第71話 新たな出会いは必然で

大変お待たせしました。


…………………………………






「バッチャ!ただいまなの」


「遅かったねコルネや暗くなる前に…おや?」


「トランやナバルたちの友達なの。お家に入れていい?」


「どれどれ…ああ良いよ。夜の森は危ないからねぇ。アンタたち、ゆっくりしていきな」


 少女の案内でたどり着いたのは一軒の小屋だった。いささか立派な家だが…そして中から出てきたのは一人の老婆。魔の森に老婆って…まるでおとぎ話の『深緑の魔女』みたいだ。

 礼を言って家に入る。特別禍々しい物はなく、むしろ実家に帰ったような安心感がある。


「助かりました。ありがとうございます。自分はリョウ・アンダーソン。と彼女は…」


「ロロ・カーネットです」


「ノイエ・ウェリッジと申します。お世話になります」


 ウェリッジ?どこかで聞いたような…。


「あたしゃキャリバンヌだよ。そろそろ晩ごは…やれやれ、今日は客がよく来るねぇ」


 そう言って玄関を開けると一人のエルフ?が立っていた。銀色の長髪で横の女性陣は見とれていた。…悔しくなんか無いからな!こればっかだな俺。


「やあキャリィ、差し入れだよ。お、先客かな?」


「…なんだか白々しいねぇ。まあ、良いさね。ウィルや、アンタも食べてくかい?」


 そう言うとキャリバンヌさんは銀髪エルフから袋を受け取り厨房に行った。いつの間に調理したのか良い匂いがここまで伝ってきた。…ヤバイ、腹が鳴りそうだ。


「私の事はウィルと呼んでくれ。君たちも冒険者かい?」


 銀髪兄ちゃんは嬉しそうに話しかけてきた。…なんだろう。図々しいはずなのに不快に感じないな。


「ああ、オルレンに今はいるんだ。しかし驚いたよ。獣人の少女が森に入ってしまったから危険だから止めようとしたんだが、まさか森に住んでると思わなくてな」


「アハハ、そうか、コルネ君を助けようとしてくれたのか。その気持ちに友人として感謝するよ」


「いや~。結局なにもしてないけどな」


 こんなやり取りをしながらキャリバンヌさんが用意してくれた晩飯にありつく。コマ猪のしょうが焼き?だそうだ。ショウガという薬草が味付けのメインらしいがこれがまた旨い。あっという間に食べ終わって食後のお茶を楽しんでいたときだ。ウィルさん (彼も冒険者だとか) から願ってもない誘いが来た。


「君たちも冒険者ならどうだい?魔王都ギルドランに招待しようか?」


「良いのか?」


「冒険者カードは3人ともってんだよね?それに私もそれなりに『名のある冒険者』だから平気だと思うよ?」


「…何言ってんだい。アンタ…じゃないかい」


「ん?キャリィ、何か言った?」


「気のせいだろ、空耳だよ」


 ウィルさんとキャリバンヌさんで何やら言い合ってるが…これは有りがたい。…のか?これドツボコースじゃないよね?見ればロロは好奇心からか、


魔王都ギルドランですか?昔話に聞いた町が本当にあるんですね!」


と浮かれてる。ウェリッジ嬢も思うところがあるのか、


「よろしくお願いします」


と乗り気な顔をしている。

…男の俺がビビってるのも格好つかないよな。もちろん俺も行くことにした。



 朝になりキャリバンヌさんとコルネちゃんが見送りしてくれた。


「バッチャのお手伝いあるから今日は『またね』なの」


「コルネちゃん、またね~」


 ロロがコルネちゃんを撫でまわしてる。ウェリッジ嬢も目がトロンとしている辺り二人は仲良くなりそうだな。


「う~キャリィ、酔い醒ましある?」


「ハァ、ナバルの作り置きがあったはずだねぇ。少しは加減しな」


「あれエグいんだよなぁ…ありがとう」


 二日酔いでフラフラのウィルさんは瓶を一飲みすると「ぐぇぇ」と呻いた。俺もナバルに貰ったことがあるがアレはキツかったな。


「待たせたね。それじゃ行こうか」


 こうして俺たち4人は魔王都ギルドランに向かった。



 ここに来るまでアドレティドッグを初め鉄硬蠍メタルナイト・スコープス、そしてなんとAランクモンスターのジェネレイト・オーガに遭遇した。


 …よく俺 生きてたよな。鉄硬蠍メタルナイト・スコープスが出た辺りから俺たちは青ざめてたがジェネレイト・オーガが出たときにはマジ泣きしそうになったよ。8m 級の化け物だよ?普通泣くから。

 なんといってもAランクモンスターは国が議会召集かますほどの化物だ。そんなのをウィルさんは事も無げに討伐して見せた。…なんなんだろねこの人。

 そういや鉄硬蠍メタルナイト・スコープスの時は俺らを『試すような』動きをしてたな。…まあ、助けてもらったから良いんだが。

 でだ。俺たちは今どでかい門の前にいる。門番とにこやかに話すウィルさん。俺たちが差し出したギルドカードを確認するとあっさりと中に入れてくれた。


「…おお」


「スゴいです~」


「…圧巻ですね」


 門の先は真っ直ぐな大通りになっていて、その先は巨大な城へと続いている。

 通りの左右には様々な店が立ち並び、町は活気に満ちていた。


「こっちだよ」


 ウィルさんは通りからそれて脇道をずんずん進んでいく。慌ててついていくと大きな建物についた。


「討伐証明の手続きとかあるからね。先ずは受付に行こうか」


 建物の外もそうだったが中にも『武器や防具で身を固めた』人達がいた。…ああ、やっぱりそうなんだ。



ここは魔王都ギルドランの『冒険者ギルド』なんだ。



 ロロはこの町にもギルドがあったことに驚いているようだ。ウェリッジ嬢も驚いていたが俺たちよりもショックは小さく感じる。気のせいか?

 ウィルさんは真っ直ぐにカウンターに向かい一人の受付嬢と話をしていて、俺たちに向くと手を振った。


「彼らと臨時のパーティを組んだんだよ。解体はしないで『まんま持ってきちゃった』からそっちもお願いしたいんだよね」


 …いくつか『おかしな事』を言っているが事実だ。ウィルさんは魔法袋を持っていた。それも『バカみたいに入るヤツ』をだ。


「ではこの札をもって解体場に行ってください」


「ああ、いつも通りだね」


 移動しながらウィルさんはこのギルドでのクエストの受け方から解体のサポートなんかを教えてくれた。


「…そういうわけでさ、有料だけどギルドで綺麗に解体もしてくれるんだよ。丸々持ち込めば部位証明なんか要らないしね。要らない素材の売買だけでも黒字になるから面倒なときはオススメだよ」


 そうして報酬の分配になったわけだが、ジェネレイト・オーガに関しては俺ら3人は辞退しようとしたんだが…


「君たちが気を引いてくれたからあっさりと狩れたんだよ?」


 と、『何言ってんだ?』って顔をされてしまった。

 結局、俺とロロにはジェネレイト・オーガの革鎧用の素材、ウェリッジ嬢は鉄硬蠍メタルナイト・スコープス全身鎧フルプレートを作れるだけの素材、間の繋ぎにジェネレイト・オーガの革を使うつもりらしい。ギルドで試算してもらい報酬を分けたんだが余った部位だけでも一財産になった。


「なんかすまないな」


「あー、いーのいーの。それくらいの防具じゃないと『魔の森』はキツいからね~」


 と、メッチャ不安なことを呟いていた。


「…と、とりあえず宿を決めようか」


 別に現実逃避をしていた訳じゃないよ?まさかここに『こんなに長く』居座ることになるとは思わなかったけど…。






………………………………


次回からは主人公が出る予定です。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

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