第77話 チェスと暗雲
カチッ…。
白と黒が交互に彩られた盤上にオレとナバルが駒を進めていく。馬車で移動の間にコレなんてどうだ?と
サスペンション搭載の馬車だからヒドい揺れは無いから難なく遊べるのはありがたい。ギルドも良い仕事するなぁ。
「いざ行かん!勝利をこの手に!」
カチッ。
「…」
カチッ。
「おお!兵士アレハンドロ!…お前の死は無駄にしない!」
カチッ。
「…」
カチッ。
黙々と駒を進めるナバル。よく見れば非常にやりづらそうな顔をしている。そんなナバルを無視してオレは駒を進めた。
「おのれ黒騎士め!いざ勝負!」
カチッ。
「…」
パチッ。
「あー、貴方。
「そのポーン女かよ!」
思わず突っ込むナバル。オレがいじくるポーンを見て叫んでる。知らなかったの?
「我が
カチッ。
「…やりづれぇ」
スイートポテトを作った次の日にはオレたちは町を発った。獣王一行の馬車も一緒に行くのはわからなくもないけど当の
「…この馬車よぉ、俺たちのより快適じゃねぇ?」
「冒険者ギルドからの借り物だからなぁ、私物じゃねぇよ?」
カチッ。
カチッ。
「チェックメイト」
「なにぃ?!」
気がつけばオレのキングは追い詰められてた。
「おのれ逆賊!我が撃ち取ってくれよう!」
カチッ。
「…」
カチッ。
「騎士団長ー!」
カチッ。
「…」
カチッ。
「すげぇな。白のキングが完全包囲されてやがる。ある意味奇跡だぜ」
おっさんが余計なことを言っているがまだだ!まだどこかに…。オレが悩んでいるとテリオが馬を操りながら話しかけてきた。
「おーい、そろそろ町が見えてきたぞ」
「フッ、ナバルよ。この勝負預けさせてもらう」
「いや、お前の完敗じゃねぇかよ」
意気揚々と馬車を飛び出すとそこには壁で囲まれた町があった。壁の前にはバリケードがあり間にはテントが張ってある。獣人の援軍はテントで寝泊まりしてるのか?
オレの後ろから
「なあ、獣人の援軍は町中には泊まらないのか?」
「他国の軍属だからってのもあるけどよぉ、一番は人数と機動力だな」
「ふ~ん」
色々ありそうだけどな。下手に首突っ込まない方が良いか?オレらは宿を探すかね。
「おっさんは此処で寝泊まりするのか?」
「いや、兵が落ち着かねぇしここの領主にも顔見せなきゃならんからな」
聞けば貴族の好意という事で邸に獣王一行の部屋が割り振られているらしい。貴族ねぇ…落ち着かないだろな。オレらはスルーでいこう。
そんなこんなでオレたちは町へ入っていった。
…
…
…
「おい。準備はできているか」
「ああ、にしても気持ち悪いな。死体で魔方陣を囲うとか…」
「ああ、全くだな。それに術の完成を待たずに奇襲をかけるんだろ?」
「そうなのか?」
「らしいぜ。盗賊どもがドンパチ殺ってる中に突っ込ませるんだと」
「うひゃー、
俺は元々ソウード共和国でただの農夫だった。それがネシア王国と戦争になったから徴兵されてこんな南に駆り出されている。一緒に話しているソイツも元は狩人だったらしいが徴兵されたそうな。
今、俺たちの前には上からの命令で奇妙な魔方陣を囲うようにどこで集めたのか人の死体が並べられている。戦争で見馴れ始めているとはいえ正直、吐き気をもよおしている。思考を切り替えるように俺は背後に見える町に目をやった。明日にはあそこに攻め込むんだな。町の前には獣人の部隊がテントを張って待ち構えていた。
「なあ、お前見た?コレを指示した魔術師」
「いたな。本国から来た全身茶褐色の将軍さまと話をしてたぜ」
「本国から?そっちは知らねぇな」
俺たちは知らなかった。この男が何者なのか。これから起きることがここにいる全員にとっても悲劇になることなど…誰も予想しえなかった。
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