第37話 同族殺し
「ぐべらっぱー!」
ちぎっては投げられ(気分的に)、
ちぎっては投げられ(気分的に)、
もう心が折れそうです…
もうやだ
オウチカエリタイ
目の前には大怪獣もとい巨大な
詰んでね?この状況。まあ、とりあえずここは遺跡だ。なら地形を利用しない手はないだろう。
気配を消しつつ迂回しての襲撃、いょっし、背中がら空き!オレは飛びかかり思い切り剣爪を突き立てる!
グン!!
硬いゴムに当たったかのような嫌な感じだ。案の
グワン!!
1つが大剣以上の剣爪が5本、それはガード越しでもオレを打ちのめすには充分な威力だった。
…
ものの見事に叩きつけられた。参ったな、力が入らねぇ。
オレ、また死ぬんかなぁ…
…
この世界、
師匠の訓練、キツかったなぁ…でもその成果が狩でハッキリわかってスゲェ嬉しかった。
バアちゃん、ため
ギルマス。まさか同じ転生者に会えるとは思わなかったよ。またバカやりてぇなぁ。
ナナイ、あの子は美人になるぞ。彼氏をつれてきたらナバルをからかってやろう。あれ?オレが泣きそうなんですけど。
ナバル、普段は慎重なくせにいざって時は無茶するんだよなぁ。心配かけさせやがる。
…
……
ギーコ、ギーコ
そういや白虎のじいさんが宝石になったとき、ホルンはよく一人でブランコを漕いでたなぁ。
ギーコ、ギーコ
『どした?ホルン』
ギーコ、ギーコ
『あのね』
ギーコ、ギーコ
『じいちゃんずっと一緒にいてくれるけどね』
ギーコ、ギーコ
『やっぱり寂しいニャ』
ギーコ、ギーコ
『トランは
…
……
「ふっざけんな!」
(クソッタレ!力が入らねぇ?それがなんだ!
ホルンにまた『あんな顔』させんのかよぉ!)
うつ伏せから立ち上がろうとした時、『バアちゃんのお手製ベルト』が目にはいる。
『ただ暴走するだけかもしれないから周りには誰もいないところで使いな』
ああ、丁度いいタイミングじゃねぇかよ。バアちゃんマジで感謝だわ。暴走?上等だよ!
「おい熊公、オレのとっておきを見せてやるよ」
ボロボロのオレを思いっきり見下しやがって。上等だバカ野郎!俺はすかさず詠唱する。
《
ドックン!
身体が跳ねた感じがした。
体が熱くなり視界が赤一色に染まる。
なんだこれ!
「熱っつう…!!」
ヤバイ!熱いなんてもんじゃねぇ!
『…ッガアァァァァァ!!』
…
…
一瞬なのかスゲェ時間がかかったのかサッパリわからねぇ。
だが、とりあえずはすんなり立ち上がることはできた。
…あれ?視界がずいぶん高い気がする…それに身体が軽い。それになんだ…力が沸き上がってくる。へぇ…悪くねぇな。
ふと見上げると相変わらず舐めた巨大熊が見下してやがる。
「待たせたなクマ野郎、いっちょキツいのぶちかましてやるよ!」
叫ぶと同時に跳躍、ヤツの顔面を殴り飛ばす。
ヅガァァン!!
思いの
「くらいやがれ!」
そのまま落下と同時にヤツの腹を踏み抜く。
『ヴァアァァァ!!』
激しい衝撃が熊を襲う。あれ?奴が倒れたときより衝撃凄くね?熊は絶叫し後ろに
「おらァァ!!」
『グゥゥン!』
何とも情けない声をあげる熊。丁度こっちに振り向いた。
「そらよぉ!」
右手の剣爪で奴を切りつける、
ズシャッ!
『キュウッ!』
ヤツの左の顔にモロに決まる!
…あれ?コイツ震えてね?
巨大熊はガタガタ震えて手足を丸めてる。どう言うこと?気になったのでコイツの魔力量を観察した。
魔獣は種族にもよるが魔力のデカさが身体の大きさに影響をおよぼす。確かにコイツの魔力はデカかった。だけど…
あれ?あの金ぴかの方がでかいわ。それに『
凶悪な魔獣は魔力のデカさの他にも実は『透明度』のようなものがある。例えば白虎のジイさんなんかは『綺麗な白』っぽい感じかする。あくまでオレの感想なんだがな。で、コイツはどちらかと言うとジイさん寄りなんだよね。あの変異種はヘドロみたいにネットリしてたけど…ってことはだ。
白虎のじいさんをやったのは金ぴかでコイツはオマケか?そう思ったら気分が萎えてきた。
「はあ、なんだかなぁ。一応、オレにしてみりゃ、お前は同族だしなぁ」
そう言い巨大熊を見る。コイツ目が完全に怯えてますわ。コイツだけなら無害かも知れねぇなぁ。それにヤバそうならまた森の奥に追いやればいいか?
「さっさと家に帰れ」
シッシッと手を振る。ナゼか座り込む熊。いやいや、巣に戻るかしろや。そうこうしてると光の柱が天に向かって伸びていった。
なんじゃありゃ!
おいおい!あれはナバルたちがいた方じゃねぇか?ピンチなのか?ヤベェ!すぐに戻らなきゃ!
「じゃあな。悪さしねぇなら今回だけは見逃してやるよ!」
熊の目を見る。うん敵意は感じないね。…あれ?オレは初めて違和感を感じた。
熊の目をもう一度見る…改めて自分の手を見る。もう一度熊の目に写る『自分の姿』を見たオレに衝撃が走った。
どうして忘れていたんだろう、昔は見慣れたはずなのに…そういやギルマスが言ってたっけなぁ。『自分の事が思い出せない』って。
…
…
…
「マジかよ…これ俺だわ」
熊の瞳に写っていた姿、筋肉ムキムキで若干雰囲気変わっているが…
それは『
…
……
………
ワタシは生まれたときから身体が大きかった。それでも先に生まれた兄達には敵わなかった。特にすぐ上の兄は異常だった。身体に硬い『ナニカ』が沢山付いていた。
それから何度か外に出た。母と兄とワタシの3びきで。ワタシが一番大きかった。でも大きかっただけだ。
ある夜、母の悲鳴が聞こえた。身体が震えたけれどワタシは母の元へ行った。
そこで
兄が母を食い殺していた。
ワタシは鳴くことも出来ず震えた。
兄がワタシを見た。
逃げる前に転んでしまった。身体が震えた。兄はワタシを見下ろした。そしてつまらなそうに『フン!』と息をするとそのまま寝床へ行った。
ワタシは震える身体で母の元まで行った。
母は身体の半分が無くなっていた。
ワタシは兄が起きるのではと怖くなって鳴くことが出来なかった。本当は鳴きたかった。
それからはワタシは兄の後ろについて回った。身体が震えたけど1匹は嫌だった。
同族を見つけた。逆らうものは兄が食い殺した。震えるものはワタシと同じようについてきた。
気がつけば6匹になっていた。
そこには『白い怪物』がいた。
ワタシは震えた。他の同族も震えた。兄は1匹に『行け』とけしかけた。ソレは震えて行けなかった。兄は『光る爪』を出して、もう一度行けとけしかけた。怯えたソレはすぐに白い怪物に襲いかかった。
白い怪物は強かった。ワタシたち『5匹』がかりでも勝てないほどに。
襲いかかった1匹が死にそうになっていた。白い怪物は止めを刺さず立ち去ろうとした。そこへ兄が襲いかかった。
激しい戦いだった。あの兄が負けるかもしれない。でも兄は…
響く絶叫。止めを刺さんと兄が飛び付く。白い怪物はすんでのところで避けた。そのままさがり森の奥へと消えていった。兄は怒り狂った。腹いせに
それからその岩場が住みかになった。
表に出ているのはワタシと2匹となった。兄と1匹は外に出なくなった。
小さい『ナニカ』が3匹来た。同族の1匹が襲いかかった。小さい何かは吠えながら逃げていった。同族は遊び半分で出ていった。だから本気ではなかっただろう。でも戻ってきたときはボロボロになって帰ってきた。ソレを見た兄は何故か気をよくしてソレを案内させた。他の2匹には別の餌場に向かわせて。
それからだ。小さいソレが空から降ってきたのは。見た目は弱そうだった。でもすごく強かった。だからワタシも必死になった。シニたくなかったから。思い切り叩いたら動かなくなった。
どうしょうかと思った。もしかしたらだけど多分これはワタシと同じだ、そう思った。だから食べたくなかった。
そしたら『ソレ』は黒いモヤに覆われて、少しだけ大きくなった。でも、感じる『ソレ』は兄よりも恐ろしかった。
ワタシは驚いた。どうして良いか分からずモタモタしていたら殴られた。とても痛かった。そのあと腹を踏まれた。『シヌ』と、そう思った。動かなくなった母を思い出した。怖かった。逃げ出そうと思った。後ろを蹴られた。恐る恐る見ると爪で斬られた。
もうダメだ。ワタシも母のように『食われる』。
ワタシに向かってくる『死』の臭いが消えていた。
ワタシはわかった。『コレ』は白い怪物と同じなのだと。
あの『兄』とは違うのだと。そして思った。ワタシもソレになりたいと。だからワタシを置いていかないでほしい。
手を伸ばした。警戒された。違うんだ。
どうかワタシを『助けて』。
…
……
どうしたことでしょう。30m 級の
…なんだコレ??
しかも獣人になってわかったけど…『メス』だったのね。
背丈は130cm位かな?
それになぜか裸だった。とりあえず着るものを出さねばな。…『何故セクシーなお姉さんじゃない!』と内心、
ん?まてよ?コイツは敵になるのか?
観察してるが本人自身『ワケわかりません』って顔をしている。ゴメン。俺もワケわかりません。
とりあえず持っていたのは『鹿の皮』だった。…仕方ないね。ソレを切って水着のように着させた。…仕方ないやん!
「おほん!とりあえず言葉はわかるか?」
じっと見つめ合うオレたち。あれ?以外に美人じゃね?
「コトバ?ワカル…」
…あ~これ放置したらアカンやつや。その前にオレに対する『怯え』が無いなぁ。進化?変化?すると記憶も消えたりするのか?
まあ、いいか。オレはそいつの手を引いて、
「まあいいや、ついてこい」
手を引っ張って歩き始めた。光の柱が登った場所を目指して。
「ナバルのやつ、無事だろうな…」
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