第72話 ネシア王国と襲撃
大変お待たせしました。
時間差でもう1話あります。お付き合いいただけると幸いです。
……………………………………
ネシア王国に入ってそろそろ最初の町が見える頃だった。先ほどまでダラけきっていたナバルとトランが急に真顔になって前方を睨みつけている。
「…テリオ、少しずつ飛ばしてくれ」
「あ、ああ」
そして見えてきたのは四方を木製の壁で囲まれた町と襲撃をかけている軍勢だった。
木製で中二階位の高さの壁だった。強度は当てにならないだろう。
「今度はマジな襲撃かよ!」
テリオの叫びが門の崩壊と重なった。
…
…
「早く逃げるんだ!」
私の怒鳴るような、悲鳴のような声に妻と子供たちは今にも泣き崩れそうな顔をして町の中へと駆け出す。
ああ、今日はなんてツイてないのだろう。商品を仕入れに行こうかという日に《盗賊団》が襲撃してきたのだ。あと1日早く出ていれば安全なアルセイム王国に行けたのに…。
そんなことを考えていたら門が破られて大挙として盗賊が押し寄せてきた。もう終りだ。振り向けば一番下の娘が転んでしまった。私は無我夢中で娘に覆い被さる。『この子だけでも』と思いながら。
…
…
…
まだ斬られていない?どういう事かと振り向けば賊が倒れていて、踏みつけるように小さな小グマが立っていた。
「あっぶねぇ~、ギリギリだったな。
おっちゃん無事か?」
…
…
マジで紙一重でやんの。
門はナバルたちがいれば何とかなるだろと思い跳躍して門を飛び越えた。壁の先では商人風のオッサンがうずくまっててアホ面さげた盗賊が斬りかかろうとしていた。とりあえず勢いのままにアホを踏み潰してオッサンの無事を確認する。
…無詠唱で高速移動が出来たあたりオレも成長したね。やったね。
門の外では怒号と悲鳴がおり混じっている。まあ、ナバルとホルンがいれば余裕だろう。上空ではナナイが杖に乗り結界を張って住民を守っていた。オレは中に入り込んだバカチンを退治しますかねぇ。
「ハイハ~イ!アホの子集まれ~。
イカすクマさんがボコンボコンにしてやるぜ!」
「あ”、ちびっこいのが舐めてくれるじゃねぇかよ」
「ぶっ殺してやる!」
「死ねぇ!!」
血走る盗賊たち。単純でやんの(笑)
そんな風にアホを煽ってると後ろから
「クマちゃん!」
と、小さな子供の声がする。オッチャンは子供をかばってたのか。参ったね。子供に殺人現場を見せようもんならトラウマ確定じゃん。しゃーない。生け捕りにするか。
そうこうしているうちに賊が一斉に飛びかかってきた。最初の一人を避け、襟首をつかんで残りにぶつける。
『エアー・ショック!』
間髪入れずに衝撃魔法を当てて体勢を崩す…つもりが周りの賊がまとめて吹き飛んだ。後に続こうとしていた奴らは驚きすっかり警戒している。
「あらら。ずいぶん飛んだなぁ」
右手をプラプラさせながらも賊を観察していると後ろで偉そうにしてるヤツが前に出てきた。コイツがラスボスか?
「門の前に出てきた奴らといい…お前ら何者だ」
「そう言うお前らはナニモンだよ。帝国の観光客か?」
「…全軍撤退だ」
無愛想なラスボスと取り巻きは音もなく退いていった。まあ、煩い雑魚はまだわめき散らしてるけどね。そこからはコッチの独壇場だったわけだけど。
…奴らただの賊じゃないね。これはナバルと相談かなぁ。
…
…
町が荒らされる前だったせいか宿屋は普通に営業していた。先ずは作戦タイムかね。ナバルたちの部屋に全員集まった。
「…って感じでさ、ボスと取り巻きっぽいのは統率がとれてて引き際も良かったんだよね」
「トランの皮肉に警戒したのかもな」
「『帝国の』ってヤツか?」
「推測だけどな」
オレはナバルにあったことを伝える。そういや門の外はどうだったんだ?そう思った矢先、テリオが会話に加わった。
「ナバルとホルンちゃんの暴れっぷりにドン引きしたのもあるだろうけど…するってぇと『どこぞの正規軍が族に偽装』するため『本物の賊を雇った』ってところか?」
「まあ、それがしっくりくるな」
「それだけかなぁ」
と、ナナイが不安そうにこぼした。
「どうした?ナナイ。何か気になるのか?」
「うん…オルレンの町で会った人たち。あんな感じの人達って事も無い?」
「…ああ、アイツ等も逃げ足速かったなぁ。それに…強者の部類だったな」
そうだった。戦争だという思い込みからそれ以外の可能性を無意識に排除してたわ。…そういやナナイを『精霊術師』って見抜いたんだよなぁ。十分危険だな。
「じゃあ皆、明日はその『盗賊団』のアジトの情報収集から討伐までいこうか」
「ノベルさん、良いんですか?」
「だってみんな、気になっちゃうでしょ?この町のこと」
テリオの確認にノベルさんがビシッと確信を突く。ナバルは頬をかいて「そりゃ…まぁ…」なんて言ってるし。
にしても紛れ込んでる奴らは何者なんだろね…。
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