霞み散る

宵が深まれば人の眼は眠る。狩人と獲物は入れ替わる。月光さえもその身を隠してしまったならば、此岸も彼岸も本質的にはたいして変わらない。その境界線たる河岸では、対のしだれ桜が番をしている。花弁が散り去るまでに訪れる曇天の宵は、そのまま災禍の火種の数だ。背筋をぞわりと撫で上げるような辻風を契機に、乱れ咲きの闇夜が迫っていた。

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