第3話 けん玉に例えて
時は戦国時代。もし織田信長が「けん玉」で遊んでいたなら。
「乗らぬなら燃やしてしまえ剣玉め」と気の短い信長は言ったかもしれない。
そこに羽柴秀吉(のちの豊臣秀吉)が
「殿、私目にお貸し下され。私が必ずや乗る剣玉をご用意いたしましょう」といつもの調子でご機嫌をとる。
「乗らぬなら乗せてみせよう剣玉を」と言いながら秀吉はその晩、ろうそくの灯りに照らしながら考えた。この皿を大きくするには、
「そうじゃ!この手があったわい」と膝を叩いた。
翌朝、信長の前に進み出て
「殿、ご用意できました」「こちらの剣玉をお使い下さい」と差し出した。
その剣玉の皿の周りには、細い竹ひごが隙間無く囲ってあり、まるで茶筅の様な仕掛けが施してあった。玉は、少々中心を外れても口の広い竹ひごに吸い込まれるように入っていった。
「なるほど、猿め考えたな。しかし皿は出来たとしてこの剣に入れる『とめけん』はどうする?」と信長が尋ねる。
「はっはあ、もう一晩お時間を頂ければご用意いたしましょう」と秀吉がこたえる。
「刺さらぬなら刺してみせようとめけんを」と言いながら秀吉はその晩、ろうそくの灯りに照らしながら考えた。この穴を大きくするには、
「そうじゃ!この手があったわい」と膝を叩いた。
「殿、ご用意できました」「こちらの剣玉をお使い下さい」と翌朝差し出した。
その剣玉の玉には、そこらじゅう穴が開いていた。そしてさらに剣先は魚を突き刺すモリ(銛)の様に三つ叉に改造されていた。確立は100%ではない。しかしどの穴かに、そしてどの剣先にかに刺さる確立は90%だった。
「わっはっはっは!なるほど、猿め考えたな。お前の悪知恵をこれからも戦場に生かすがよい!」と豪快に笑い飛ばした信長であった。
そして秀吉のお調子振りを見ていた徳川家康が、
「乗らぬなら乗るまで続けよ剣玉を」と、冷ややかな目でその場を眺めていた。
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