第43話 日常と新たな兆し
「こんな洒落た店もあるんだな」
「ビックリだろ?あ、マスター俺ジンジャースピリット」
「俺はエールにするわ」
二人の前に2つのグラスが置かれる。
「俺がいた村にはこんな店無かったもんなぁ…」
「そっか…まあ、無事に研修も終わったことで」
「おうよ」
チリンと鳴るグラス、店内では大きなピアノを奏でる女性。
「…旨めぇ、冷たいエールとかはじめて飲んだぜ。それにこの店の雰囲気、最高だな」
「そうだな。静かに飲みたい奴らとかは来るらしいぜ。だからこの店で騒ぐなよ?」
「俺は酒癖せ悪くねぇ」
「どうだか」
くっくっくっと二人して笑い合う。テリオはピアノの奏者を見て
「あの人も魔族なんだよな…メチャクチャ綺麗だけどこの街の美人率高くね?」
「う~ん、そうかな?」
「ってかこの街自体が住みやすすぎ。人間側でもここまで気か抜ける街ないぜ。治安も良すぎるし」
「まあ、魔王に賛同した奴らで築き上げた街だからなぁ。それに魔族って寿命も長いから知り合いだらけになってるんじゃないか?」
「そりゃ悪いこともしなくなるか」
グラスを傾けるナバル。押し黙るテリオ。
「?どしたよ」
あ~と唸り頭をかくテリオ。そして
「なあ、言いたく無きゃいいんだけどよ、今までどうしてたんだ?」
「あー、そう言うことな」
テリオの煮え切らなさに合点がいったナバル
「隠すほどでもねぇけどな」
話始めようとしたナバルに待ったをかけるテリオ。
「その前にトランってやつについて教えてくれ!」
「ハァ、何だよお前ら、まだリリンさんの取り合いしてんのか?」
「負けるわけにはいかねえからな」
(そもそもどっちも
「なんか言ったか?」
「いや、な~んも。そうだな…」
そうして思い出す。二人でバタバタ駆け回ったあの日を
「お前さ、あの森の『鹿』見たことあるか?」
…
……
「ある~ひ~、森の~な~か~、クマさ~ん~に~、であ~った~。
オッス!」
「変な歌ニャ」
コクコク
「なに!ホルンとコルネにはこの歌の良さがわからんかぁ~」
「ホルンたちの歌も作ってくれたら良くなるかもしれないニャ」
コクコク
「ホルンたちの歌ねぇ…」
「迷子の迷子の子猫ちゃん~」
「ホルンは迷子じゃ無いニャ」
「だよね~、ハードル高けぇな」
ホルンの後ろについて
ホルンは初め、彼女に対しライバル視していたがどういうわけかコルネはホルンになついた。例の小グマがひっそりと涙を流したのは言うまでもない。
「ネコふんじゃった~」
「ダーメニャー!」
「ですよねー!」
「なに騒いでんだい!
…よく帰ってきたね。薬草は揃ったかい?」
「おうよ!」
「ばっちりニャ」
コクコク
「おー、あるね。3人とも、お疲れだったね。もう休みな」
「いぇッふー!」
「ニャニャー!」
ピョン
「ふぅー」
「ホント、賑やかになったね」
「ウィルかい。入んな」
「じゃあ、お邪魔するよ」
ウィルが座るとすぐにトランがお茶を配り始める。
「おお、悪いね」
「気にすんなや。どうせオレたちも飲むところだったからな」
見るとホルンとコルネは茶菓子の
「彼女もすっかり馴染んだね」
「だなぁ、ホルンとも馴染んでるし
…と言うよりホルンがお姉さんブリたい年頃かもな」
「仲が良いなら良かったよ」
「で今日はどうしたんだい?」
オレとウィルの会話のなかにバアちゃんが本題にはいる。
「そうそう、ガウニスから久しぶりに連絡が来てね」
ガウニス?誰?
「ああ、獣王の坊やかい」
獣王を坊や扱いね…って獣王!
「ははは、その
「ハァ、相変わらず好奇心旺盛だねぇ」
「それが彼の良いところでもあるけどね」
「で、どうすんだい?」
「こっちのギルドから派遣することが決まったよ。それでなんだけどね?…ナバルたちに護衛をさせようと思うんだよ」
「…そうさね。そろそろ世界を知るのも良いかもねぇ」
なんとビックリ海外進出ですか!
って待てよ?もしかして…
「ホルンはともかくコルネはまだ早いかねぇ…」
きょとんとするコルネ、彼女の頭をナデナデするホルン。
「ウィルや、いつ頃出発になりそうだい?」
「一週間後にはお願いしたいかな」
「だ、そうだよ。トラン、ホルン、しっかり準備しときな」
マジかー!来たぜ海外遠征!
コルネとしばらく離れるのは寂しいがしっかりせねばな!うん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます