第75話 強者たち
一合斬り合わせると相手がどんな奴かわかると言う。小さい頃は半信半疑だったが今ならそれもわかる気がする。例えば俺が
俺たちは盗賊の追撃に来て化け物みたいな奴と遭遇した。だがこのおっさん、昨日戦った奴らと比べるとスカッとするほど堂々とした戦いぶりだった。少なくとも昨日の奴等のように仲間を切り捨てるような事はしないだろう。何となくだがそう思う。
一手一手が重く力強いがどこか暖かな感じがするからだ。『敵相手に何言ってんだ?』とは思うけどな。
俺がそう思うのと同じようにおっさんも何かを感じているらしい。攻撃に殺意が感じなくなってきていた。
「う~ん。やっぱそういうことかあ?…」
「なんだ?おっさん。戦闘中に考え事なんて随分余裕かましてくれるな」
「言ってくれるじゃねぇか。あっちも一段落したらしい。そろそろこっちも終いにしようや」
おっさんの言う通り洞窟内の魔力の揺らぎが収まったように感じる。アイツら無事だと良いが。
おっさんはハルバードを上段に構え言い放った。
「とりあえずこいつを防いでみろ」
刃から莫大な魔力が収束していく。おいおいマジかよ。俺はルナを納めるとアルンで構えた。凶悪な魔力の斬撃が俺に襲いかかる。
牙狼三式
…
……
オレたちは駆け出していた。爆音が鳴り響いてからいてもたってもいられなくなったから。洞窟を出るとそこにはハルバードを地面に叩きつけている獅子の男と斬撃を防げたのだろう、ナバルが向かい合っていた。
「ちっ!そのハルバードごと斬り飛ばしてやるつもりだったのによぉ」
「アホ抜かせ。俺の魔力刃を消し飛ばせただけで上出来だ」
二人は笑い合うとナバルは剣を納め手を差し出した。
「俺は
獅子のおっさんはナバルの手をガツシリ掴んで言い放った。
「よく来た冒険者。俺は獣王国 獣王
ガウニス・フォン・フェルヴォーレだ」
二人の名乗りに3人組は頭を抱え、人質の姉ちゃんたちはボーぜんとし、…
オレとテリオは鼻水
…
……
「予想するかい?獣王みずから戦線に出てくるなんて!」
「だよね!もっと言って!うちの大将は自由奔放すぎるんだよ!」
「…うちの魔王みたいだな」
「ガーッハッハッハ!照れるじゃねぇかよ」
「「「誉めてねぇ!!」」」
誤解が溶けて町に戻る途中、バカ話に花を咲かせるオレたちはこれまでの経緯を話していた。そしてわかったんだがここネシア王国と獣王国は友好関係にあるらしい。その為か防衛のみだが獣王国からは兵士が派遣されているとか。だからって獣王本人が出てきちゃダメだろ。
「…って訳でよぉ。どうもソウードがキナ臭せぇんだよなぁ。で、自分の目で確かめたくて来たわけよ」
「…陛下、出発の3日前から『暇だー!』って叫んでませんでしたっけ?」
「…♪~」
このリアクション。デジャビュって奴か?この世界のトップは皆こんななんか?そんな感じで町についた。
町は何事もなく無事だった。安堵しているナナイはナバルのもとに駆け出している。ノベルさんもテリオの無事を喜んでいて、…ホルンはオレの首に巻き付いていた。
「ホルンさんや、どう言うこと?」
「暇だったニャ。トランはこれからホルンを構うニャ」
寂しかったとは違うの?まあいいや。その日の晩、獣王のおっさんとナバルは酒盛り始めやがった。ナナイがジト目でナバルを見ていたが今日だけは見逃してあげて……ってアイツ酒盛り多くね?
…………………………
ここまで読んでくださりありがとうございました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます