第73話 必要な情報、いらない情報

 朝起きてナバルたちと軽く模擬戦をやった後、今日の予定をたてた。


「…って感じでさ、俺とトランが町で聞き込み、ナナイたちは買い出し、ノベルさん達は町長ん所で。コレで良いんだよな?テリオ」


「ああ、俺はノベルさんの護衛ごえい兼サポート、で…」


「ニャ!ナナイはシッカリ守るニャ!」


「よろしくね、ホルンちゃん」


「それじゃあお昼にはここで集合でいいね」


 こんな感じで行動開始だ!…あんだけデカイ盗賊団だからな。何らかしらの噂は広まってるだろう。



 ナバルは商人のオッチャンと話し込んでる。オレが昨日、助けたおっさんだったよ。やたら上機嫌なのは良いんだが…仕入れに行く前のせいか目ぼしい商品は無いな。あるとしたら…かさばる本とかだな。

 この世界の本は大体が魔術や兵法、魔物に関するものなど『知識を得る本』が一般で、まれに貴族が道楽で書いた自慢のオンパレードの日記だったりと『娯楽』としての本はまず無い。まあ、実際に魔物が出ちゃったりするから『消費者のニーズ』がそっちに行っちゃうのは仕方ないんだろうねぇ。

 そんなことを思っていると《ある男の奮戦》と題された本があった。他の本より売れてるのだろう。山が減っている。貴族の自慢本と比べて表紙も質素だった。オレは何気なくページを開いてみた。



▪▪▪▪▪▪▪



「もうそんな時間か…」


 そう呟くと男は立ち上がる。行き先はもう何度も行き慣れた『戦場』だった。男にしてみればやむを得ないとはいえ、ある意味面倒であった。

 そう、男の相手である『奴ら』は毎日のようにやって来るのだ。今日も『この場』に来たときから『奴ら』の気配は常に感じていた。

 男は慣れた動きで臨戦態勢をとると『奴ら』を待ち構える。

その間は存外に長く感じる時間であった。

 彼は時に瞑想をし、時にこれからの己の行方に思いを馳せる。

 ふっと息を抜いた瞬間『奴ら』は大挙として押し寄せて来た。


「ふんっ!」


 我先にと押し寄せてくる『敵』。

 予想外の『敵』の多さに一瞬、男は不安にかられる。そういえば昨日は『敵は来なかった』事を思い出し苦笑いを浮かべた。

 男は『ここで決める!』と決意するとあらんかぎりの力をいれ振り絞った。


「うぉぉぉぉっ!」


 その一瞬は時に長く感じる戦闘だった。


 やりきったと感じると男は『残党』の殲滅にのりだした。

 残りをすべて拭き取ると爽やかな笑顔を浮かべ扉を閉める。


 今日も1日が始まる。



『2章 ワイのトイレ戦線 おわり』



▪▪▪▪▪▪▪



「便所の話かよぉ!」


 思わず本を叩きつけるところだった。イカンね、商品を乱暴にしちゃ。

 にしてもこんなバカバカしい本を書くヤツはどんなヤツなんだ?興味本意で作者を見ると…




ある男の奮戦


作 ベルゼイ・ファウスト




は? ベルゼイってどこかで聞いたような



露出卿ベルゼイ・ファウスト  チーン♪



「ギルマスかよぉぉぉぉ!」


スパァァァン!!


「あ」


 道具屋のオヤジと目が合う。


「…」

「…」


「…コレください」


「毎度ありぃ♪」


 くそぅ!いらん買い物をしてしまった!不必要な買い物だよ!まったく。


「トラン、北の岩場に洞窟があって奴ら、そこを根城にしているらしいぞ。…ってお前、なに買ったの?」


「…バカ本」


「…へー」


 ナバルは薬草関連を抱えながらオレの本を見ている。「…新しい薬学書ないかなぁ」とか言ってるけど、そんな高尚な本じゃないからね?コレ。

 宿に戻ると皆、同じ情報を持ってきた。


『北の洞窟が盗賊団のアジト』


 なのは間違いなさそうだね。それでチームを2つに分けることになった。


▪▪▪▪

盗賊団討伐班


ナバル、トラン(オレ)、テリオ。



町防衛班


ノベル、ナナイ、ホルン。

▪▪▪▪


「なあナバルよぉ、クマを連れてくのはわかるけど俺はぶっちゃけ足手まといじゃねぇか?」


 自信なさげにそんな事を言うテリオ。こう何度もナバルの非常識さを見せつけられたらそう思うよね。でもテリオ自身、むしろそれなりに強くなってんだけどねぇ。


「それはないだろ。正直あのオルレンの衛兵でも通用するほど強いぞ?お前は。…自覚無いみたいだけど。それにトランには向こうでやってもらいたい事あるしな」


 いきなり振られてビックリしたわ。

「何やればいいんだ?暴れるだけだろ?」


「…俺たちが暴れる前によ、先行して人質がいないか見てほしいんだ。お前隠れるの上手いだろ?それで人質がいた場合は始め俺らが陽動で暴れるからそのあと…」


「ああ、なるほどね」


 大体話はまとまったね。町の防衛は一応、自警団はいるみたいなんだけどあまり当てにはならないなからなぁ。町の広さを考えても本当ならもっと残したいくらいだが…。


「兄さん、気を付けてくださいね。

何故か精霊さんが『ソワソワ』している感じがするから…」


「…ああ、わかった。じゃあ頼んだぜ」


 こうしてオレたちは盗賊団討伐に出かけた。さて、何が出るかな。






……………………………………


今後、文章を修正していくかもしれません。

ここまで読んでくださりありがとうございました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る