第47話 門前の危機
宿の食堂でナバルたちは朝食を食べるのに集まっていた。その中に死んだ目をした小熊が一匹、椅子に座っている。
「トランです。初めての人間の町で受けた扱いは動物でした」
トランの
「トランです。今夜のお宿はどんなかな~と思っていたら
ザクザクと精神をえぐられるナバル。
「トランです。夜にナナイ君が差し入れてくれた寝袋は暖かかったです。
涙が止まりませんでした」
「わかってる。今夜こそは部屋で泊まれるように交渉するから!」
これ以上はたまらないと交渉を約束するナバル。
「トランです、トランです、トランです」
そこへランドルともう一人が店内に入ってくる。
「うおー!テリオ!ホントに生きてやがった!」
「俺が簡単にくたばるかよ!」
嬉しそうに拳を合わせる二人。そして後ろを振り向き
「あ~改めて紹介するよ。俺の幼馴染みのナバルとナナイちゃんだ」
「ナバル・グラディスだ」
「妹のナナイです」
ナバルと二人は握手を交わす
「コイツらはバカ1と2だ」
「「あ”」」
すかさずトランがテリオに向かってフォローにはいる。
「よろしくな、バカ3」
「復活してんじゃねぇよクマ
ブチッ!
「今夜はお前が藁のベッドで寝ろや!」
そんなトランを見て二人は
「「クマがしゃべってる…」」
改めて二人は自己紹介をする。獣人のノベルがテリオの今の職場の先輩と聞いて驚いていた。昨日飲んだくれていたのはランドルで今日、新しく来たのはセルロと名乗った。
「なあ、テリオ。お前今、なんの仕事をして…」
「
一人の青年が血相を変えて酒場に入ってくる。農作業をしていたのだろうか、手や足元が土で汚れている。
「なあ、マスター!腕利きを集めてくれ!」
「何があった、用件を言わねぇとわからねぇよ」
「魔物の抗争だ!」
青年がそう叫ぶ。マスターも顔をしかめる。
「領主様のところには?」
「別の奴がもう行ってる」
「2階に3組の冒険者がいたはずだ。とりあえず張り紙をして声をかけておくぞ」
「頼む!俺は町で戦えるやつらを集めてくる!」
そう言って青年は飛び出していった。
「なあ、ノベルさん」
ナバルがノベルに目で問う。ノベルも
最後にナバルはニィッと笑う。状況がわからないランドルとセルロはオレたちの顔を交互に見てる。
マスターのところに行くナバル。
「なあ、マスター。今の話、詳しく聞かせてくれねぇか?」
「ん?構わねぇが…アンタたちは腕に覚えが?」
「それなりにあるつもりだぜ」
「う~ん。正直今回はただの魔物の討伐とはいかねぇだろう。どれくらいの魔物をどれだけ狩れるんだ?」
「ん?ベヘモスや鉄蠍なら俺一人で行けるけど…何匹いけるかなぁ」
「「「はぁ?!」」」
「ん?」
マスターやランドルとセルロは固まっている。ナバルは何か変なことをいったか?と首をかしげてる。慌ててテリオが間に入る。
「あ~わりい。ナバル!お前ちょっと来い」
「お、おう」
テリオはナバルの手を引いてオレたちのところまで来る。慌ててるなぁ。
「いいか、みんなもよく聞けよ。
普通のヤツは魔の森に入るヤツは自殺志願者か頭おかしいやつだ。そこのしかも『魔境』の魔物なんかに出会った日にはその瞬間に死を覚悟するもんなんだよ!自分達を基準に答えるな!いいか?」
テリオの迫力に押されみんなコクコクと頷く。それなら参考にとナバルがたずねる。
「じゃあどんな魔物を基準に答えるのがいいんだ?」
「そりゃゴブリンやオークだよ」
「あ~、ガキの頃に見たなぁ。
じゃあ、あれは?アドレティドッグ」
「…忘れたのか?あれ一匹に俺らは普通、人数集めて袋叩きにしなくちゃ勝てねぇ」
「正直それさ、
「おめぇがおかしいんだよぉ!」
「ご、ごめん?」
「お、おい。いいか?」
マスターが声をかけてくる。ドン引きした顔をしている辺りオレらの会話はバッチリ聞こえてたよね…。
「仮にでも…アンタらが凄腕なら正直助かる。一応説明しておくぞ。
ここ一週間ほど前から魔の森の入口付近でオークとリザードマンの群れが現れ出したんだよ。それぞれが100匹は越えてるんじゃないかってほどの軍団だ。
奴らがいさかいを起こすとこっちに飛び火する可能性もあるから領主の私兵が巡回に出てるんだが相手の数が数だろ?それで町をあげての警戒体制だったんだよ」
「オークにリザードマンねぇ。ヤバイ魔物でも出始めて森を追われたのか?」
ナバルがそう推察する。
「それはありそうですね。そういえば出発する前の日にギルドで『大型の地竜の複数体』が討伐対象になってましたね」
「ギルド?討伐対象?」
ナナイの説明になぜかマスターが食いつく。地竜っていやぁティラノサウルスみたいなヤバイやつだ。あんなのがのさばってたらそりゃ逃げてくるよね。
そこへ同じ宿に泊まっていたであろう冒険者達がぞろぞろ降りてくる。そして張り紙を見て食堂は騒がしくなった。
「おい!魔物の抗争が始まったらしいぞ!」
「マジか!報酬は?」
「一人辺り銀貨10枚以上…」
「微妙だな。どうするよ」
「暇潰しで相手できる数じゃねぇぞ」
「俺は『コイツ』の試し切りがしてぇなぁ」
「ぷっ!そのナマクラのかぁ?」
おかしいね。懐かしい会話が聞こえる。アイツら元気にしてるかな?
「とりあえずマスターよぉ。状況はわかった。森の入口ってことは町の北の門に行けば良いのか?」
「ああ、そうだ。一応これを持っていけ」
渡されたのは張り出してる紙と同じ物だった。
「そこに身なりのいい騎士達がいるはずだ。そいつらに渡せばいい手はずになってる」
「『騎士』ねぇ…」
ナバルは騎士に嫌な思いででもあるのか一瞬顔が引きつった。
「それと…」
マスターはオレたちを見ると話を続けた。
「アンタらがちらっと言ってた『ギルド』ってのを聞かせてくれないか?帰ったらで構わないから」
それを聞いて嬉しそうに
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