけど……なんだか、うさんくさくないか？」

「えっ！？　いや、そんなことは……」

「なんか最後の方、無理矢理な感じでまとめてない？」

「プリンセスさんまで！？　いや、まあ、そのあたりで先生が飽きてしまって、強引にまとめに入った感は否めませんが……それはそれとして！　人気漫画家と人気アイドルのコラボレーション！　これは食いつきが期待できますよ！　私が欲しいくらいです！」

「そうか……。なあ、マーゲイ」

「はい！」

「これを見せて回るということは、おまえがジャパリパーク中を回るということだよな？」

「その通りです！」

「その間、私たちのマネージャーは誰が担当するんだ？」

「……はっ！」

「えっ！？　マーゲイがいてくれないと、私困るわ！」

「プリンセスさん……！」

「マーゲイ、鼻血鼻血」

「っ失礼……。いや、その問題を失念していました……。これはその……えっと…………。なかったことに」

「やれやれ……」