第45話 森のクマさん森を出る
「改めまして、冒険者ギルド所属のノベルと申します。護衛の件、
獣人国に派遣される職員は新人研修の際の担当さん(男)だった。ちなみに狼獣人なんだけど顔は人間よりの顔だった。師匠は獣型だから色んなタイプがいるんだね。フツメンだから好感持てるわ。後ろにはテリオもいた。サポートらしい。彼こそ『フツメンの代表』だろうか。今度それでからかってやろう。
見送りにはギルマスと秘書さん、師匠に
「みんな、忘れ物はないかい?」
ウィルの言葉に「おう!」「大丈夫です」といった言葉が飛び交う。
「着替えは?」
「あります♪」
「
「あるぜ」
「オヤツは?」
「ばっちりニャ!」
「…あれ?オレのオチは?」
放置された感半端ないんですが…
「やれやれ…じゃあ、気をつけていくんだよ」
「あの、ちょっと…」
バアちゃんの言葉にオレのぼやきは書き消える。
「はい!」
「ニャ!」
「おう!…ってトラン、いつまで
ズルズル
「ッえ~~無いわぁ!」
ため息つくバアちゃん、
その隣で手を振るコルネ、
苦笑いの師匠、
にこやかに手を振る秘書さんにリアリーさん、
そして…
爆笑してる
あいつらこの展開にもっていったな!
「
「トラン君、君が悪いのだよ」
「坊やだか『それはやめろー!』」
アイツらいつのまに打ち合わせしてたんだよ。ギルマスのすれすれの発言を阻止したオレはナバルと馬車を追いかけた。
ずいぶんと
…
……
「行ってしまいましたね」
「そうだね」
…
「あの子達は彼とどういう出会いをするのかねぇ」
ナバルたちを見送った魔王は、昨日旅だったもう一人の武人を思い出していた。
…
……
「やあ、明日には出ていくつもりだったのかい?」
「アンタか」
ナバルたちが旅立つ前前日のことだった。
カースは魔王軍が用意してくれた部屋を片づけているところだった。明日の早朝に出ていくつもりだったのだろう。
「間に合って良かったよ」
銀髪の冒険者は大きな皮袋を手にして、
「渡したいものがあるんだ。少し部屋にいれてもらっても良いかい?」
軽く頷く武人。彼の案内で入った部屋は、元々荷物は少なかったのだろうが、よりいっそうガランとしていた。ウィルと名乗る男は皮袋を差し出し、
「その格好はもう無理があるだろ?せっかくだからコレを使ってみてくれないか?」
ボロの武道着を着たカースに袋を差し出す。その中身は真新しい防具だった。
1つ目は彼が着なれている武道着風の服だった。ただし糸は
2つ目は、その上に着るチェインメイルであった。しかしそれはどちらかと言うと東洋の忍が着るような、極限まで重量を押さえた逸品だった。色は黒に黄金が混ざったような光を放っていた。
3つ目はフードコートだった。素材はベヘモスの皮を符呪による変色でカーキ色に染め上げられていた。同じ色のブーツもあった。
そして…袋の下には一組の手甲が入っていた。
指貫から肘までしっかり作られていて白っぽい金属で出来ている。…肘の部分の装飾に違和感を覚えた。
「
カースはそれを手に取り両手に嵌めてみた。恐ろしいほど手に馴染む。
「右手を『バンカードフィスト』、左を『ワイヤードフィスト』と名付けているよ。先に作った『7つの子達』には少し劣るが充分な働きをしてくれるはずさ」
両手ともに魔力を込めると装飾がほのかに輝きだす。
「両方とも込める魔力とイメージで威力と距離を調整できるよ。まあ、おいおい試してくれ」
ウィルがそこまで話すとカースは小さく息を整えた。そして…
「ここまでしてくれるのは正直ありがたい。…で、俺に何を求める。
《魔王》よ」
魔王と呼ばれたウィルは思わず悪い笑顔を浮かべて、
「気づいていたかい」
「…まあな。俺自身、強くなるほどにアンタとの強さの差がどんどん大きくなるのを感じた。これほどの戦力となると一人しかいないだろう」
なるほどとウィルは自身に納得をつけると、
「個人的な望みを言うならば…
『死なないでくれる事』かな。君が生きて事を成すことを私は望むよ」
「…なんとも曖昧だな」
「かもねぇ、後は『我々の敵にならない』事だけど、それは問題ないからね」
それは…と言いかけて押し黙るカース。彼の目的は『事件の真相』にいる主犯格の
「出来ることなら私自身が出向いて『皆殺し』にしてやりたいんだけどね。残念ながら今ここを離れるわけにはいかなくなってね」
僅かに洩れる怒りを消した魔王は今度こそカースに告げる。
「とにかくだ。旅の無事を祈っているよ」
…
……
「なあ、ナバルよ、人間の町ってオレは入っても平気かね?」
「う~ん、バアちゃんも言ってたけど『使い魔』って扱いなら問題ないとは言ってたけどな。よくわからん」
こっち来て初めての人間の町で騒動とかごめんだぞ?これフラグにならなきゃ良いけどなぁ…
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