第40話 ナバルの新装備
「あの~ホルンさんや」
「なんだニャ?」
「そんなに引っ付くと歩きづらいんですが」
「ダメニャ」
オレはボロボロになった服を新しく新調しようと
さっき行った道具屋のお姉さんに
「あら?可愛いわね。デート?」
なんて
「ドリンク2つくださいな、お姉さん(社交辞令)」
「あいよ。おや、今日はモテモテだねぇ」
「そのフラグは
「??」
オレの華麗な返答に何故か首をかしげるオバ…お姉さん。
ホルンと隣ならんで座り飲んでると
「あら可愛いわね」
「素敵~」
「春が来ましたなぁ」
なんて声が聞こえる…
って最後のギルマスかよ!
美人秘書の奥さんと並んで消えてった。
…何故か悔しい。今日はギルドに寄るのは無しだな。
「へえ、以外と絵になるな」
「ホルンちゃん、トラン君、こんにちわ」
今度はナバルとナナイだった。
「あれ?二人はどこ行くの?」
見るとナバルもナナイも防具なしのただの服だけだった。
「ああ、今日なんだよ。新しい鎧が出来るの」
「私の装備も見てもらってたから一緒に行くのよ」
聞けばナバルはあの金ぴか黒刃熊に剣や防具といった装備を破壊されまくったらしい。
「あの野郎のせいで財布のダメージがでかいわ」
声が
「でも兄さん、ボードゥさんもあの爪を見て『これは良い剣が作れる』って言ってたじゃないですか」
「そうだな。最近小太刀じゃリーチ足りなかったのは事実だしな。でも個人的には曲刀の強化がどうなったか気になるんだよ」
ナバルの新装備か…オレも気になるな。
「なあ、オレたちも行って良いか?」
「良いんじゃね?」
「そういえばトラン君たちにも渡したいものがあるとか…」
マジですかナナイさん!それは行かなきゃダメでしょ!
オレたちはルンルンで店に向かった。
店の中でオレたちを待っていたのはハイテンションなボードゥさんだった。
「やあ、よく来てくれたね!待ってたよとりあえず何か飲むかい?話長くなるから!」
「とりあえずアンタが飲んで落ち着いてくれ」
ハハハとおかしなテンションのまま皮袋を3つ出してきた。それとは別に2振りの剣と薄黒い柄に黄金の装飾を持つ1本の杖を持ってきた。
「先ずはナナイちゃんの杖だね。武具としての損傷はなかったよ。呪術的なものは専門の魔術師に見てもらったけど問題ないって言っていたよ」
そう言って杖を渡す。ナナイは嬉しそうに「ありがとうございます」と言って杖を抱き締めた。
それを照れながらも嬉しそうなナバルにボードゥさんが
「じゃあナバル君、これを見てくれ!」
と凄い気合いの入りようでぐいぐい来てた。ナバルも「あ、ああ」と若干引いてる。しかし長剣の方を抜いた瞬間ナバルの顔が真剣になった。
それは黄金に輝くロングソードだった。あの変異種の爪を使ったであろう事はわかるが、いささか肉厚な気がする。一本丸々使っても『ちょっと太いレイピア』程度なはずだ。
「なあ、これは…」
ナバルの戸惑いに嬉しそうに語るボードゥさん。
「もらった爪を2本合わせたんだよ。繋ぎにはオリハルコンの合金を使ってる。爪に負けない強度を出すのに苦労したけど見事に融合してくれたよ」
ボードゥさんはとんでもない事をしてくれたようだ。あの爪と同格の強度だと!ナバルのアダマンタイト合金製の小太刀をへし折ったらしい爪だぜ?
ナバルは何度か振りながら、
「以外と軽いな。でも使いやすくて良いな!」
なんて言ってた。それを見たボードゥさんはニヤリと笑った。
「ナバル君、確かにそれは僕の改心の出来だけど、今度はこれを見てくれるかい?」
そう言って出したのは一振りの曲刀だった。
かつての『ムーランルージュ』はミスリル製の銀に輝く美しい曲刀だった。
目の前にあるそれは…
峰は銀に輝いているが剣先から鍔までの刃は黒曜石のように光輝く黒だった。まるで『夜空』を切り取ったような…
「ボードゥさん、これアダマンタイト?にしては…」
ナバルの動揺に嬉しそうなボードゥさん。
「ああ、それはアダマンタイトとオリハルコンの合金だよ」
!!
おいおい、それってもしかして
「そう、『完成』したんだよ!!」
そして1つの皮袋から鎧一式を出した。
胸と腹部、肩には金属プレートが、それ以外の部位にはチェーンで覆われている。その全てが曲刀よりも明るく輝いている。小手や具足も同じ金属だった。
「先ず黄金の剣を『アルン・グラム』
で、曲刀を『ルナ・ア・カーデ』と、命名したんだけど、これらの違いはアダマンタイトとオリハルコンの比率を変えているんだ。ナバル君は魔法剣を多用するって言ってたよね?」
頷くナバル。
「うん、先ずグラムの方だけどこっちは魔力伝達率が非常に高い。稀に居る『魔法剣士』たちが喉から手が出るほど欲しいと言って良いほどの出来になったよ!」
ナバルはもう一度、黄金の剣を抜き剣先を上に、胸に構えた。
「確かに…魔力の走り具合がヤバイな」
それを聞いたボードゥさんは嬉しそうに笑い
「そうだろう?あの黄金の爪は桁違いの伝達率を持ってたんだよ!それで強度を落とさず伝達率も殺さずに仕上げたのがその子だよ!」
稀に見るボードゥさんのハイテンションにナナイとホルンが怯えてる。
「とりあえず落ち着こう、な?」
すまないと深呼吸するボードゥさん。
「もうひとつ、ルナの方だね。これはオリハルコンが入ってるだけに魔力伝達率は凄まじいけど、それ以上に『単体』での強度と切れ味が最高峰の剣になっているよ。
『剣』それ自体の性能ではルナが上、魔法をかけるならグラムが上だね。そうすることで戦略の幅が上がるかと思ったんだよ」
曲刀を持ち『ニヤリ』と笑うナバルが
「助かるよボードゥさん。
俺も毎回、魔法剣を発動させるわけじゃないからな」
そう言って納刀する。
「あとは鎧だね。かつてのデザインを元にプレート部分を増やしたよ。今のナバル君なら着こなせるだろ?」
そう言われたナバルは
はえーなオイ!
「ああ、しっくりきて、それでいて動きを阻害しねぇ。最高だよ!でもこの色合いは?」
「オリハルコンとアダマンタイトの比率を半々にしてあるよ。だから物理、魔術の両面で君を守るだろうね」
そう言ってボードゥさんは1つの包み紙をナバルに渡した。
「あとはこれで仕上げかな?」
それは
「ナバル君は『コート』は腕の動きが鈍るから嫌だって言ってたからね。それにコレには対熱、対寒の付呪が掛けられているから快適だと思うよ。勿論、皮が
全てを装備したナバルは…くそう!カッケエじゃねえかよ。
鎧にロングベストが妙にはまりやがる。腰回りのプレートも見た目ぺらい様でしっかり作り込まれている。
「あとナナイちゃんのローブだけどね…《自己修復》の付呪が強力すぎて僕がすることは何もなかったよ…
だから
黒に光輝く繊維が織り混ぜられた綺麗なマント?だった。
なんと同じ素材のケープと衣服をホルンとオレにも用意してくれてた!
「うおー!ボードゥさん、これって…」
オレの叫びに笑顔で答えてくれた。
「トラン君の要望に答えた『魔力でサイズが変わる』服だよ」
キターーー!
そう、オレってば《人間化》するじゃない?その為に専用の服を着とかないと
いや~待ち望んでた装備は怪物級じゃないですか!
ここまで説明ししたあとボードゥさんは座って少し寂しそうな顔をした。
「どしたの?気が抜けちまったの?」
一応目標は達成したからなぁ。でもそうじゃなかった。
「ここまで出来るようになってわかったんだけどね?
「「マジかよ…」」
唖然とするオレたち。でもボードゥさんは顔をあげて
「以前はここまで来ることすら出来なかったんだ。君たちには感謝してるよ。そしてもっと上を目指して見るさ」
スゲエ爽やかに言ってのけた。
ボードゥさん、今のアンタが最高にかっこいいぜ。
そんな事を思い、オレは姿鏡の前でポーズを決めた。
「なあトラン、新しい
「はったおすよ?」
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