第3話 人間VS人工知能
ここは、人口10人の世界。日本やアメリカ、ロシア、中国という国の境はなく、たったひとつの世界に10人で過ごしている。そのうち、5人は人間、他は人工知能である。さあ、この世界で最後まで生き残れるのは、人間と人工知能のどちらであろうか。
人間が食事をしていたころ、人工知能は充電をしていた。ソーラーシステムから簡単に充電できるため、人間の操作は必要ない。一体、回路が故障してしまった人工知能がいた。緊急通知を送ると、仲間の人工知能がその修復をした。
人間の中で、具合の悪くなった者がいた。ひとりが、その様態を見て薬を与えた。
人間も人工知能もそれぞれが自立しながら生きていたのである。
それは時を遡ること○○○○年前のこと。
人間は、人工知能という、人間の知的行動をコンピュータにさせる技術を開発した。それ以降、人間はどんどん人工知能を取り入れ、生活のあらゆる基盤までを人工知能に行わせた。その中でも大きな進歩は、永久的な人工知能の開発であった。つまり、ソーラーシステムにより、電力を確保し自家発電で稼働という自立開発と、故障の際に他の人工知能により修復できる再生技術が生み出されたのである。
延命治療が進む人間界でも、やがて死は訪れる。しかし、人工知能に死というものはその進歩によって存在しなくなった。
それから、人工知能が数千年という寿命を生きている中、人間は入れ替わった。子孫繁栄も乏しく、とうとう5人になってしまったのである。
人間は言った。
「人間は、これで終わりかもしれないな。」
「ああ。この世は、人工知能のものになる。」
人間の歴史が続いてからの歴史を、この人間たちは知っている。時には、人間どおしが睨み合い、殺しあうことだってあった。しかし、その度にまた手をつなぎ、多くの国でひとつの世界を作り上げたのであった。
「先祖は、子孫を平和な世界で生かすために死んでいったのだ。」
「我々も、子孫を残さねばならない。」
「生物の使命は、子孫を残すことだ。」
人間という生物の絶滅の危機を感じた彼らは、結束した。
ある日、人間が集まっていた。横になっている1人の周りに、花を飾っていた。
「4人になってしまった。」
この世界は、人間4人、人工知能5人の計9人となった。
「子どもは?」
「まだできません。」
人間は、頭を抱えた。
またある日、人間は集まった。
「病気だったそうだ。」
人間は、残り3人になってしまった。
「私も死ぬ。」
女がそんなことを言い出した。
「この人なしでは、生きてる意味なんてない。」
涙を流しながら、その人は毒物を飲み込み、自殺した。
人間は、あと2人になった。
「どうする?」
研究者が答えた。
「・・・利用しよう。」
「利用?なにを?」
「人工知能をだよ。もともと人工知能を作ったのは人間だ。」
研究者は、人工知能と話した。
「人間の子孫を残したい。策はあるか?」
人工知能は答えた。
「昔、アダムとイブがしたように、子を産めばよいのです。」
研究者は、それはできない旨を答えた。
「今残っている人間は、男2人だ。ほかに方法はないか?」
人工知能は、検索した。
「ありません。」
そのことを伝えられたもう1人の男は、こう言った。
「どうすれば子孫を残すことができるのか。これは、あなたに任せます。私は、あなたがその答えを出せるまで、守ります。」
その男は、力自慢であった。壊れた家屋の修復や、食糧調達に励んだ。
そのおかげで研究者は、研究一筋に身を置くことができた。
それから2人の人間は、年老いた。
ある嵐の日であった。
倒れた家屋の修復のために、力自慢の男は
研究者は、その梯子の倒れる音と鈍い音を聞き、外に出た。
そこには、一本の釘をにぎったまま頭から血を流した男の姿があった。とうとう人間は、あと1人になってしまったのである。
研究者は、人工知能の中にひとり佇んでいた。
「私の最大のミスは、女の自殺を止められなかったことである。」
人工知能に、人間がとうとう1人になったことをインプットした。
そして、その日がやってきた。
研究は、胸を押さえながら、人工知能にある情報をインプットした。
「私ができるのは、このくらいだ。」
研究者の最期の言葉であった。
そこには、人工知能しか存在しなくなった。それは、喜怒哀楽も生死もない、無の世の中である。ただそこには、絶滅した人間の長い歴史が残されている。
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